4. 「老後対策」の重要な視点…FPからの提案
ここまで、60歳~89歳までの国民年金と厚生年金の平均年金月額を見てきました。現行の年金制度での水準なので、今後どうなっていくのか不安を感じる人も多いでしょう。
現在、将来の不安や物価上昇の問題もあり、シニア世代の就業率が高まっています。そこで、一つ選択肢となるのが年金受給年齢の繰り下げです。
老齢基礎(厚生)年金は65歳から受け取らずに、66歳~75歳※の間で繰下げることにより、その後の年金額を増額することが出来ます。
なお、その増加率は一生変わりません。仮に65歳から70歳までの5年間繰り下げ期間がある場合、受取年金額は最大で1.42倍となります。(老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々で繰下げすることが出来ます)
貯蓄や資産運用について考える必要があるのはもちろんですが、いつまで仕事をして収入を得るのか、それに応じていつから年金を受取始めるのか。これらを合わせて考えていくことが大切です。
※昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなります。
5. 老後に備えた貯蓄計画が大切
紹介したデータはあくまでも平均なので、「他人の年金額は興味ない」と感じた方もいるでしょう。
年金制度は変化しており、今の水準が続く保証もないため、常に新しい情報に触れておく必要があります。そのため、平均額の推移をみるだけでも大きな気づきがあるかもしれません。
何より、自分自身の見込額に興味を持つきっかけとなれば幸いです。できれば見込額を把握した上で、「足りない分をどう備えよう」と考えられるのが理想ですね。
100%年金だけで生活できる人は多くありません。老後までの期間から逆算し、長期間の貯蓄計画を立てていきましょう。
5.1 【ご参考】厚生年金の平均年金月額(全年齢)
- 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金部分を含む
5.2 【ご参考】国民年金の受給額(全年齢)
- 〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」2024年7月5日
橋本 高志