2. 遺族厚生年金はいくらもらえる?
遺族厚生年金で受給できる金額は、死亡した方が受給していた厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。
報酬比例部分とは、老齢厚生年金や遺族厚生年金などの年金額の計算のベースとなるもので、厚生年金への加入期間や過去の報酬等により決まります。
具体的には以下の計算式で求めます。
【報酬比例部分=A+B】
A.2003年(平成15年)3月までの加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間月数
B.2003年(平成15年)4月以降の加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
なお、65歳以上の方が遺族厚生年金を受け取るときは、以下の2つを比較し、高い方が支給されます。
- 死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
- [死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1]+[自身の老齢厚生年金の額の2分の1]
3. 68歳の妻が受給できる遺族厚生年金をシミュレーション
タイトルにもあるように、68歳の妻が夫に先立たれた場合、遺族厚生年金をいくらもらえるのかシミュレーションしていきましょう。
妻が国民年金のみを受給している場合と、厚生年金も受給している場合の2つに分けて見ていきます。なお、夫の年金額は年額192万円で、内訳は以下の通りとします。
【夫の年金受給額(192万円)】
- 国民年金:72万円/年
- 厚生年金:120万円/年
3.1 妻が国民年金のみを受給している場合
妻が専業主婦などで国民年金のみを受給している場合、受給できる金額は「ご自身の国民年金」と「夫の厚生年金の4分の3の金額」の合計です。
妻の国民年金は72万円とします。
夫の厚生年金は120万円なので、4分の3にすると90万円です。
したがって、ご自身の国民年金「72万円」と遺族厚生年金「90万円」を合わせて162万円が受給額となります。月額にすると13万5000円です。
3.2 妻も厚生年金を受給している場合
妻も会社員や公務員などで働いたことがあり、厚生年金も受給している場合を見ていきます。仮に妻の厚生年金が120万円で、以下のような内訳で受給していたとします。
【妻の年金受給額(120万円)】
- 国民年金:72万円/年
- 厚生年金:48万円/年
妻も厚生年金を受給している場合は、以下の2つのうち高額な方が支給額になります。
- 死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
夫の厚生年金120万円×3/4=90万円
- [死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1]+[自身の老齢厚生年金の額の2分の1]
夫の厚生年金120万円×1/2+自身の厚生年金48万円×1/2=84万円
90万円>84万円なので、妻は90万円の遺族厚生年金を受給できることになります。ご自身の国民年金「72万円」と合わせて162万円が受給額となります。
なお、この場合、ご自身で厚生年金を48万円を受給しているため、遺族厚生年金はその分支給停止となり、差額の42万円が支給されます。
4. まとめにかえて
遺族厚生年金を受給するには、一定の要件を満たしている必要があります。受給額は、配偶者が受給していた厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額です。
ご自身も厚生年金を受給している場合は遺族厚生年金との調整が行われ、ご自身の厚生年金が優先されて、差額分が遺族厚生年金として支給されます。
遺族厚生年金の計算は複雑なため、正確な金額を知りたい場合は年金事務所や街の年金相談センターで相談してみましょう。
参考資料
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金の併給または選択」
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和6年度版」
木内 菜穂子