2. 在職老齢年金の支給停止基準額が50万円に引き上げ
60歳以降も働きながら(厚生年金に加入しながら)受け取る厚生年金のことを「在職老齢年金」といい、賃金や年金額の合計額によって年金の一部や全額が支給停止になります。
2024年3月までの支給停止基準額は、賃金と年金額の合計が48万円を超えた場合でしたが、4月から50万円に引き上げられました。
2.1 「賃金」と「年金額」とは
ここで、「賃金」と「年金額」の定義について確認しておきましょう。
「賃金」とは、正確には「総報酬月額相当額」といい、その月の標準報酬月額とその月以前1年間に受け取った賞与を12で割った合計金額のことをいいます。式で表すと以下のようになります。
[その月の標準報酬月額]+[その月以前1年間の標準賞与額の合計]÷12ヵ月(※)
※70歳以上の方の場合は、上記の「標準報酬月額」は「標準報酬月額に相当する額」に、「標準賞与額」は「標準賞与額に相当する額」となる
また、「年金額」とは、正確には「基本月額」といい、加給年金額を除いた厚生年金(報酬比例部分)の月額のことをいいます。
1ヵ月に受け取る総報酬月額相当額(賃金)と基本月額(厚生年金)の合計額が50万円を超えた場合に、年金の一部または全部の支給停止が行われます。
2.2 在職老齢年金の計算方法
在職老齢年金の計算方法について、日本年金機構のフローチャートを元に解説していきます。
1ヵ月の総報酬月額相当額と基本月額の合計額が50万円以下であれば、厚生年金は全額支給されます。しかし、50万円を超える場合は、支給停止の対象となり厚生年金が減額されることになるのです。
減額後の厚生年金受給額は、以下の計算式で求めます。
支給停止後の厚生年金受給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
例えば、基本月額が25万円、総報酬月額相当額が35万円だった場合、支給停止後の厚生年金受給額は20万円になります。
計算)
支給停止後の厚生年金受給額=25万円-(25万円+35万円-50万円)÷2=20万円
在職老齢年金について、より具体的にイメージできるよう次章でシミュレーションしてみましょう。