5年に1度の「年金の財政検証」が今年2024年に行われます。

公的年金制度を維持させるための議論ですが、「被用者保険の更なる適用拡大」「基礎年金の拠出期間延長」などの案が上がっており、短期的視点で見ると国民の負担増が懸念されます。

とはいえ、老後の長い人生を考えると、「生きている限り終身でもらえる年金」という保障は心強いもの。できれば多くもらいたいと思いますよね。

実は、厚生年金(国民年金を含む)として「月額30万円以上」を受け取っている人も存在します。

ここまで受け取れれば「老後は安泰」に思えますが、実際にはどのくらいの人が厚生年金を月額30万円以上を受給しているのでしょうか。また、そのための必要な年収も気になります。

本記事では、公的年金だけで「月額30万円以上」を受け取っている人の割合について紹介していきます。

1. 公的の仕組み:国民年金とは?

初めに、公的年金の仕組みについて簡単におさらいしておきましょう。

日本の年金制度は”その時代の現役世代”が”その時代の高齢者”を支えるという賦課方式になっています。今払っている保険料は、積み立てて将来自分でもらえるわけではありません。

また、私たちが加入する年金制度は以下のような2階建て構造となっています。

【写真1枚目/全2枚】年金制度のしくみ。写真2枚目で「月額30万円」の受給者人数を見る

年金制度のしくみ

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

このうち1階部分である国民年金について整理しましょう。

「国民年金」には、原則日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。

20歳になれば自動的に加入となりますが、学生の方は学生納付特例制度を利用している方も多いですね。

さらに国民年金の被保険者は第1号被保険者~第3号被保険者にわけられます。

1.1 第1号被保険者

20歳以上の学生や自営業、無職の方などが該当します。

保険料は一律で、毎年改定されます。20歳から60歳の40年間に未納なく保険料を納めれば、基本的に国民年金を満額受け取ることが可能となります。

1.2 第2号被保険者

公務員や会社員などが該当します。パートやアルバイトなど、フルタイム以外の方も要件を満たせば第2号被保険者に該当します。

2024年10月には適用拡大が予定されているため、さらに該当者が増える見込みです。

保険料は後述する厚生年金保険に含まれるため、国民年金単体で納める必要はありません。

1.3 第3号被保険者

第2号被保険者に扶養される配偶者が該当します。

第3号被保険者の場合、保険料の納付は必要ありません。

2. 公的の仕組み:厚生年金とは?

2階部分に位置する「厚生年金」は、第2号被保険者である会社員や公務員などが、国民年金に上乗せして加入するものです。

保険料は報酬比例制なので、給料が高い人ほど天引きされる厚生年金保険料も高くなるでしょう。

将来は、老齢厚生年金が受給できます。厚生年金保険の加入期間や時期、年収に応じて個人差があることを押さえておきましょう。

本題となる「公的年金だけで月額30万円以上」ですが、ここまでの内容を踏まえると、第1号被保険者や第3号被保険者であった期間が長い人は不可能であるといえます。

さらに、厚生年金の加入期間が長いからといって、容易に達成できる水準でもないのです。次章にて検証していきましょう。