停滞感が強い外食産業市場で好調な「うどん・そば」

日本フードサービス協会が発表した「平成28年外食産業市場規模推計について」によれば、同年の市場規模は対前年比+0.1%増の25兆4,169億円になったと見られ、これで5年連続での前年超えとなりました。

これだけを見ると、外食産業が成長しているかのような印象がありますが、ピーク時である平成9年の約29兆円に対して、依然として▲12%以上落ち込んだままという現実があります。

ボトムは脱したものの依然として停滞感が強い外食産業市場ですが、好調な部類も散見されます。その1つが「そば・うどん店」です。平成28年は前年比+0.2%と5年ぶりの低い伸びとなりましたが、この5年間の年間平均成長率は+3.1%増となり、「すし店」の+3.2%と並んで高い伸びを示しています。

なお、「そば・うどん店」には“立ち食いそば・うどん店を含む”という注釈が付いていまが、駅の立ち食いそば屋さんが増加している印象は乏しく、実態としては、そば・うどんの専門店、およびファストフード(主にセルフ系)の店が増えていると考えられます。

讃岐うどんのチェーン店拡大が牽引役か

この伸びを牽引しているのが、うどん店の増加、とりわけ、セルフ系の讃岐うどんチェーン店の増加ではないでしょうか。

改めて言うまでもなく、うどんは広く全国で食されています。「うまい、早い、安い」の3拍子揃った料理の代表格と言えましょう。ただ、“うどん”と言ってもその種類は多く、秋田の「稲庭うどん」や、名古屋の代名詞とも言える「きしめん」など様々です。しかし、全国的な人気と言えば、やはり「讃岐うどん」でしょう。

讃岐うどんは香川県の特産物であり、その歴史は江戸時代から始まったと言われています。その後、昭和の高度経済成長期以降に、讃岐うどんは何回かブームを迎えましたが、香川県の地方名産料理の1つという認識から抜け出せなかったように思われます。

しかし、2000年代前半から「丸亀製麺」や「はなまるうどん」などセルフ系のチェーン店が全国展開するようになり、従来にも増して脚光を浴び、今日に至っています。

讃岐うどんの特徴は“コシ”の強さ

讃岐うどんの特徴は、一言で言うならば“コシ”の強さです。ただし、“コシが強い”というのは、“麺(うどん)が固い”という意味ではありません。これは讃岐地方に伝わる製麺手法から生まれるものでしょう。

この“コシ”の強さを実感してもらうためには、兎にも角にも、一度食するに限ります。また、この“コシ”の強さは、店によって微妙に(あるいは大きく)異なることも特徴と言えましょう。

高松市や丸亀市を始めとする香川県には数多くの讃岐うどん店があり、観光でも“讃岐うどん巡り”を前面に出したパックツアー商品もあります。また、最近では外国人観光客にも人気が高まってきました。

讃岐うどんの対抗勢力として存在感を増す博多うどん

さて、その讃岐うどんに対抗する勢力として、このところ注目を集めているのが「博多うどん」です。

これはその名の通り、福岡県を始めとした九州で食されているうどんです。九州に行くと、多くの地域で「讃岐うどん」よりも「博多うどん」の方が圧倒的に認知されていることが分かります。また、「ウエスト」など九州を中心に博多うどんのチェーン店を展開する店も少なくありません。

しかし残念なことに、東京を含む東日本では博多うどんの店が非常に少ないのが実情です。また、「ウエスト」も関東でチェーン店展開を行っていますが、千葉県など小規模に止まっており、東京23区内には店舗がありません。

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