3. おひとりさま世帯は毎月3万円以上の赤字に
総務省の「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上のおひとりさま無職世帯の家計収支は下記のとおりです。
- 実収入(額面の金額):12万6905円
- 可処分所得(手取り収入):11万4663円
- 非消費支出(税金・社会保険料等):1万2243円
- 消費支出:14万5430円
- 不足分:3万768円
おひとりさまシニア世帯の平均的な消費支出は「約14万円」であるのに対して、平均的な手取り収入は「約11万円」となっており、毎月約3万円の赤字となっています。
仮に、年金受給を65歳からスタートさせ、90歳まで老後生活を送った場合、約900万円の不足が発生します。
また、前章でおひとりさまが不安視していた「介護や病気の際に面倒を見てくれる人がいない」ことからも、生活費だけでなく介護が必要になった際に、介護サービスを利用する費用も考えておく必要があります。
「年金で不足する分は働いてカバーする」と考えるかもしれませんが、病気やケガのリスクを考慮するといつまでも働き続けられるとは限りません。
上記を踏まえ、日々の生活費の不足分+老後のサービス費用となる、ある程度の貯蓄をしておくことが、老後の不安感を払拭させる安心材料になるでしょう。
4. シニア世代の平均貯蓄額はいくら?
では最後に、おひとりさま世帯の60歳代・70歳代の平均貯蓄額をみていきましょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、おひとりさま世帯の60歳代・70歳代の平均貯蓄額は下記の結果となりました。
- 60歳代 単身世帯:平均1468万円・中央値210万円
- 70歳代 単身世帯:平均1529万円・中央値500万円
平均値をみると、60歳代・70歳代ともに1000万円を超えていることから、「ある程度貯蓄できているのでは」と感じた方もいるかもしれません。
しかし平均値は、極端に大きい数値がある場合に偏る傾向にあるため、「一般的な世帯の貯蓄実態」は中央値を参考にすることをおすすめします。
60歳代・70歳代の中央値をみると、どちらも1000万円以下となっており、60歳代においては「200万円台」となっています。
また、平均値と中央値の差がどちらも1000万円以上となっており、貯蓄格差の深刻さがみてとれます。
おひとりさま世帯の60歳代・70歳代の多くが十分な貯蓄ができていない現状をふまえ、早い段階から老後の備えをしておくことが大切です。
平均値に惑わされず、早めの老後の準備・適切な対策をとって、安心した老後生活を目指しましょう。
5. 今のうちから老後の備えを
本記事では、シニア世代のおひとりさまの生きがいや老後の不安感などについて、実際の調査データをもとに紹介していきました。
おひとりさまが老後に不安視しているものとして「介護や病気の際に面倒を見てくれる人がいない」「生活費」などが上位となりました。
上記を不安視する背景には社会情勢や物価上昇などさまざまな要因がありますが、おひとりさま世帯の保有する金融資産が少ないことも、こういった不安につながっているのではないかとうかがえます。
おひとりさまとして老後生活を送る場合は、日々の生活費だけでなく、介護や移動といった場面でも誰かを頼ったりサービス利用をしたりする必要が出てきます。
今一度、老後の生活費は毎月いくら赤字になるのか、介護費用や医療費などはどのくらいかなどをシミュレーションし、老後の備えを検討しておけると良いでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」
- 株式会社日本総合研究所「「高齢者の生きがい等意識調査2024」を発表」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
太田 彩子