4. 支給額ごとの手取り額から見る繰下げ受給の増額効果は?

先述の東京都大田区在住の単身者の例で、年金の支給額(年額)ごとの手取り額は以下のとおりです。括弧内の数字は、支給額に占める手取り額の割合です。

  • 60万円:51万4600円(85.7%)
  • 120万円:110万2720円(91.8%)
  • 180万円:160万8631円(89.3%)
  • 240万円:207万5893円(86.4%)
  • 300万円:255万3848円(85.1%)

上記から、年間の支給額が120万円以上では、支給額が増えるほど手取りの割合が減ることがわかります。

年金額が増加すると、所得税・住民税と社会保険料も増えるためです。

このことから、繰下げ受給によって年金額が増えても、思ったより手取りが増えないケースもある点に注意が必要です。

たとえば、65歳から受給すると年額150万円の年金を繰下げ受給して、240万円に増額されたとします。その場合、支給額ベースでは1.6倍に増えたことになります。

しかし、手取り額で見ると、138万2920円から207万5893円と約1.5倍の増加にとどまるのです。

5. 繰下げ受給を検討する場合、手取り額も確認しましょう

年金の繰下げ受給は年金額が増額される点はメリットですが、考慮すべき点もいくつかあります。

年金から差し引かれる税金や社会保険料は、支給額が増えるほど高額になります。

そのため、特に繰下げ前の年金額が高めの場合、繰下げによって手取りが大幅に減るおそれがあるのです。

繰下げを検討する場合は、支給額の増額率ばかりに着目せず、手取り額も考慮し、受給開始時期を決めましょう。

参考資料

松田 聡子