暴力・席取り、元気すぎる「暴走老人」の電車マナー

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ケンカ・痴漢・大声・音漏れ・荷物の持ち方・化粧……。電車内での迷惑行為やトラブルは、毎日のように起きています。

そんな中で意外に多いのが、高齢者の迷惑行為。「席を譲れ」と高圧的な態度をとったり、駅員に暴力を振るったり、指定席でもない普通の車両で席取りをしたり……。電車でのマナーが悪いというと、若者ばかりが目立っているように感じる人も多いかもしれませんが、最近は高齢者の迷惑行為も増えてきているようです。

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「敬老者が16名乗車します」

電車に乗り込む際に、一つだけ空いている席にお客が殺到、子どものころに遊んだ「フルーツバスケット」状態になる……。誰でもそんな光景を見たことがあるのではないでしょうか。指定席でもない限り、電車の席は「誰かのもの」ではないので当然です。

しかし、2018年の4月、お花見に向かう16人のお年寄りは、宮城県にある「一目千本桜」を見に行く電車で、ほかの乗客が驚くような席取りを行いました。16人は同じ老人クラブのメンバーだそうですが、そのうちの1人が、他のメンバーに気を遣って、前の駅から「席をお譲り下さい 次の駅から、敬老者が16名乗車します」と書いた紙を座席に置き、「本隊」は文面通り次の駅から乗車。もちろん電車はグリーン車など指定席ではないJR東北本線の通常の車両です。座席に置かれた紙には皆が白い目を向け、誰も座らなかったそうです。

「お年寄りには席を譲る」というのは、われわれが幼いころから教えられてきたこと。事実、お年寄りは膝や腰が悪かったり、長い間立っていられなかったりすることも多くあります。多くの若年層・中年層の人たちも、そういうお年寄りには進んで席を譲っていると思いますが、「譲られるのが当たり前」と言わんばかりの態度を取られると、ちょっと疑問に思ってしまう人が多いのではないでしょうか。

今回の件では、お花見シーズンのそれなりに混んだ電車の、指定席でもないシートで、まだ乗車もしていないのに席を取り、「お年寄りだから席を譲ってもらえるのは当たり前」とでも言うような態度が多くの人の反発を招いてしまいました。一部では、こうした老人を「暴走老人」と呼ぶ人もいます。

駅員への暴力は高齢者が2割を占める

日本民営鉄道協会が大手私鉄16社についてまとめた調査(2017年度)によると、駅員に対する暴力行為の加害者のうち、60代以上の人が占める割合は実に21%となっています。これは20代の23%に次ぐ2位の数字になります。

しかも、割合が大きいのは、この年だけではありません。2016年度は22%(同率1位)、2015年度は20%(3位)と、常に同程度の割合になっています。

この調査で60代以上の割合が大きい理由の一つには、世代ごとの区分けとして、10代から50代までは10歳刻みなのに、60代以上はひとまとめにされているからというのもあると考えられます。ただそれにしても、加害者に占める60代以上の比率は、われわれが普通に抱く「高齢者」「お年寄り」というイメージに比べると、かなり多いのではないでしょうか。

元気さに「高齢者の定義」が見直された

SNSでは、

・通勤途中、なぜかつり革で叩かれた
・もっと詰めろと濡れた傘で足を叩かれた

など、高齢者の暴力への不満も日々噴出しています。「年齢を重ねれば人は丸くなる」「年を取れば体力・筋力が落ちる」とは、もはや一律には言えないのかもしれません。ほかにも、「ぼーっとしてて気づかず優先席に座っていたら、大声で怒鳴られた」など、言葉の暴力の例もネット上ではよく目にします。

昨年には、日本老年学会や日本老年医学会で、「65歳以上」となっていた高齢者の定義を、「75歳以上」に見直そうという提言がなされました。理由は、「医療の進歩や生活環境の改善で、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断した」ため。一般的な年齢のイメージよりも元気な高齢者が増えてきているのは確かです。私たちの思っている高齢者と、現実の高齢者像は、だんだんと食い違ってきているのかもしれません。

心優しい人が迷惑を被っている?

当たり前ですが、電車に乗る老人の多くが「暴走老人」というわけではありません。むしろそうした人たちはノイジーマイノリティ(声の大きな目立つ少数派)なのかもしれません。

実際、ネット上でも、

・小さな子どもを連れている時に、席を譲ってくれた
・子どもが泣き止まなくて困っていた時、あやしてくれた
・電車で背中に止まっていた蜂をとってくれた
・席を譲ったら何度もお礼を言ってくれて、自分が降りる時もお礼を言ってくれた

など、電車の中での素敵なお年寄りのエピソードは尽きません。特に、お年寄りには子育て経験者が多いからか、母親や小さい子どもとの心温まるお話も多く見られます。赤ん坊の泣き声にシビアな人もいる中、そんなお年寄りがいたら心強いですよね。

それだけに、上で挙げたような「暴走老人」の行為が、ある種の衝撃をもって受け取られるのかもしれません。お年寄りでも「こんな人たちと一緒にしないで!」と思う方も多いでしょう。

「当たり前」と思わないこと

電車の中はさまざまな世代、バックグラウンドの人が集まっている分、ただでさえストレスも溜まり、トラブルも起こりやすい場所。だからこそ、お互いの気遣いが大切です。若くて元気な世代であればあるほど、身体の具合で長い間立っていられない高齢者やヘルプマークをつけた人、何らかのハンディキャップのある人、妊娠している人などには、席を譲る配慮は当たり前に必要でしょう。

もちろん元気な人であっても、突然のケガで、松葉杖を使わないと歩けないといった場合もあります。いざ自分が席を譲られる立場になったときにも、譲ってもらえるのを「当たり前」と思わずに、感謝の気持ちを口に出せる人になりたいものですね。

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2005年創業。ビジネス書・実用書を中心とした書籍出版や企業出版、メディア・コンテンツ事業、デザイン制作事業などを手がける。

主な刊行書籍に、20万部突破の『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』をはじめ、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』 『起業家のように企業で働く』 『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』 『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 『自分を変える習慣力』 『鬼速PDCA』など。