6月に今年2回目、年度としては初めての年金が支給されました。年金を受け取っている人のなかには、今もなお社会人として仕事をして活躍されている人もいるでしょう。
65歳以降も働き続けることで、収入の柱が「給与」と「年金」の2本になります。
一方で、それぞれ一定金額を上回ると税金が発生するため「今年はどれくらい引かれるのだろう」と心配な人もいるのではないでしょうか。
特に「確定申告の有無」は手続きの煩雑さも相まって、必要かどうか気になるところです。
この記事では、給与と年金を両方受け取っている人の税金や確定申告の有無を解説します。
フローチャートも交えながら解説するので、働きながら年金を受給している人はぜひ参考にしてください。
1. 給与から天引きされるお金6つ
給与をもらっている人は、税金が給与から天引きされます。給与から天引きされるお金を振り返りましょう。
【写真全5枚中1枚目】給与から天引きされる主なお金の一覧表。2枚目以降では、年金受給者の確定申告不要制度などを掲載。1/5
出所:東京都主税局「給与明細の見方」、高島市「会社の健康保険に加入していますが、65歳になっても給与から介護保険料が引かれています。二重ではないですか?」を参考に筆者作成
- 所得税:毎月の給与から差し引かれる。給与が103万円以下の場合は年末調整で還付される。
- 住民税:毎月の給与から差し引かれる。非課税の場合は差し引かれない。
- 健康保険料:事業主と折半した額が天引きされる。
- 雇用保険料:事業主と折半した額が天引きされる。
- 厚生年金保険料:事業主と折半した額が天引きされる。
- 介護保険料:40歳以降から負担する保険料で、事業主と折半した額が天引きされる。
※65歳以降は原則年金から天引きされる
給与から天引きされるのは税金と社会保険料で、税金は2つ、社会保険料は4つのお金が差し引かれます。ただし、介護保険料については、65歳以降年金から天引きされます。
次の章では、年金から天引きされるお金について解説していきます。
2. 年金から天引きされるお金5つ
税金や社会保険料は、給与だけでなく年金からも天引きされます。年金から天引きされるお金を振り返りましょう。
年金から天引きされる主なお金の一覧表2/5
出所:日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」、日本年金機構「年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。」をもとに筆者作成
- 所得税:65歳未満は年間の年金受給額が108万超、65歳以上は年間の年金受給額が158万超。
- 住民税:65歳以上で老齢もしくは退職を理由に年金を受給しており、年間の年金受給額が18万円以上。
- 国民健康保険料:後期高齢者医療制度の該当者を除く65歳以上75歳未満で老齢もしくは退職を理由に年金を受給しており、年間の年金受給額が18万円以上。
- 後期高齢者医療保険料:75歳以上か後期高齢者医療制度の該当者で老齢もしくは退職を理由に年金を受給しており、年間の年金受給額が18万円以上。
- 介護保険料:65歳以上で老齢・退職・障害・死亡を理由に年金を受給しており、年間の年金受給額が18万円以上。
※国民健康保険料および後期高齢者医療保険料は、介護保険料との合計額が特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合は、天引きされない。
年金から天引きされるお金は税金2つ、社会保険料3つの計5つです。このうち、国民健康保険料は会社で健康保険に加入していれば加入する必要がないため、保険料は差し引かれません。
給与から健康保険料が天引きされます。一方、75歳になると自動的に健康保険を脱退して後期高齢者医療保険制度に加入します。そのため、後期高齢者医療保険料は要件に当てはまれば必ず差し引かれます。
また、所得税・住民税は所得ごとに課税される仕組みです。よって、給与所得、年金所得の両方から差し引かれます。
二重に課税されているわけではないことをおさえておきましょう。
では、年金と給与を受け取っている人の確定申告の取り扱いは、どのようになっているのでしょうか。次章にて解説します。
3. 確定申告が不要な人
確定申告の要・不要は、収入額によって決まります。以下のフローチャートを見ながら、自分がどちらに当てはまるのか確かめてみましょう。
- 確定申告が不要なケース:公的年金等の収入金額が年間400万円以下で、給与所得などの年金以外の所得(雑所得除く)が年間20万円以下
- 確定申告が必要なケース:公的年金等の収入金額が年間400万円超、もしくは公的年金等の収入金額が年間400万円以下で、給与所得などの年金以外の所得(雑所得除く)が年間20万円超
年金収入が年間400万円超、もしくは給与所得が20万円超ある人は、確定申告が必要です。ただし、給与所得については会社で年末調整してくれるため、給与と年金以外の収入がない人は「年金収入が400万円を超えるかどうか」が確定申告の有無を判断する基準となります。
年金所得は雑所得に該当します。65歳未満は108万円、65歳以上は158万円超の年金を受け取っている場合、年金から税金が天引きされます。よって、本来は確定申告で税金の過不足を精算しなければなりません。
しかし、年金受給者の人は確定申告の手続きが大きな負担となります。特に今まで会社に勤めていて確定申告をする機会がなかった人にとっては、いきなり「確定申告が必要」といわれても申告方法がわからず、困難な手続きとなるでしょう。
そこで、年金収入400万円以下の人は、ほかに20万円超の収入がない場合に限り、確定申告を不要としています。毎月の年金額が33万3333円以下の人は、確定申告しなくてもよいと考えておきましょう。
4. 確定申告不要でも住民税の申告が必要な場合も
年金収入が400万円以下で、ほかの所得が20万円以下の場合は、原則確定申告が不要です。しかし、収入額によっては、確定申告が不要でも住民税申告が必要な場合があります。
所得税は国税で、住民税は地方税です。そのため、課税基準が異なります。所得税が0円だからといって、住民税も0円とは限らないのです。
住民税には所得に応じてかかる「所得割」と、課税者全員が負担する「均等割」からなります。また、住民税の課税基準は、自治体によって異なります。ここでは、東京23区の住民税が非課税となる基準を紹介します。
4.1 所得割・均等割どちらも非課税
- 生計を共にする配偶者や扶養親族がいる場合
合計所得金額が35万円✕(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下 - 生計を共にする配偶者や扶養親族がいない場合
合計所得金額が45万円以下
4.2 所得割のみ非課税(均等割のみ課税)
- 生計を共にする配偶者や扶養親族がいる場合
総所得金額が35万円✕(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+42万円以下 - 生計を共にする配偶者や扶養親族がいない場合
総所得金額が45万円以下
「自分が住民税の課税対象かどうかわからない」という人は、住んでいる自治体に問い合わせてみましょう。
5. 年金受給者で確定申告が必要な人の条件
年金受給者で確定申告が必要な主要ケースは、以下のとおりです。
年金受給者で確定申告が必要なケース5/5
出所:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」、国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」および国税庁「申告の流れ、申告が必要な方」をもとに筆者作成
〈所得税の還付を受けたい人〉
年金から所得税が天引きされている人で、以下に当てはまる人
- 住宅ローンを組んでマイホームを取得した場合
- 一定額以上の医療費を支払った場合
- 災害や盗難などの被害にあった場合
〈各種控除を受けたい人〉
公的年金などに係る雑所得のみがある人で「公的年金などの源泉徴収票」に記載されている控除のうち、社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除、基礎控除以外の各種控除の適用を受ける場合
例:生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除など
〈年金以外に収入が20万円超ある人〉
以下のような収入が20万円超ある人
- 不動産の貸付による収入
- 個人年金保険による年金収入
- 生命保険の契約期間満了による満期返戻金
- 上場株式の売却利益や配当金 など
〈給与所得がある人〉
以下に当てはまる人
- 給与収入が2000万円を超えている人
- 給与を2カ所以上から受け取っており、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、年末調整をされなかった給与の収入金額と所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円超の人
同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている方など
住宅ローンを組んで家を建てた場合や一定額以上の医療費を支払った場合、災害や盗難などの被害に遭った場合は、所得税の還付を受けられる場合があります。この場合は、確定申告をして最終的な税額を確定する必要があります。
また、収入が年金所得のみの人で、生命保険料を支払っている人や医療費を支払った人は、控除を活用すれば税額を下げられます。控除を適用する際にも、確定申告が必要です。ただし、給与を受け取っている人は年末調整で控除が適用できる場合があります。
加えて、前述のように年金以外に収入が20万円超ある場合も、確定申告をしなければなりません。主な収入としては、以下のものが考えられます。
- 不動産の貸付による収入
- 個人年金保険による年金収入
- 生命保険の契約期間満了による満期返戻金
- 上場株式の売却利益や配当金
など
「生命保険が満期を迎えてお金が戻ってきた」「株式を売って儲けられた」という人は、その年に限り確定申告が必要な場合があります。
さらに、収入が年金と給与のみでも、給与収入が2000万円を超える場合や給与を2カ所以上から受け取っていて、合計額が20万円を超える人などは、確定申告が必要です。
確定申告が必要にもかかわらず申告しなかった場合、延滞税や税金の加算などのペナルティが課される場合があります。特に一時的に収入が増えた場合は申告対象となる場合があるので、必ず年間収入額を控えておくようにしましょう。
5.1 給与で源泉徴収されていても確定申告が必要?
給与から所得税が源泉徴収されていても、確定申告が必要な場合があります。たとえば、住宅ローン控除や医療費控除を受けるときです。
住宅ローン控除は控除を受ける初年度、医療費控除は控除を適用するたびに確定申告が必要となります。申告しないと控除を受けられず所得税の還付を受けられないため、控除を受けたい年には必ず申告しましょう。
また、給与と年金以外に20万円超の収入がある場合も、確定申告が必要です。
特に貸家を所有していたり株式投資をしていたりする際は、年間の収入が20万円を超える可能性が十分考えられます。
給与と年金以外に柱となる収入がある人は、確定申告の必要がないか、収入額をよく確かめておきましょう。
6. 確定申告に必要な書類一覧
確定申告の際に必要な書類は、以下のとおりです。
- 所定の確定申告様式(申告書第一表、第二表など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、住民票など)
- 収入や必要経費がわかる「収支内訳書」(不動産所得がある場合)
- 「譲渡所得の内訳書」(株式売却などの譲渡所得がある場合)
- 控除を適用するための書類(保険料や医療費を支払ったことがわかる証拠書類や住宅ローン控除のための計算明細書)
必要経費を支払ったことがわかる書類以外は、国税庁のWebサイトに掲載されています。
書類の記入方法は国税庁のサイトを見たり、自治体管轄の税務署に相談したりしながら進めましょう。
7. まとめにかえて
給与と年金を両方受け取っている人は、400万円超の年金を受け取っている人や、給与・年金以外に20万円超の収入がある人でなければ、原則確定申告の必要はありません。
働きながら年金を受給している人は、年間の年金受給額がいくらかを注視しておきましょう。
一方、所得税がかからなくても申告する必要がある場合や別途住民税の申告が必要な場合もあります。
「自分が確定申告する必要があるかどうか」を見極めて、漏れのないように申告手続きをしましょう。
参考資料
- 東京都主税局「給与明細の見方」
- 高島市「会社の健康保険に加入していますが、65歳になっても給与から介護保険料が引かれています。二重ではないですか?」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 日本年金機構「年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。」
- 姫路市「私には、給与と年金の所得があり、給与から住民税が特別徴収(引き落とし)されています。しかし、年金からも住民税が特別徴収されています。なぜ、給与から住民税を納めているのに、年金からも住民税が特別徴収されるのですか。二重課税(払い)ではないのですか。」
- 政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「申告の流れ、申告が必要な方」
- 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 国税庁「〔令和5年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き〕申告書に添付・提示する書類」
- 国税庁「A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)」
石上 ユウキ