異動や転職のシーズンを迎え、先月あたりからこうしたお知らせを受け取っている方も多いと思います。こうした「転機」は、自分自身のキャリアの中でも何度か遭遇すると思います。異動はなくても「担当の顧客や業界の変更」もあるでしょう。

 自身も豊富な転職経験を持つ経営アドバイザーの村井庸介さんが、著書『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』の中でも語っている、転職してもうまくいく人の思考、仕事環境が変化してもチャンスをうまくつかみ取る方法を解説します。

いつまでも「よそ者」の人

 異動や転職といったご自身の「転機」で、過去のやり方が通用しないという経験をした方は、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

 たとえば、転職でありがちな失敗は、過去に在籍した会社のやり方を押し付けてしまい、「よそ者」というレッテルが確定してしまうことです。転職当初は誰もが「よそ者」ですが、入社後半年たっても「よそ者」のままだと、その人にチャンスが回ってくる機会は非常に少なくなってしまうはずです。

 私自身は上場企業を中心に数社の転職をしてきた中で、成功も失敗も経験し、さらには他社から転職してきた社員、他社へ転職していく同僚も数多く見てきましたが、「過去の経験の押し付け」は、チャンスから遠のく要因にしかならないと考えています。

仕事の本質は「提案」である

 多くの場合、仕事は「提案」から始まり、その質が仕事全体を左右します。そういう意味では、提案とは「仕事の本質」と言っても過言ではありませんが、せっかくの提案も、ただの押し付けと受け取られてしまっては、意味がないどころか、かえって逆効果になってしまいます。

 では、「よそ者」が提案を受け入れてもらうには何をすればよいのでしょうか? ここで大事なのは「信頼の残高」という考え方です。

いきなり提案しても失敗するだけ

 拙著でも詳細を述べていますが、私が株式会社メガネスーパー(以下、メガネスーパー)に転職した当時、同社は8期連続の赤字で「このままでは上場廃止か」という瀬戸際から経営再建に向かっているところでした。そこで某カード会社のA社に提携を受け入れていただき、新規顧客の「入口」を拡大した結果、数店舗分に匹敵する粗利獲得に貢献することができました。

 これは、入社当初から温めていたアイデアだったのですが、転職後すぐに提案したわけではありませんでした。というのも、入社直後というのは、まだ「あいつ、誰?」と思われている状態だからです。

 十分な信頼関係ができていないのに、そこでいきなり「こうすれば問題を解決できます!」と声高に主張しても、「ただの生意気なやつ」だと思われておしまいです。ここではまず「こいつの言うことなら、ちょっと聞いてみてもいいかもしれない」という「信頼の残高」を貯めていくことが必要なのです。

 では、具体的にどうすればよいのでしょうか?