3. 厚生年金「月額30万円以上」の受給割合は?

厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の月額階級別の受給者数は下記の結果となっています。

年金を「月額30万円以上」受け取っている人は、本当に存在するのでしょうか。

結論から言うと、厚生労働省の統計資料上では「月額30万円以上」の受給者が確かにいることがわかっています。

ただし、こうした資料の厚生年金の金額には、国民年金の金額も含まれている点に注意が必要です。

統計から、厚生年金「月額30万円以上」を受け取っている人とその割合は下記のとおりです。

  • 全体:1万2490人(0.08%)
  • 男性:1万2164人(0.11%)
  • 女性:326人(0.01%)

月額30万円以上の受給者数は全体で1万2490人となっており、全体の0.1%にも満たない結果となっています。

また、全体のボリュームゾーンは「月額10万円以上〜11万円未満」であり、平均月額よりも低いのが現状です。

月額30万円の半分となる月額15万円以上の割合でも、全体で「46.1%」となっています。

国民年金よりも受給額が高いと言われている厚生年金であっても、受け取れる年金額は意外と少ないことがわかります。

4. 厚生年金「月額30万円以上」を目指すために必要な年収は?

厚生年金「月額30万円以上」の割合は全体の0.1%未満となっており、ほんのひと握りであることがわかりました。

厚生年金の受給額は、現役時代の加入期間や年収によって決定しますが、月額30万円以上を目指すための「加入期間と年収目安」はどのくらいなのでしょうか。

厚生年金の受給額は、2003年4月以降「賞与」からも年金保険料が引かれるようになったため、「2003年3月以前」と「2003年4月以降」で計算式が異なります。

  • 2003年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額×(7.125/1000)×2003年3月以前の加入月数
  • 2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額×(5.481/1000)×2003年4月以降の加入月数

今回は、2003年4月以降に加入したとして、年収目安を算出していきましょう。

試算条件は下記のようになります。

  • 国民年金受給額(満額):78万円
  • 厚生年金加入期間:40年間

平均標準報酬月額の計算方法は下記のとおりです。

厚生年金「月額30万円」を受給すると想定した場合、年間で360万円を受給することになります。

国民年金78万円を差し引くと、厚生年金から282万円受給する必要があるため、平均標準報酬月額は下記のように計算できます。

  • 平均標準報酬額×5.481/1000×480カ月(40年間)=282万円(1年間の国民年金を差し引いた厚生年金の受給額)
  • 平均標準報酬額=約107万円

平均標準報酬月額は約107万円となるため、1年間で計算すると「約1284万円」となります。

つまり、40年間の平均年収が「約1284万円以上」であれば、厚生年金として「月額30万円」を受給できます。

年収1284万円以上を40年間継続するのは、一般企業の会社員であればかなり難しい水準であることが分かります。

このことから、厚生年金月額30万円以上の割合が0.1%未満であることは頷けるでしょう。

5. 年金に頼りすぎない資金計画を

本記事では、厚生年金「月額30万円以上」を受け取っている人の割合について紹介していきました。

厚生年金として月額30万円以上を受け取っている人の割合は全体で0.1%未満となっており、2人に1人以上は月額15万円未満であることがわかりました、

厚生年金は現役時代の加入期間や年収によって、受け取れる受給額が変わり、月額30万円以上を目指すのは至難の業といえそうです。

老後の収入について不安を感じる方は、現役時代の早いうちから老後の生活費について試算し、準備をしておくことです。

将来の年金受給予定額については、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。これを機に、ご自身の老後資金について考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

中本 智恵