「もう余計な規則はいらない。10年前からある規則は、半分に減らせ。責任は俺がとるから」。

 もちろん、実際は単純に半分にできたわけではありませんが、彼はそのくらいの気概を持って「ムダな規則を削れ!」と号令したのです。

「そんな大胆なことをして大丈夫なのか」と心配になるかもしれませんが、本当に必要だったルールは自然に復活させられることになりますから、「ムダなものは消え、本当に必要なものは残る」という理想的な状態に近づくことができました。そうして、いわゆる「慣習化されたお役所仕事」が排除され、会社の生産性は格段に上がり、社員のストレスも確実に軽減されたのです。

まずは身近なところからでも手をつける

 社員に必要以上の時間や労力をかけさせるような古いルールは、思い切って半分にしてみるように働きかけてみてはいかがでしょうか。もし減らしたことで不都合になるようなルールがあったなら、より適切な形で復活させればよいのです。

 もちろん「この規則は上の方針だから変えられない」といった場合も多いでしょう。そういうときは、自分のチームや身近な範囲内だけでも何かムダなルールがないか探し、半分に減らしてみてください。そうして成果が出れば、上層部にも提案しやすくなるでしょうし、自分が普段身を置いている範囲だけでもよい変化があることで、たいていの人は過ごしやすくなります。

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「とにかくLINEしてきて」でもいい

 ちなみに、私は学生や仕事で関わる人にも自分のLINEやFacebookなどのSNSアカウントを教え、ちょっとした報連相などの単純なやりとりはSNSで済ませることがよくあります。若い人ほど、対面での会話や電話・メールでのコミュニケーションより、そのようなSNSのほうが馴染み深いもの。「ちゃんとした報告じゃなくてもいいから、とにかくLINEしてきて」と言っておくと、素早い連絡を受けやすくなります。

 厳格な様式やルール・マナーを尊守することも必要ですが、場合によっては気楽でスピーディーな手段を活用できる柔軟性も持っていたいものです。

 

■ 渡部卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、講演・企業研修・コンサルティング・教育・メディア等における多数の実績を持つ。『明日に疲れを持ち越さない プロフェッショナルの仕事術』ほか著書多数。

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渡部 卓