夫婦が離婚する際には共有財産を分け合いますが、年金も分割できることをご存じでしょうか。特に、専業主婦(主夫)の方は、老後に受け取る年金が老齢基礎年金のみとなることが多く、離婚すると老後の生活が困窮する可能性があります。

年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」があり、それぞれ利用できる条件があります。

この記事では、年金分割制度とはどのような内容なのか、概要や特徴を解説するとともに、年金分割の計算方法を確認していきます。

1. 年金分割制度とは

年金分割制度とは、夫婦が離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付実績を分割し、それぞれが老後の年金として受け取れる制度です。

年金分割制度を利用する際には、日本の公的年金制度を理解する必要があります。日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建てとなっています。

【写真全3枚中1枚目】公的年金制度のしくみ。2枚目以降では、離婚時の年金分割の概要などについて掲載。1/3

公的年金制度のしくみ

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

このうち年金分割制度の対象になるのは、厚生年金の部分のみです。しかも、婚姻期間中の納付実績が対象なため、独身時代の分は対象外となります。

なお、年金分割制度は夫から妻へと決められているわけではなく逆のケースもあり得ます。専業主夫の場合や、夫より妻の厚生年金保険料の方が高額な場合は、妻から夫へ分割可能です。

次の章では、年金を分割する際に適用される2つの制度についてみていきましょう。

2. 「合意分割」と「3号分割」

年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2つの制度があります。それぞれの概要を確認していきましょう。

2.1 合意分割

夫婦が離婚し次の条件に該当する場合に、婚姻期間中の厚生年金納付実績を分割できます。

離婚時の年金分割:合意分割制度2/3

離婚時の年金分割:合意分割制度

出所:日本年金機構「離婚時の年金分割について」

  • 婚姻期間中に厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)がある
  • 夫婦の合意または裁判手続きにより分割割合を決めた
  • 離婚をした日の翌日から2年を経過していない

大前提として、婚姻期間中に少なくても夫婦のいずれかに厚生年金記録があることが条件です。年金分割する際の分割割合は、夫婦の合意で決めるのが原則ですが、合意が得られない場合は裁判手続きにより決定します。

婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の多い方から少ない方へ、記録が分割されます。分割割合は2分の1が上限です。

合意分割の請求をした際に、3号分割の対象期間が含まれる場合は、合意分割とあわせて3号分割の請求もあったとみなされます。3号分割の対象期間は、3号分割による分割に加え、合意分割による分割も行われます。

2.2 3号分割

夫婦が離婚し、次の条件に該当する場合、国民年金の第3号被保険者だった方からの請求により、相手の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。

なお、国民年金の第3号被保険者とは、配偶者に扶養されていた方のことで、専業主婦(主夫)やパート・アルバイトで扶養の範囲内で働いていた方などが該当します。

離婚時の年金分割:3号分割制度3/3

離婚時の年金分割:3号分割制度

出所:日本年金機構「離婚時の年金分割について」

  • 婚姻期間中に平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間がある
  • 離婚をした日の翌日から2年を経過していない

年金分割の対象となるのは、平成20年4月1日以降の婚姻期間です。

3号分割は、分割することについて夫婦間の合意は必要なく、第3号被保険者だった方の請求のみで申請できます。また、分割割合は一律で2分の1になります。

ただし、分割される方が障害厚生年金の受給権を有していて、分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、3号分割は請求できません。

次の章では、実際にどのように年金が分割されるか、計算方法を確認していきます。

3. 年金分割の計算方法

ではここで、合意分割と3号分割で年金がどのように分割されるのか、計算方法を見ていきましょう。

3.1 合意分割:夫婦共働きの場合

以下のシミュレーション条件で計算します。

  • 夫婦共働き
  • 対象期間標準報酬総額(※):夫6800万円、妻:2500万円
  • 分割割合2分の1ずつ

※対象期間標準報酬総額とは、分割対象期間の厚生年金の標準報酬を、本人の生年月日に応じた再評価率を使って現在価値に換算した額の合計額のこと

夫婦の対象期間標準報酬総額を合計すると9300万円です。

計算)6800万円+2500万円=9300万円

分割割合が2分の1ずつで、それぞれの対象期間標準報酬総額を計算すると、夫婦共に4650万円となります。
計算)
夫:9300万円×1/2=4650万円
妻:9300万円×1/2=4650万円

対象期間標準報酬総額4650万円の、老齢厚生年金受給額は年額25万4866円です。

計算)4650万円×5.481/1000=25万4866円

本来、夫は37万2708円受給できるはずで、妻は13万7025円受給の予定でした。しかし、分割したことで夫は11万7842円減額となり、妻がその分増額されます。

計算)
夫:6800万円×5.481/1000=37万2708円
妻:2500万円×5.481/1000=13万7025円

※5.481は、老齢厚生年金額を計算するための給付乗率です

3.2 3号分割:夫が会社員、妻が専業主婦の場合

以下のシミュレーション条件で計算します。

  • 夫が会社員、妻が専業主婦
  • 対象期間標準報酬総額:夫7000万円、妻:0万円
  • 分割割合:2分の1ずつ

夫婦の対象期間標準報酬総額を合計すると7000万円です。

計算)7000万円+0円=7000万円

分割割合が2分の1ずつなので、それぞれの対象期間標準報酬総額を計算すると、夫婦共に3500万円となります。

計算)
夫:7000万円×1/2=3500万円
妻:7000万円×1/2=3500万円

対象期間標準報酬総額3500万円の、老齢厚生年金受給額は年額19万1835円です。

計算)3500万円×5.481/1000=19万1835円

妻は、本来であれば老齢厚生年金は受給できませんでしたが、分割することで19万1835円がもらえることになります。

なお、ここまでの計算はあくまでもシミュレーションであり、実際には異なる点にご注意ください。

4. まとめにかえて

離婚する際には、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付実績を分割し、老後にそれぞれが年金として受給できます。合意分割と3号分割があり、それぞれ利用条件があるため、制度内容をよく理解したうえで利用しましょう。

年金分割制度は、夫から妻へと決められているものではないため、専業主夫や妻の方が厚生年金保険料が高額な場合は、男性が分割を受けることもできます。

参考資料