2. 年金額は増えたようで増えてない!?
2024年度の年金額は2023年度から2.7%の増額となることを確認しました。
年金受給額が増えることに喜ぶ人もいるかもしれません。
ただし、年金額の増額と同時に確認したいのが物価上昇率です。物価上昇率が年金増額率を上回る場合、実質的に年金は減っていることになります。
では、物価上昇率は何%だったのでしょうか。
厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2023年の物価変動率は+3.2%です。物価上昇率が年金増額率を上回っていることがわかります。
そのため、実質的にもらえる年金の価値は減っているのが実態です。
3. 年金が決まる「マクロ経済スライド」とはなにか
では、なぜ物価上昇率よりも年金増額率は抑えられたのでしょうか。
これは、年金が決まる仕組みである「マクロ経済スライド」が影響しています。
マクロ経済スライドとは、将来の現役世代の負担が重くなり過ぎないように、「年金保険料などの収入」と「年金給付などの支出」を調整する仕組みです。
具体的には、物価や賃金が一定上昇した場合には、物価や賃金の上昇率から、現役世代の減少と平均寿命の伸びに応じて計算された「スライド調整率」を差し引いて年金増額率を決定します。
このマクロ経済スライドにより、2024年4月からの年金増額率は、2023年の物価上昇率よりも抑えられているのです。
4. 老後生活に向けて準備を始めよう
本記事で解説したとおり、ある程度の物価上昇禍では年金の実質的な受給水準は減ってしまいます。
そのため、年金だけに頼るのではなく、自分で老後対策をする必要があるでしょう。
まずは、このままの生活を続けるとどのような老後を送ることになるのかシミュレーションしてみてください。
具体的な年金額の水準や生活費がわかれば、老後に向けて自分でいくらの資産を貯めるべきかの目安がわかります。
今のままでは老後に必要な資金が足りないことがわかれば、固定費の削減などで節約をおこない、iDeCoやNISAなどを活用した資産運用で資金を増やすことを検討してみてください。
参考資料
苛原 寛