2. 厚生年金・国民年金は2.7%増額

厚生労働省は2024年1月29日に、2024年度(令和6年度)の公的年金額を2023年度(令和5年度)よりも2.7%引き上げることを公表しました。これにより、2024年度の厚生年金・国民年金額は以下の通り増額されます。

【写真2枚】2024年度 厚生年金・国民年金の年金額の例、2枚目/年金額決定のフロー

2024年度の厚生年金・国民年金の年金額の例

出所:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方は、月額6万7808円(前年度比+1,758円)
※2 平均的な収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間就業した場合に受給できる年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

自営業や個人事業主の方などが受給する国民年金は、満額で月額6万8000円となり、2023年度と比較して1750円の増額です。この金額は保険料を40年間(480月)納めた場合のもので、未納月がある場合は月数に応じて減額されます。

一方、厚生年金は平均的な収入で40年間就業した場合の、夫婦2人分の標準的な受給額となっており、2人分の国民年金と夫(妻)の厚生年金の合計額です。2024年度は23万483円で2023年度よりも6001円増額されています。

年額に換算すると、国民年金は2万1000円の増額、厚生年金は約7万2000円の増額になるため、物価上昇に対応できるのではないかと思われます。しかし、「マクロ経済スライド」が発動されたため、実質的には目減りしている状況です。

2.1 マクロ経済スライド発動で実質的に目減り

マクロ経済スライドとは、現役世代の保険料納付負担を極端に増大させないために、賃金や物価による改定率を調整することで、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。

具体的には、現役の被保険者の減少率と平均余命の伸び率(0.3%程度)を合計した「スライド調整率」を、賃金や物価の改定率から差し引いて年金額を改定します。

2024年度「年金額改定率」決定フロー

2024年度「年金額改定率」決定フロー

出所:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」

2024年の物価変動率は3.2%、名目手取り賃金変動率は3.1%で、マクロ経済スライドによるスライド調整率は▲0.4%です。より数値の小さい名目手取り賃金変動率3.1%からスライド調整率の0.4%を差し引いて、年金額は2.7%の増額と算出されました。

物価上昇率が3.2%なのに対し、年金額の増額率が2.7%なので、増額されても値上げ率に追い付けず、引き続き値上げラッシュの影響を受けることになります。

3. 早めに老後資金の準備をすることが大切

現役世代の方も、年金受給者と同様に値上げの影響を受けて、家計が苦しいという世帯も多いでしょう。収入から貯蓄に回す余裕がないかもしれません。

しかし、老後に公的年金のみの収入になってしまうと、今回のように値上げラッシュが続いた場合などに、生活費が足りなくなる可能性があります。そのため、早いうちから少しずつ老後資金の準備にとりかかることが大切です。

老後資金の準備方法にはいくつかありますが、中でもおすすめの方法をご紹介します。

  • 先取り貯蓄をする
  • 生命保険会社の個人年金保険に加入する
  • NISAやiDeCoを利用する

貯蓄が苦手な方は、銀行の積立預金を利用して先取り貯蓄をするのがおすすめです。毎月決められた日に一定金額が自動引き落としされるので、半強制的に貯蓄できます。

また、生命保険会社で取り扱っている個人年金保険に加入する方法もあります。一般的な商品では高い利回りが期待できないこともありますが、変額タイプなら運用実績次第で将来の年金額を増やすことが可能です。ただし、運用成績によっては元本割れのリスクがある点に注意が必要です。

ほかにも、NISAやiDeCoを利用して資産形成する方法もあります。預貯金と比較して高い利回りが期待できますが、運用次第では元本割れリスクもあるので、リスクについてしっかり理解することが大切です。

4. まとめにかえて

2024年度の年金額は2.7%の増額となっていますが、依然として物価上昇が続いており、実質的に目減りしている状況です。今後も物価高が家計に与える影響が大きいと考えられるでしょう。

現役世代の方の生活も物価高の影響で苦しいことが予想されますが、少しづつでも良いので早めに老後資金の準備を始めることをおすすめします。

参考資料

木内 菜穂子