3. 改正にあたっての配慮措置

遺族が妻の場合の5年間の有期給付は、段階的に行うことは前述したとおりですが、そのほかにも、次のような配慮措置を設けることが検討されています。

3.1 5年間の遺族厚生年金の額を現行制度より増やす

現行制度では、亡くなった被保険者の厚生年金加入記録に基づいて算出された老齢厚生年金額の4分の3に相当する額が遺族厚生年金額になりますが、その額に加算を行うことが検討されています。

3.2 年収850万円未満の収入要件を廃止する

現行制度では、亡くなった人と生計維持関係にあることが遺族の要件となっています。生計維持関係とは、死亡者と遺族が生計同一であり、かつ遺族の収入が年収850万円未満であることです。このうちの収入要件を廃止することが検討されています。これによって、有期給付の受給対象者が拡大します。

3.3 遺族となった配偶者の老齢厚生年金の増額

亡くなった人との婚姻期間中の厚生年金記録を分割し、その分割記録を65歳以降に受け取る配偶者の老齢厚生年金に上乗せする新たな制度が検討されています。

これにより分割を受けた者の将来の年金額が増加します。

4. 60歳以上の遺族厚生年金は変更なし

今回の改正案は18歳未満の子どもがいない60歳未満の配偶者を対象とした見直しです。

そのため、子どもがいる世帯の遺族基礎年金と遺族厚生年金に変更はありません。また、60歳以上の妻や夫が受け取る遺族厚生年金も変更はありません。

亡くなった配偶者の厚生年金加入記録に基づいて算出された老齢厚生年金額の4分の3に相当する額を生涯受け取ることができます。

参考資料

石倉 博子