「老後2000万円問題」と言われたように、老後を不安に思う方も多いのではないでしょうか。現在は65歳で退職することが一般的ですが、年金だけでは老後の生活において頼りないとなると、もう少し長く働こうと考える方も多いかもしれません。
実際に、定年退職後に再雇用や定年延長で働く方が増えています。ただ、労働者にとってはメリットがありますが、シニア世代を雇用することに課題を抱えている企業も多いようです。
今回は、高齢者の雇用を取り巻く現状を厚生労働省から公表された「高年齢者雇用状況等報告」や最新の意識調査からその実態を紐解いていきます。
また、記事の後半では、シニア世代の貯蓄の現状を確認していきます。
1. 高齢者の雇用は拡大中! 定年を引き上げた企業は1.4ポイント上昇の26.9%
2023年12月22日に公開された厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」によると、調査した従業員21人以上の企業23万7006社におけるシニアの就業に関する動きは以下のようになりました。
調査した企業のうち、定年制を廃止した企業は3.9%、定年を引き上げた企業は26.9%、継続雇用制度を導入した企業は69.2%にのぼりました。
また、企業における定年制の状況は以下の通りとなりました。
- 定年制を廃止している企業:3.9%(9275社)[変動なし]
- 定年を「60歳」とする企業:66.4%(15万7457社)[1.7ポイント減少]
- 定年を「61~64歳」とする企業:2.7%(6502社)[0.2ポイント増加]
- 定年を「65歳」とする企業:23.5%(5万5712社)[1.3ポイント増加]
- 定年を「66~69歳」とする企業:1.1%(2699社)[変動なし]
- 定年を「70歳以上」とする企業:2.3%(5361社)
定年を65歳とする企業は5万5712社で23.5%。前回調査よりも増加しています。
ちなみに株式会社LIFULLが実施した「シニアの就業に関する意識調査」によると、現在希望通りの仕事に就いているシニアは全体の約8割(79.3%)。
さらに「5年以内に仕事探しをした方」に絞ると、約3人に1人(29.5%)のシニアが希望通りの仕事に就けていない状況とわかりました。
こうした定年制の状況など、現代の働くシニアはどのように捉えているのでしょうか。
それでは、次の章からこうした就業の壁を抱える60歳代・70歳代のお金事情をみていきましょう。