2024年も早半年が過ぎました。定額減税や電気代・ガス代への補助金など、お金にまつわる話題も多く耳にする半年間でした。

近年、多くの人が老後には2000万円必要であることを頭の片隅に置いています。

老後2000万円問題が社会に与えたインパクトは、2018年出版の垣谷美雨氏著『老後の資金がありません』(中央公論新社) が映画化・舞台化されたことからもうかがえます。

そもそも「2000万円」という金額は総務省の「家計調査報告(2017年)」の調査結果を基に試算されたものです。

高齢夫婦無職世帯の毎月の平均的な収入(公的年金)と支出では5万円程度の赤字が出るため、この赤字を埋めるための老後資金として約2000万円必要とのことでした。

しかし、昨今の物価高などを鑑みて「老後4000万円必要とする」という見方をする識者も少なくありません。

本記事では、60歳代で4000万円の貯蓄がある世帯割合を確認した上で、老後資金として4000万円必要なのか節約術とともに考えていきましょう。

1. 60歳代世帯の現在貯蓄高分布:貯蓄4000万円を達成している世帯割合は?

食料品や消耗品などが値上がりしている昨今。このまま物価が上がりつづければ、老後資金として4000万円が必要となる可能性が指摘されています。

2024年5月17日に公表された、総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、世帯主が65歳以上の世帯で4000万円以上の貯蓄がある世帯の割合を見ていきましょう。

【写真全3枚中1枚目】60歳代世帯の現在貯蓄高分布。2枚目以降では、高齢者も利用できる共同住居型賃貸住宅(シェアハウス)のイメージを掲載。

60歳代世帯の現在貯蓄高分布

出所:総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果(二人以上の世帯)」をもとにLIMO編集部作成

統計によると、60歳代前半で4000万円以上の貯蓄がある世帯は全体の約19.4%、後半では約17.9%でした。

「老後資金4000万円」となれば全世帯の2割未満しかクリアできていない状況が見受けられます。

とはいえ見落としてはならないのは、世帯によって貯蓄額に大きな差があることです。

貯蓄額が100万円未満の世帯は約8.5%(60歳代前半:約9.2%、60歳代後半:約7.8%)存在します。

60歳代の半数近くが老後資金2000万円をクリアしていることにばかり着目すると、高齢者は経済的に余裕があるという先入観を抱く原因になるので注意が必要です。

2000万円以下の貯蓄の世帯もいる中、シニア世代を対象とした支援が施される際に批判的な声が多く挙がったり、支援が後まわしになったりする原因にもなりかねません。

次の章では、いくら老後資金が必要になるか不透明な現状、検討できる選択肢について詳しくみていきましょう。