2024年度は近年の物価高や賃金上昇の影響を受け、公的年金の支給額が2.7%増額改定されます。

その改定が支給額に反映されるのは、次回の年金支給日である2024年6月14日(金)。見通しづらい将来のためにも、少しでも多く年金をもらえるのは嬉しいことです。

これから年金を受給する現役世代のなかには、年金の現状を把握できていない人がいるかもしれません。

平均受給額がいくらなのか、そこからどういったものが天引きされるか……少しでも理解しておくことで老後の年金事情を予測する一つの手立てとなるでしょう。

今回は、年金カレンダーで2024年の支給日を確認したあと、年金から天引きされる税金や保険料の内訳、天引きの条件、そして「普通徴収」へ切り替わる理由などを解説します。

記事の後半では、厚生年金・国民年金のモデル年金額をチェック!

1. 2024年版「年金支給日カレンダー」で支給日を確認:次回は6月14日

公的年金は2ヶ月に1度、偶数月15日(土日祝の場合は直前の平日)のタイミングで2ヶ月分、一気に振り込まれます。

【写真全3枚中1枚目】2024年「年金カレンダー」支給日一覧。2枚目以降では、厚生年金・国民年金の受給額や受給権者数を紹介。1/3

【年金カレンダー】2024年「年金支給日」一覧

出所:日本年金機構「Q年金はいつ支払われますか。」をもとにLIMO編集部作成

1.1 【2024年】公的年金の支給日:支給対象月

  • 2024年2月15日(木):2023年12月分・2024年1月分
  • 2024年4月15日(月):2024年2月分・2024年3月分
  • 2024年6月14日(金):2024年4月分・2024年5月分
  • 2024年8月15日(木):2024年6月分・2024年7月分
  • 2024年10月15日(火):2024年8月分・2024年9月分
  • 2024年12月13日(金):2024年10月分・2024年11月分

年金は1ヶ月ごとの支給ではありません。次回の支給日まで、しっかりとやりくりする必要があるといえるでしょう。

2. 年金から天引きされる「税金」と「保険料」4種類

支給日を確認したところで、公的年金から「天引き」されるお金について詳しくみていきましょう。

原則、年金は下記のお金が天引きされた状態で支給されます。

  • 所得税および復興特別所得税
  • 個人住民税
  • 介護保険料
  • 健康保険料・後期高齢者医療保険料

次の章から、順に詳しくみていきましょう。

3. 「国民年金・厚生年金」から天引きされる4つのお金の仕組み

公的年金「国民年金・厚生年金」から天引きされる、税金や社会保険料を詳しくみていきましょう。

それぞれ、課税・支払い対象となる金額目安にも注目してみてください。

3.1 所得税および復興特別所得税

実は「雑所得」扱いである公的年金。

一定額以上の年金を受給しているケースでは、給与などと同様に所得税が課税されます。

「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、復興特別所得税もかかります。

ただし、収入が公的年金のみの場合、以下のケースでは所得税が非課税となります。

  • 65歳未満:108万円以下
  • 65歳以上:158万円以下

さらに、障害年金や遺族年金を受給する場合も非課税の対象です。

3.2 個人住民税

住民税は、前年中の「所得」に対してかかる税金。

先程の所得税と同様に、一定額以上の年金を受給している場合に課税されます。

一方、年金収入が一定額以下の場合には住民税が非課税となる「住民税非課税世帯」と分類されます。なお、所得税と同じく障害年金や遺族年金を受給する場合も住民税が非課税となります。

住民税非課税世帯の要件は、各自治体によって異なるため注意が必要です。

お住まいの自治体ホームページや窓口にて確認してみてください。

3.3 介護保険料

介護保険料は、40歳から64歳までは健康保険料に含まれて支払われます。

65歳以降、切り離されて単独で支払うかたちとなるのです。

そして、年間の年金支給額が「18万円以上」のケースで天引きされます。

なお、介護保険料は「介護認定」をされた場合も支払いの義務が発生しつづけるため覚えておくとよいでしょう。

3.4 国民健康保険料・後期高齢者医療制度の保険料

国民健康保険は75歳未満の人が加入する「公的医療保険」。75歳以上は「後期高齢者医療保険」という健康保険に切り替わります。

これらも介護保険料と同様に、年間の年金支給額が「18万円以上」の場合に年金から天引きされます。

国民健康保険と後期高齢者医療保険はどちらかの保険への加入となり、同時加入はされません。

ちなみに、支給予定の年金額が記された「ねんきん定期便」には、税引前の金額が記載されています。

この金額を額面通りに捉えると、いざ支給されたときに少々混乱してしまうので頭の片隅においておきましょう。

年金からの天引き制度は、受給側であるシニア世帯は税金や社会保険料を支払いに出向かずに納税や支払いが完了し、支給側である自治体や国は税収を確実に確保できるため採用されているのだとか。

たしかに、ただでさえ外出が難しくなりがちな老後生活において支払い漏れがなくなるのは安心できます。

支給される年金から税金や保険料が天引きされますが、なかには天引きされないケースもあります。

次の章から、対象となる要件などを詳しくチェックしていきましょう。

4. 【解説】公的年金から税金や保険料が「天引き」されない条件とは?

それでは、年金から税金等が天引きされないケースを確認していきましょう。

4.1 公的年金から「所得税」が天引きされないケース

収入が公的年金のみのケースでは、年収が規定以下の場合には天引きされません。

65歳未満は受給額「108万円以下」、65歳以上は受給額「158万円以下」の場合、年金受給額から「基礎控除」と「公的年金控除」を引くと課税対象が0円になるため、所得税そのものが課税対象ではなくなります。

したがって、このケースでは年金から所得税が天引きされることはありません。

ちなみに、自営業者など2023年度時点で国民年金だけ受給している人は満額受給でも「年額79万5000円」。所得税は課税されていません。

4.2 公的年金から「住民税」が天引きされないケース

住民税も同様に、そもそも課税されない場合は、年金から天引きされません。

課税される方で年金から住民税が天引きされる条件は下記のとおりです。

  • その年の4月1日の時点で65歳以上
  • 年金額が18万円以上

また、次の条件に該当した場合、年金からの「天引き」は停止となります。

  • その年の1月2日以降に他の市町村へ引っ越した場合
  • 年度の途中で介護保険料に変更があった場合
  • その年の4月1日の時点で年金の支給がなかった場合
  • 「特別徴収」の金額が年金支給額を超える場合

住民税の場合、引っ越しや突発的な出来事などイレギュラーに天引きが止まってしまうケースがあります。

とくに転居に関しては決してないと言い切れず、多くの方に想定されるはず。住所が変わるときには、介護保険の支払い方法が一旦「普通徴収」に戻ることを認識しておきましょう。

4.3 公的年金から「介護保険料」が天引きされないケース

40歳から64歳までは加入している健康保険料と合わせて納付または給与からの天引きされていた介護保険料は、65歳から切り離されて住んでいる自治体へ納付する形となります。

65歳以上が支払う介護保険料は本人の所得をもとに算出され、例年6月頃に自治体から通知されます。

年間の年金受給額が「18万円以上」であれば年金天引きによる特別徴収、「18万円以下」の場合や繰下げ待機中の場合には普通徴収での支払いとなります。

4.4 公的年金から「健康保険料」が天引きされないケース

65歳以上75歳未満の人は「国民健康保険料」、75歳以上の人は「後期高齢者医療保険料」が年金から天引きされます。

いずれも天引きの対象となるケースは、老齢、退職、障害または死亡を理由として受給している年金で、年間の受給額が「18万円以上」の人です。

年間の年金受給額が「18万円未満」の人や、国民健康保険料または後期高齢者医療保険と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる「特別徴収対象年金額の2分の1」を超える場合、普通徴収の対象。年金からの天引きはありません。

次の章では、突然年金からの天引きがなくなるケースについて確認しておきましょう。

5. 急に年金天引きがなくなるケースも…徴収方法の切り替えをチェックして

介護保険料や健康保険料、所得税などが年金から天引きされるお金のポイントは、徴収方法。

たしかに年金は一度納付方法が決まったら、途中で変わるケースは少ないとされています。

ただし、年金支給や引っ越しなどのタイミングで「特別徴収」から「普通徴収」に切り替わる可能性もあるので注意が必要です。

納付を忘れてそのままに放置してしまうと、延滞金が発生することもあります。

急に天引きされなくなったことに気づいたら、関連する各自治体へ確認してみましょう。

6. 【2024度】2.7%増額へ、厚生年金・国民年金のモデル年金額

毎年改定される年金。厚生労働省より公表された、2024年度の年金額モデル例を確認してみましょう。

6.1 2024年度の年金額の例(国民年金と厚生年金)月額

  • 国民年金(満額):6万8000円(+1750円)
  • 厚生年金※:23万483円(+6001円)

※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合の「老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)」。

上記の厚生年金は夫婦分のモデル例。1人分に換算すると16万2483円です。

定年を迎えて「年金生活」に入り、貯蓄の取り崩しに入る世帯も増えてくることでしょう。流動的な年金に頼りすぎない、老後生活の資金計画を立てたいものですね。

7. 年金から「天引き」されるお金を理解しよう

年金から天引きされる税金は、所得税・住民税・介護保険料・健康保険料の4つでした。

それぞれ、天引きされる金額や要件は見落としがちなので注意しておきましょう。

自分の納付方法をよく確認し、納付忘れがないよう気をつけたいもの。

年金受給者の多くは天引きの対象となるケースにあてはまりますが、一概に信じ切るのは避けたほうがよいでしょう。

7.1 【参考】厚生年金・国民年金の平均月額はいくら?

公的年金である「厚生年金」と「国民年金」では、受け取れる年金額が大きく異なります。

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」で、厚生年金と国民年金それぞれの全体、男女別の平均月額をチェックしましょう。

【厚生年金】男女別・年金月額階級別受給権者数

【写真全3枚中2枚目】厚生年金:男女別・年金月額階級別受給権者数2/3

【厚生年金】男女別・年金月額別受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 男女全体平均月額:14万3973円
  • 男性平均月額:16万3875円
  • 女性平均月額:10万4878円

【国民年金】男女別・年金月額階級別受給権者数

【写真全3枚中3枚目】国民年金:男女別・年金月額階級別受給権者数3/3

【国民年金】男女別・年金月額階級別受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 男女全体平均月額:5万6316円
  • 男性平均月額:5万8798円
  • 女性平均月額:5万4426円

参考資料

荒井 麻友子