総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によれば、フリーランス人口は209万人で、有業者の3.1%を占めているとの結果が出ています。リモートワーク、ノマドワークと新しい働き方の形態も浸透しつつあります。今後、フリーランス人口はますます増えることが予想されるでしょう。
フリーランスは企業などから業務を受注したり委託してもらったりして、生計を立てています。しかし、なかには作業量に見合わない低賃金で働かされたり、まるで会社員のような働き方をしながらも、福利厚生が受けられないといった人もいます。
こうした「偽装フリーランス」が企業や雇用主に搾取されないよう、国は待遇改善を進めています。果たして、どのような対策を立てているのでしょうか。
この記事では、フリーランスの待遇で起きている問題と、国が打ち出す予定の改善対策について解説します。
1. 正社員とフリーランス、どんな違いがある?どちらを選ぶ方がいい?
正社員とフリーランスの違いとしては、以下のことが挙げられます。
【写真2枚】正社員とフリーランスの違い一覧表。労働基準監督署では偽装フリーランス問題をどう判断する?次ページで解説1/2
出所:厚生労働省「人を雇うときのルール」、厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」、厚生労働省「働き方・人への投資WG 厚生労働省説明資料」をもとに筆者作成
〈労働時間〉
- 正社員:就業規則に基づく
- フリーランス:時間の定めや縛りなし
〈最低賃金〉
- 正社員:地域ごとに適用される
- フリーランス:地域にかかわらず適用されない
〈福利厚生〉
- 正社員:会社ごとに定められている
- フリーランス:自分で用意する必要がある
〈社会保険〉
- 正社員:加入義務あり
- フリーランス:加入義務なし
〈労働保険〉
- 正社員:加入義務あり
- フリーランス:加入義務なし
※労災保険は11月から任意加入可能
正社員は、規則のもと、さまざまなことが定められています。賃金や社会保険、労働保険などは法律に基づき、労働時間や福利厚生は、企業の就業規則などで規定されています。
一方、フリーランスは法律に縛られません。そのため、労働時間の定めや社会保険・労働保険への加入義務もありません。しかし、フリーランスは労働基準法が適用されないため、賃金が最低賃金以下でも罰せられません。また、組織に属さないため福利厚生制度には自分で加入する必要があります。
特に、労働基準法が適用されないことで、フリーランスの搾取が問題視されてきています。このことについて、次章で解説します。
2. 正社員とフリーランスのはざま「偽装フリーランス」とは
フリーランス人口が増えたことで「偽装フリーランス」が企業に搾取されることが、問題となっています。偽装フリーランスとは、本来事業者であるフリーランスが、まるで労働者のように扱われている状態を指します。
正社員は雇用される労働者です。よって、使用者である企業と労働者との間には、主従関係が発生します。一方、フリーランスは業務委託を受ける事業者という扱いになります。
この場合、基本的に働く時間や場所などは事業者であるフリーランスに裁量があり、企業とフリーランスは主従関係にありません。
偽装フリーランスのような働き方が認められると「最低賃金以下でフリーランスを使って会社で働かせる」「社会保険の保険料負担なく人手を増やす」といった違法な働き方がまかり通ってしまいます。
現在はこうした働き方を罰する法律が存在しないため、企業が「労働力搾取」をしている状況となっているのです。
偽装フリーランスにあたる働き方が多いとされている主な職種としては、美容師や運転手、清掃スタッフ、料理人などが挙げられます。
2.1 労働基準監督署では偽装フリーランス問題をどう判断する?
では、労働問題に関して監督している労働基準監督署は、偽装フリーランスについてどのような見解を示しているのでしょうか。
労働基準監督署は、フリーランス事業者から「自分は労働者のように働いている」という申告があった場合、事実確認を行っています。確認の結果、労働者とみなされ違反が認められた際は、該当の企業に対して監督指導しています。
一方、現時点では法律に基づいた指導ができません。フリーランス新法が施行されていないためです。そのため、監督指導は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」に基づき行なっていると考えられます。
また、あくまで事業者本人の申し出がない限り調査に乗り出せません。偽装フリーランス問題に関する労働基準監督署の介入は、難しい状況となっているようです。
3. 厚生労働省はギグワーカーの待遇を改善する方針
2024年11月からはフリーランス新法が施行されます。これとは別に、厚生労働省はWeb上のプラットフォームで仕事を請け負うギグワーカーの待遇改善を検討しているようです。
現在検討されている案は、ギグワーカーへの報酬に労働者と同じように最低賃金を適用し、福利厚生の一環として有給休暇を設置するといった内容です。
これにより、ギグワーカーが搾取されるのを防ぐと同時に、企業の人手・労働力不足を解決しようとしています。
ただし、具体的な指針の表明時期は未定です。今後の情報を注視する必要があるでしょう。
4. まとめにかえて
偽装フリーランスは、法律の抜け穴をかいくぐった働き方であり、決して適切なものではありません。人によっては心身ともに疲弊し、体を壊してしまう可能性もあるでしょう。
フリーランス新法や厚生労働省の指針案などにより、フリーランスの働く環境が整備されつつあります。企業に搾取されることなく自律的に働ける環境ができれば、より多くのフリーランスが活躍できるでしょう。
