有機EL用燐光発光材料の最大手である米ユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC)は、先ごろ発表した2018年1~3月期決算において、18年の通年売上高見通しを当初計画の3.5億~3.8億ドルから2.8億~3.1億ドルに下方修正した。「有機ELスマートフォンの減少が我々の予想より早い」(CEOのSteve Abramson氏)ため上期の需要が低調で、一気に7000万ドルも引き下げることになった。UDCの17年売上高は3.36億ドルだったことから想定すれば、18年の有機ELディスプレー市場は前年割れする可能性が非常に高くなった。

発光材料の売り上げ半減

 UDCの18年1~3月期業績は、売上高が前年同期比22%減の4357万ドル、営業利益は同63%減の452万ドルだった。売上高の内訳は、燐光発光材料が同46%減の2525万ドル、ロイヤルティー&ライセンス収入が同2.3倍の1591万ドル。ロイヤルティー&ライセンス収入の増加は、17年末に最大顧客であるサムスンディスプレー(SDC)と新たな契約を更新したことによるとみられる。従来は4~6月期と10~12月期にSDCからのライセンス収入を計上していたが、新契約では販売量などに応じて四半期ごとに計上するかたちになったようだ。

 また、発光材料の売上高2525万ドルのうち、黄緑色を含む緑色発光材料の売上高は1700万ドル、赤色発光材料の売上高は800万ドルにとどまり、それぞれ前年同期比で49%減、38%減と大幅に減少した。アップルの有機ELディスプレー搭載スマホiPhone Xの販売不振で、SDCの工場稼働率が大幅に低下している影響を受けたとみられる。

アップルも有機ELモデルの生産数引き下げへ

 アップルはiPhoneの18年モデルで、フレキシブル有機ELディスプレー搭載端末を2機種に増やす見通し。当初は液晶モデルと有機ELモデルの生産比率は5対5になるとみられていたが、ここにきて液晶モデルの生産比率を上げようとしており、直近の見通しとして液晶を6~7割に増やし、有機ELは2機種合計で3~4割にとどまるといわれている。さらに、販売時期を液晶モデルと有機ELモデルで少しずらし、まず有機ELモデルを先に発売し、液晶モデルは2~3カ月後に投入するもようだ。

 調査会社の英IHS Markitが3月に発表した予測によると、スマホ向けのフレキシブル有機ELパネルの出荷数は当初予測から大幅に減速し、18年は17年比34%増にとどまる見通しに下方修正した。同社の調べによると、16年の出荷数は4000万枚、17年は3倍以上の増加となる1.25億枚だったが、iPhone Xの販売が期待した水準に届かず、スマホ各社が購買計画の再考に迫られているため、18年は34%増の1.67億枚にとどまると予測した。しかし、UDCの業績予想を見る限り、予測をさらに下方修正する必要に迫られるのではないだろうか。

SDCに続くパネルメーカーが歩留まりを向上しなければ

 UDCは、18年1~3月期の決算カンファレンスで、「19年には有機ELの生産能力が17年比で50%増加するとみており、この大部分が19年に立ち上がり、収益拡大につながる」と説明。また、能力の増加が見込める(=発光材料の売り上げ拡大が見込める)顧客として、中国BOEの中小型フレキシブル有機ELと、LGディスプレー(LGD)のテレビ用大型有機ELを挙げた。

 なかでもBOEは、スマホ用有機ELディスプレーの生産ラインを成都、綿陽、重慶に整備することを表明している。だが、フレキシブル有機ELは、量産で先行するSDCに対して、BOEを含めた他社はいまだ量産技術の完成度に開きがあり、BOEもまだ十分な量産歩留まりを実現できていないと言われている。UDCの言う「生産能力50%増」が現実になるかは、BOEやLGDの量産歩留まりにかかっており、ひいてはこれが「スマホ用ディスプレーとしての有機ELの今後」を握る最大のカギになっている。

(津村明宏)

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏