はじめに
社会人として行動する上で欠かせないのが「報連相」です。用語として一度は聞いたことがあるものの、実際のところ、どのように振る舞えばよいか、自己流で判断している人が多いのではないでしょうか。報連相の欠如が原因で、個人評価だけでなくチームや会社全体の組織力を下げていることもあります。報連相の重要性やマネジメントのコツについて詳しく紹介していきます。
目次
1. 報連相とはどんな意味?
2. 報連相が重要な理由
2-1. 適切な「報告」が行われていなかったケース
2-2. 適切な「連絡」が行われていなかったケース
2-3. 適切な「相談」が行われていなかったケース
3. 報連相の「報告」を成功させるためのポイント
4. 報連相の「連絡」で気を付けること
5. 報連相の「相談」はどうすれば成功する?
6. 報連相ができない部下がいたときのマネジメント方法
7. 報連相の重要性と組織に与える影響
1. 報連相とはどんな意味?
報連相(ほうれんそう)とは、「報告」「連絡」「相談」の頭文字を取ってつなげたビジネス用語のひとつです。
【「報告」とは】
「報告」とは、指示や命令に対して、進捗や結果を報告することを指します。部下から上司へ、もしくは後輩から先輩へ、など上の職層に対して行うことが一般的です。
【「連絡」とは】
関係者に展開しておきたい情報を、知らせることを指します。連絡では、メンバー同士、メンバーからリーダーへなど、誰もが発信者であり受信者にもなるのが特徴です。
【「相談」とは】
自業務の進め方や取り組み方法について、意見を聞いてアドバイスをもらうことを指します。上司や先輩、同僚などに対して行われることが多いようです。
2. 報連相が重要な理由
企業などの組織は、経営方針に従って、短期または中期の目標を決定します。そして、その目標を達成するために、各部署がおのおのの役割に応じた業務を遂行します。このため、組織のトップは各部署の状況を、各部署の長は部署メンバーの状況を、それぞれ把握しておく必要が生じます。ですから、タイムリーに報連相が行われていない場合、様々なトラブルや問題を引き起こす可能性があるのです。
以下、報連相にまつわる、様々なエピソードを集めてみました。
2-1. 適切な「報告」が行われていなかったケース
【IT系企業で働くCさんの話】
職場のAさんは、いつも上司のBさんに業務の進捗を報告しません。このため、Bさんは、Aさんに対して、「あれはどうなっている?」と、業務中にちょくちょく確認を入れます。Aさんはいつも、「よくBさんから、報告しろと、業務中に呼び出される。そのたびに仕事が中断されて困る。」とぼやいていますが、Bさんも、Aさんにしょっちゅう確認をしなければならず、業務が増えてしまっているように思えます。
【託児施設で働くDさんの話】
先日、お預かりしたお子さんが、遊具で軽いけがをするという事故が起こりました。その際、施設長がご家族に対し、「お子さんが、遊具を正しく使っていなかったのだと思います。」というような説明をしたのですが、あとで、実はその遊具は以前から壊れており、お子さんはそのせいでけがをしたということがわかったのです。故障に気づいていた職員もいたのですが、施設長への報告を怠っており、結果、知らなかったとはいえ、違った原因説明をしたということで、施設長は辞任、施設を運営する会社は、けがをしたお子さんのご家族に対して、損害賠償を支払うという事態にまで発展してしまいました。
2-2. 適切な「連絡」が行われていなかったケース
【広告代理店で働くEさんの話】
ある大企業の新製品PRのチームリーダーを任されたことがあります。依頼してきた企業も力をいれている商品だけあり、何度か方針変更があったのですが、一度、企業側の担当のFさんが、方針変更の連絡を入れ忘れ、それまでのこちらの準備がすべて無駄になるということがあったのです。依頼企業側のトップからは、「依頼通りになっていない。」ということで、チームの評価が下がり、当然メンバーの士気も落ちました。
関係各所と調整し、なんとか、変更後の方針に沿うような形に戻せましたが、あのときは、本当に大変でした。
【商社で働くGさんの話】
打ち合わせが非常に多い会社なのですが、当然打ち合わせ日時の変更もよくあります。一緒に働くHさんは、その連絡をメールだけですませるのですが、直前の変更だと、メールが確認できず、変更に対応できないこともあります。緊急の場合は、電話なども使い、確実に伝えるようにしてもらいたいものです。
2-3. 適切な「相談」が行われていなかったケース
【システム開発のIさんの話】
在宅で、企業からシステム開発を請け負っています。仕事を始めたばかりの頃ですが、仕様面でわからないことがありましたが、納期が迫っていたこともあり、自分の判断だけで仕事を進めてしまったことがあります。しかし、判断は間違っており、後日、無償でやり直すことになりました。
【販売店勤務のJさんの話】
何人かでチームを組み、セールの企画を立てます。入社して日の浅いKさんがリーダーになった時があるのですが、Kさんは、チームメンバーにまったく相談をせず、自分ひとりの考えで企画を練り上げてしまいました。相談をされていないので、メンバーはKさんの意図を組んで動くことができません。結果、そのセールの売り上げは、散々な結果に終わりました。
これらの事例からも、報連相は、ミスによる被害の拡大を最小限にするためにも重要なタスクといえるでしょう。
3. 報連相の「報告」を成功させるためのポイント
「報告」には、業務が終了したあとの「完了報告」、業務やプロジェクトの進捗を伝える「中間報告」などのように定期的なものと、それ以外の不定期なものの2種類があります。
後者の具体例としては、業務に有益な新しい情報を入手したときや、突発的なアクシデントがあったときなどがあげられますが、この場合の「報告」は、いつ情報を入れるかのタイミングが、非常に重要です。
例えば、業務に有益な新しい情報を得たときは、上司や関係プロジェクトのリーダーが忙しい業務時間中よりも、休憩時間や業務終了後などに報告をすることで、ゆっくりと話を聞いてもらうことができるかもしれません。また、ミスをしてしまった場合は、即座に報告を入れることで、関係者が素早い対応を取ることができますので、被害を必要最小限に抑えることが可能になります。
また、もうひとつ「報告」で大切なこととしては、「相手を不安にさせないこと」が挙げられます。多くの場合、「報告」がないことで、上司やプロジェクトのリーダーは、プロジェクトや業務の進捗に不安を感じます。そして、殆どの場合、上司や関係プロジェクトのリーダーは多岐にわたるミッションを抱えていることも多く、ひとつの不安要素が生まれることで、他の業務にも支障をきたしてしまうかもしれません。適切なタイミングで行われる「報告」は、上司や関係プロジェクトのリーダーに安心感を与え、同時に報告をしたメンバーへの信頼感を生むのです。「報告」は、丁寧に積み重ねることで、上司や周囲からの自分への評価が変わるきっかけともいえるのではないでしょうか。
なお、報告の手段には、大きく分けて「口頭」「記述」があります。一般的には、急ぎの場合は口頭ベース、図やグラフにした方が分かりやすい場合は、メールや書類などを使っての記述報告となるケースが多いようです。いずれにしても、結論を先に述べ、事の経緯や状況、原因などを挟むといった流れとし、言葉や文章が長くなりすぎないよう、簡潔明瞭に伝えることが大切なのかもしれません。
報告で最も大切なのは、自分がどれだけ頑張ったかではなく、「受け取る相手がどんなタイミングでどんな情報を欲しているか」を理解することです。上司が、「概要だけでも良いので、とにかく早く報告が欲しい。」と思っているときに、部下が数時間かけて、丁寧で詳細な報告書を頑張って作ったとすると、結果として感謝されず、下手をすると無駄になってしまうことすらあるかもしれません。事前に確認するなどして、報告の受け手が最も欲しい報告を届けられるように工夫してみましょう。
4. 報連相の「連絡」で気を付けること
スムーズに「連絡」を行うためには、「正確な事実を伝えるために、自分自身の憶測や意見はできるだけ入れないようにしておくこと」が大切なポイントです。このため、「連絡」を、あらかじめ用意された所定の文言や書式を使って行うような工夫も多くみられます。
また、「連絡」の方法としては、緊急度や重要度、内容などによって様々な手段が用いられます。例えば、相手が特定の人物で、内容も一言二言で済むものであれば、口頭や電話などで手短に素早くすませるのがよいでしょう。また、不特定多数の人に手早く知らせたい場合は、人が集まりやすい朝礼や昼礼、全体報告会などの定期的な場を利用するか、掲示板や社内放送、社内報などの伝達ツールの活用がおすすめです。
なお、複数名への「連絡」において、伝えたいことを正確に知らせたい場合は、口頭よりも、文書による連絡が効果的でしょう。ただし、グラフや図などで定量的に物事を語る必要がある場合は、各自の解釈に差が生まれないように、表現を工夫する必要があるかもしれません。
「連絡」は、関係者全員の意思疎通を図る上でも非常に重要な要素のひとつであり、状況に応じて、伝達手段を使い分けることが成功させるポイントといえそうです。
5. 報連相の「相談」はどうすれば成功する?
「相談」では、できるだけ有効なアドバイスを受け取るためにも、相談相手への「伝え方」と「伝える情報」に最善の注意を払うことがポイントといえそうです。
例えば、相談相手に「自分が持っているプロジェクトがうまくいかずに困っています」といった、漫然とした情報しか伝えていなかった場合を考えてみましょう。相談相手にしてみれば、ぼんやりとしか状況を想像できませんから、提示できるアドバイスとしては、広く一般的に認知されている解決方法だとか無難な精神論といった、そのアドバイスが適切かどうかの判断がつかないものになってしまう可能性が否定できません。
また、相談相手が非常に親切な人であった場合は、できるだけ有効なアドバイスをしようとして、相談者からこと細かに情報を聞き出そうとするかもしれません。そうすると、ほんの少しの「相談」のつもりが、お互い、かなりの時間を使ってしまうことになります。
このことから、「相談」において、論理的で的確な良いアドバイスをもらうためには、
・相談したい案件の現状はどの立ち位置にあり、目指したいゴールは何か。
・目指すべき方向に向かっていない理由は何か。
といった点を、あらかじめまとめておき、相談相手が、「取り組んだ内容のどこに問題があり、どのように改善していけば目指すべきゴールに近づけるのか。」といったことを、考えやすいようにすることが、コツといえるかもしれません。
6. 報連相ができない部下がいたときのマネジメント方法
報連相のやり方を、頭では理解したつもりでも、いざ実行に移そうとすると、なかなかうまくできない人もでてきます。
報連相をうまくできない部下の代表的な例としては、次のようなものが挙げられます。
・自己判断で動くことが多く、それをわざわざ言う必要がないと思っている。
・人にあれこれ指示されるよりも、自分のやり方を通したいという自己顕示欲が勝る。
・自分に都合の悪いことを言いたくない心理が働き、悪いニュースの報告はいつも後回しにしてしまう。
大きなプロジェクトはともかく、日常の細々とした業務の中には、報連相が必要なのかどうかの線引きが非常に難しいものもあります。このため、どの業務に対して報連相が必要とされるのかといった点については、上司やクライアントなどの考え方によるところが非常に大きく、一概にこれといったルールはありません。
そこで、報連相を部下にきちんと行ってもらう対策のひとつとして、よく用いられるのが、報連相の基本的なルールを「上司と部下の間であらかじめ決めておく」マネジメント方法です。
例えば、担当するプロジェクトの進捗頻度と報告形態、報告時間を決めておくと、突発的に報告できないケースを除き、「報告」や「連絡」を日常業務の流れに組み込むことができます。また、些細な事であっても、「プロジェクトを遂行していく上で不安要素が生じた場合は、上司に相談する。」というルールを明確化しておけば、業務の一環として「相談」をする機会が生まれてきます。
感覚的、もしくは暗黙知で仕事をしていると、どうしても滞りがちな報連相ですが、これをできるだけルール化しておくことで、自然と報連相ができるようになっていくことが期待できるのではないでしょうか。
7. 報連相の重要性と組織に与える影響
チーム単位でビジネスを行う場合、報連相による意思疎通の活性化は組織力を高めるための大事な要素です。
では、その報連相が成立していないとどうなるのでしょう。
【チーム力の低下】
プロジェクトには、多くの場合、多数の人間が関係しています。すべての人が、同じ方向に向かって業務を遂行するためには、報連相による意思疎通が非常に大切です。
もし、チームの誰かが報連相を怠れば、確認や調整に時間を費やすことになり、お互いの信頼関係に影響を与えるなど、不要なトラブルを招く原因にもなり、最終的にはチーム力の低下につながってしまう恐れがあります。
【トラブルへの対処が遅れる】
プロジェクトには骨子となる計画があり、多くの決められた計画内容に沿って仕事を進めていくことを前提に構成されています。このため、何らかのトラブルが起きて計画通りに業務が進んでいかないことが判明した時点で、即座に対応をとる必要があります。
しかし、報連相が滞っていた場合、不測の事態が起きたことへの認知が遅れてしまいます。時間がたって事態が悪化すると、当然解決にも時間がかかりますから、プロジェクト全体の見直しを要求されることにもなりかねません。
適切に報連相を行うことで、チーム内の信頼感は保たれ、トラブル発生に伴う迅速な対応が可能となります。
なお、正しい報連相の基準は、所属する企業やプロジェクトによって様々です。まずは進められている業務の目的が何かをきちんと理解することが、「今、求められている報連相」を行うための第一歩といえるかもしれません。
おわりに
報連相を正しくできるかどうかは、社会人としての必須スキルといっても過言ではありません。報連相の勘所を押さえて、なぜ必要なのかのポイントをしっかりと理解し、実行に移すことが重要です。個人のスキルだけでなく、チーム力全体を高めていくために、報連相が正しくできているかどうかを、定期的に見直すことが大切です。
LIMO編集部