2024年6月14日支給分から、公的年金額が原則2.7%引き上げとなりました。

悪くなるばかりと思っていた公的年金受給額が引き上げられることってあるの?と疑問に感じた方もいるでしょう。

ただし、公的年金は額面通りの金額が受け取れるわけではありません。

今回は公的年金額の仕組みと、天引きされる内容について解説します。

1. 2024年6月支給分より「厚生年金と国民年金」が原則2.7%引き上げ

公的年金額は、毎年物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて毎年4月に改定が行われ、4、5月分がまとめて支給される6月支給分から適用される仕組みです。

2024年6月14日支給分からの年金額の一例を見てみましょう。

【写真1枚目】2024年度の年金額はいくら?

2024年度の年金額

出所:日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等についてをもとに筆者作成

1.1 公的年金は物価上昇も反映されるはずですが…

公的年金は前年の物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合、後者を用いて改定すると法律で決まっています。

物価上昇で私たちの生活は少々厳しくなっていますが、公的年金は物価状況に応じて柔軟に見直される仕組みになっているのです。

具体的には、令和6年度の名目手取り賃金変動率は以下のように計算します。

▲0.1%(令和2~4年度の実質賃金変動率)+3.2%(令和5年の物価変動率)+0.0%(令和3年度の可処分所得割合変化率)=3.1%

そうなると前年の物価変動率3.2%>名目手取り賃金変動率3.1%なので、令和6年度の公的年金の引上率は本来3.1%となります。

ではなぜ令和6年度の公的年金の引上率が2.7%なのでしょうか?これはマクロ経済スライドという調整が働いているためです。

1.2 マクロ経済スライドとは

マクロ経済スライドとは、簡単に言うと物価や賃金の上昇よりも、年金の増加率を抑える仕組みのことです。

日本の公的年金は財政が必ずしも盤石ではありません。そのため公的年金が保険料収入でやりくりできる水準になるまでは、賃金や物価の伸びより低い増加率で改定する仕組みになっているのです。

令和6年度のマクロ経済スライドによる調整は▲0.4%です。そのため名目手取り賃金上昇率3.1%から0.4%を引いた2.7%が最終的な引上率となります。

このように現状の公的年金制度は、物価上昇も考慮して見直されますが、物価上昇率と同水準で増えるわけではないという点に注意が必要です。