最近、東京オリンピックに向けた飲食店の受動喫煙防止対策や、電子たばこの普及など、たばこに対する意識が高まっています。しかし、お店など目に見える「外」はある程度は対策されていても、会社など「内」は目に見えないもの。思ったよりも対策が進んでいません。

「たばこは仕事の合間のリフレッシュに必要」という方もいるでしょうが、行き過ぎれば「スモークハラスメント」(スモハラ)になってしまいます。最近は何かあれば「○○ハラスメント」と言われてしまう「なんでもハラスメント」な状態ではありますが、「スモハラ」は健康に関わることでもあり、ひょっとするとセクハラ以上に身近な存在になってしまっているかもしれません。

職場のたばこで喘息再発でも「来なければ即解雇」

「スモークハラスメント」とは、喫煙を強要したり、職場でたばこの煙にさらすなど、喫煙に関する嫌がらせ全般のことを指します。喫煙室から帰ってきたときにたばこのニオイをまとっているだけでも、「スモハラ」にあたると主張する人もいます。

たばこに対する意識が高まっていても、まだまだ分煙・禁煙は進んでいません。たとえば、公益社団法人・日本青年会議所の職員だったある30代女性は、職場のたばこの煙で、以前に治っていた喘息(ぜんそく)が再発してしまいました。

環境が整わなければ復帰できないというドクターストップがかかっていたにもかかわらず、日本青年会議所は出勤命令を出して「応じなければ即解雇」という対応をし、結局、女性は解雇となってしまいます。

驚くべき「分煙」の方法

こうした経緯があり、女性は日本青年会議所に対して解雇の無効を求める裁判(労働審判)を起こしました。結果、「解雇は無効」という審判が下り、この6月29日付で440万円の解決金で和解しています。

前々から分煙を求めていた女性に対し、日本青年会議所も少しは対応したとのことです。しかし、その「分煙」は、ただついたてを立てただけという、非常にずさんなもの。当たり前ですが、上は開いていて煙も入ってくるし、廊下にも灰皿が堂々と置いてあり、今の時代では考えられないくらい分煙とは程遠かった内情が、労働審判の過程で明らかにされました。

さすがにレアケースになりつつあるが……

「ついたてを立てる」といった、驚くようなレベルの「分煙」の方法は、いまではさすがにレアケースになりつつあります。帝国データバンクの調査では、企業での禁煙・分煙制度の導入状況は「全面禁煙」「完全分煙」の占める割合は合わせて約80%で、「不完全分煙」「時間制分煙」「特に喫煙制限は設けていない」は合わせて約20%。そのうち、日本青年会議所が該当する「特に喫煙制限は設けていない」は約7%で、ごく少数派だといえます。

とはいえ、他の先進諸国からすると、日本のたばこ規制はまだまだ甘いと感じられるようです。完全分煙でも、喫煙室からたばこの煙が漂ってきて受動喫煙になったり、ひいてはスモハラとなったりすることも。SNSでは、「喫煙室帰りの上司がたばこ臭くてイライラする」といった声もよく挙がっています。

実際のところ、アメリカやイギリス、スウェーデン、ロシア、香港など他の多くの先進・新興諸国では、「分煙」のさらに先である「禁煙」が各所で推進されています。飲食店や会社など、パブリックな場所で喫煙可能な日本は、この観点で見るとまだまだ遅れているのです。

「たばこの代わり」もバラエティ豊富に

喫煙者の肩身がどんどん狭くなる一方で、「たばこの代わり」もバラエティ豊富になってきています。IQOS、グローなど、煙のほとんど出ない加熱式たばこはもちろん、電子たばこの種類も豊富です。

最近では、VITAFUL(ビタフル)という加熱式たばこに似たフレーバースティックなども登場し、女子大生などの間で話題になっています。ニコチン・タールが含まれていないため健康被害もないとされ、ミントやバニラ、マスカットなどの豊富なフレーバーや、かわいらしい見た目が若い女性に人気の理由だそうです。

たばこでリフレッシュしているという人もいるので、「たばこは悪だ」とは一概に言えないかもしれません。しかし、煙やニオイを不快に感じ、受動喫煙により健康被害を被る人もいます。単に「分煙しているから大丈夫」ではなく、その施策や施設が実際に効果的なのかどうかを含めて、喫煙者と禁煙者がうまく共存していけるしくみが整備されるといいですね。

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