厚生労働省は、遺族厚生年金について、60歳未満で子どものいない配偶者は男女ともに受給期間を5年間とする改正案を発表しました。
これまで、子どものいない夫婦が60歳未満で受け取る場合の要件に、男女差があり不公平であると言われてきました。今回の改正案ではそれが是正されています。
現行制度からどのように変わるのか、ややこしい遺族厚生年金の受給要件を整理して、改正のポイントをわかりやすくお伝えします。
1. 遺族厚生年金はどう変わる?
今回の遺族厚生年金の見直し内容をお伝えする前に、現行の制度がどのようになっているのか、見直しとなる部分を中心に確認しておきましょう。
1.1 現行の遺族年金の受給要件
国民年金および厚生年金の被保険者が死亡した場合に、死亡した人と生計維持関係にある遺族は、次の要件に当てはまると遺族年金を受給することができます。
1.2 遺族基礎年金を受給できる人
18歳未満の子を持つ配偶者または18歳未満の子
※子の要件:18歳になった年度末までの子、または20歳未満で一定の障害状態にある子
1.3 遺族厚生年金を受給できる人
次の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。
- 配偶者および子
- 父母
- 孫
- 祖父母
※夫、父母、祖父母の場合は、死亡当時に55歳以上であることが要件となります。ただし遺族年金が支給されるのは60歳からです。
配偶者がいる場合は、配偶者が受給することになりますが、子どもがいる配偶者(遺族基礎年金が受給できる配偶者)は性別や年齢に関係なく、遺族基礎年金と合わせて遺族厚生年金が受給できます。しかし、子どもがいない配偶者の場合、性別と年齢によって受給内容が変わってきます。
<遺族が妻の場合>
- 30歳未満の妻は5年間の支給
- 30歳以上の妻は生涯にわたり支給
<遺族が夫の場合>
- 55歳未満の夫には支給されない
- 55歳以上の夫には支給されるが、60歳から支給開始となる
共働き夫婦が多数を占める現在では、実態にそぐわないとして、男女差を解消する案が示されました。