給与明細を見てみると、すでに定額減税による減税が終了し、例年どおりの数字が記載されるようになってきた人も増えているのではないでしょうか。厚生年金保険料や社会保険料の負担の大きさを、定額減税後にあらためて知った人もいるでしょう。
年金保険料は、私たちが将来受け取る年金額に大きな影響を与えます。保険料を適切に納めていないと、満足な金額の年金を受け取れません。一方、すべて適切に納めていれば、相応の金額が支給されます。
果たして、年金は最高でどれくらいの金額を受給できるのでしょうか。そもそも、年金には「満額」という概念はあるのでしょうか。この記事では、公的年金の受給額について、国民年金・厚生年金に分けて解説します。最高受給額や支給上限額についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
1. 公的年金の仕組み
日本の公的年金の仕組みは、以下のように「2階建て」とよばれています。
1階部分は、20歳から60歳までの国民全員が加入する「国民年金」です。原則65歳から「老齢基礎年金」として、納めた保険料をもとに支給されます。
2階部分は、会社員や公務員などの第2号被保険者のみ加入できる「厚生年金保険」です。こちらも支給は原則65歳からで「老齢厚生年金」として支給されます。支給額は、給与や加入期間などによって決まります。
では、老齢基礎年金の満額はいくらなのでしょうか。また、満額受給のためには何が必要なのでしょうか。次章で解説します。
2. 老齢基礎年金の満額と満額受給の要件
2024年度の老齢基礎年金の満額は81万6000円です。
年金受給額は毎月物価や賃金の変動に合わせて改定されています。2024年度時点では81万6000円ですが、2023年度は79万5000円でした。現役世代の人が将来年金を受け取るときには、金額がいくらか変動している可能性があるでしょう。なお、老齢基礎年金は満額以上の金額は受け取れません。
また、満額受給するためには、国民年金に40年加入し、保険料を480月分納める必要があります。
老齢基礎年金の受給額は、以下の計算式で求めます。
- 老齢基礎年金の受給額=その年の基礎年金満額×(保険料納付済月数+全額免除月数×4/8+4分の1免除月数×5/8+半額納付月数×6/8+4分の3納付月数×7/8)÷40年×12月
分母は保険料額やその年の満額受給額にかかわらず、480月です。よって、満額受給するには国民年金に40年加入し、保険料納付済月数が480月納めるしかありません。
加入年数が36年のように40年に満たない場合や、保険料納付期間が460ヶ月のように480月に満たない場合は、上記の式に基づき満額からいくらかが減額されます。
2.1 国民年金を満額納めていない場合はどうする?
では、もし国民年金の加入年数が40年に満たなかったり、保険料を480月納められなかった場合は、任意加入制度を活用して満額受給を目指しましょう。
任意加入制度は、特定の条件に当てはまる場合、60歳以降も国民年金に加入して保険料を納めて、受給額を満額に近づけられる制度です。任意加入できる条件は、以下のとおりです。
〈任意加入制度の加入条件〉
以下の条件をすべて満たす人が加入できます。
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
※日本国籍を有しない人で、在留資格が「特定活動(医療滞在または医療滞在者の付添人)」や「特定活動(観光・保養等を目的とする長期滞在または長期滞在者の同行配偶者)」で滞在する人を除く - 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないの人
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の人
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していない人
加えて、以下に当てはまる人も加入できます。
- 年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の人
- 外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の人
任意加入すれば、60歳時点で加入年数が480月に満たなかったり、保険料を480月分納めていなかったりしても、年金受給額を満額に近づけられます。保険料を納められる余裕がある人は、任意加入して年金額を増やしましょう。
3. 老齢厚生年金の満額ってあるの?
老齢厚生年金にも、受給上限額が存在します。これは、保険料算定時に用いる標準報酬月額に上限が定められているためです。
厚生年金の金額は、以下の式で計算します。
- 厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
このうち、年金額の大部分を占める報酬比例部分の計算で、標準報酬月額を用います。
〈2003年3月まで〉
- 報酬比例部分=平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間数
〈2003年4月まで〉
- 報酬比例部分=平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間数
平均標準報酬額とは、標準報酬月額と賞与額の総額を、加入期間で割った数字です。厚生年金保険料の上限は5万9475円(事業主と折半時)で、この保険料を納めることになるのは、標準報酬月額が65万円以上の人です。つまり、給料が月額100万円だったとしても、標準報酬月額は65万円とみなされ、厚生年金保険料は5万9475円で変わりません。
また、標準賞与額の上限は150万円、支給回数3回までと定められています。賞与が200万円だとしても、標準賞与額は150万円として年金計算に反映されるのです。
加えて、厚生年金保険は70歳まで加入できます。労働自体は中学校卒業後の16歳からできるため、最長で16〜70歳までの54年間、648ヶ月加入できます。
よって、老齢厚生年金の満額は標準報酬月額が65万円、標準賞与額が150万円かつ3回支給されており、648ヶ月厚生年金保険に加入した場合の金額といえます。
では、厚生年金含む公的年金の最高受給額について、次章で確かめてみましょう。
4. 公的年金受給額の最高額はいくらか
公的年金受給額の最高額として、厚生年金の報酬比例部分と国民年金額の合算額を紹介します。前述のとおり、2024年度の国民年金の満額は年額81万6000円、月額6万8000円です。では、厚生年金の最高受給額を計算してみましょう。
厚生年金を満額受給できる要件は、以下のすべてを満たした場合でした。
- 標準報酬月額が65万円
- 標準賞与額が150万円かつ3回支給
- 16〜70歳までの648ヶ月厚生年金保険に加入
標準報酬月額が65万円になるのは、月給63万5000円からです。これをもとに年収を算出してみると、年収は1212万円となり、平均標準報酬額は102万5000円となります。よって、2003年4月以降に厚生年金保険に加入したと仮定すると、以下のとおり年金額が計算できます。
- 102万5000円×5.481/1000×648=364万480円
364万480円÷12=30万3373円
よって、老齢厚生年金の満額は月あたり約30万3000円です。国民年金と合算すると、月あたり約37万円が最高額となります。
上記の金額には、上乗せされる年金がいくつかあります。
- 経過的加算:男性は1961年4月1日、女性は1966年4月1日以前に生まれた人に対して支給される特別支給の老齢厚生年金の定額部分から老齢基礎年金の一定額を差し引いたもの。
- 加給年金:自身が65歳になったときに生計を共にしている配偶者や子どもがいる場合に支給される年金
- 企業年金:公的年金の3階部分にあたる、企業と自身で折半して保険料を納めることで受け取れる年金
上乗せされる年金があれば、月約40万円の年金を受け取ることも可能です。
ただし、実際には16〜70歳まで働くことや入社後毎年63万円以上の給与を受け取ることは難しいです。理論上は可能でも、現実的には月約37万円の年金を受け取れる可能性は低いといえるでしょう。
5. まとめにかえて
年金支給額は、理論上約37万円が最高額となりました。とはいえ、実際に37万円を受け取れる人は限りなく少ないでしょう。あくまでも上乗せされる年金や個人で年金を用意しない限りは、達成できないと考えておいたほうがよさそうです。
しかし、受給額にかかわらず年金保険料は適切に納める必要があります。特に国民年金は正しく納めていれば満額受給が可能なため、忘れずに納めるようにしましょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「任意加入制度」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
石上 ユウキ