2. 2024年12月に前倒し「児童手当」拡充、変更点をおさらい

子育て世帯を支える制度のひとつが「児童手当制度」。拡充された制度を反映した児童手当は2024年12月に初支給が行われるとされ、今後の動向が注目されています。

2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」を踏まえ、若年層の人口が急激に減少する2030年代に入るまでに現実的で具体的な対策を実施する姿勢を見せる日本政府。

改めて「児童手当」制度の主な変更点をおさらいしていきましょう。

2.1 「児童手当」における所得制限の撤廃

2023年8月末に公表された、こども家庭庁「令和6年度予算概算要求の概要」においても「児童手当の所得制限の撤廃」が明記されています。

結果、所得を問わず多くの家庭で子どもために使えるお金が増える可能性があるでしょう。

2.2 第3子以降に支給される月3万の「児童手当」

現行の児童手当の支給額は「3歳未満が一律1万5000円」「3歳以上〜中学卒業まで1万円、ただし、第3子以降は1万5000円」と定められていました。

今後、第3子以降は3万円と倍増で支給される予定です。多子家庭にとって、かなり大きな変更点といえるでしょう。

3. 児童手当以外の「こども未来戦略方針」の軸とは

「こども未来戦略方針」では、児童手当の見直し以外にも「こども・子育て政策の強化」として、多様な具体策が実施されると明記されています。

「若い世代の所得を増やす」という側面の主な内容をチェックしていきましょう。

3.1 高等教育費の負担軽減

  • 授業料減免(高等教育の無償化)の拡大
  • 子育て期の貸与型奨学金の返済負担の緩和
  • 授業料後払い制度の抜本拡充

労働者福祉中央協議会の資料によると、2010年代前半に奨学金の返済困難が社会問題として可視化されてきたようです。

しかしその後、世論喚起や政策・制度の改善の結果として導入された各種制度の対象は、主に低所得世帯の学生に限定されました。

高等教育を受ける機会を平等化するためには支援対象のさらなる拡大や負担軽減が強く求められています。その一端としての政策といえるでしょう。

3.2 出産等の経済的負担の軽減

  • 出産育児一時金を42万円から50万円まで大幅に引上げ
  • 2026年度から、出産費用の保険適用などを進める

そもそも「出産育児一時金」とは、出産前後の経済的負担を軽減するため保険組合から給付されるお金のこと。出産費用等の状況を踏まえた改定が実施されます。

3.3 子育て世帯への住宅面での援助も

  • 子育て世帯が優先的に入居できる住宅、今後10年間で計30万戸用意
  • フラット35の金利を子どもの数に応じて優遇

その他の政策も含め、子育て世帯にとって経済的および精神的負担感が緩和される支援になるかどうか注目です。

4. 共働き世帯の割合、平均所得…子育て世帯の「お金事情」

厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」から、子育て世帯の現況を確認していきましょう。

4.1 子育て中の母親、7割以上が「仕事あり」

子育て世帯の平均所得が全世帯の平均よりも高い背景として、考えられる要素は何でしょうか。

世帯によって理由は異なりますが、統計の数字からは「共働き率」が挙げられます。

子育て世帯の共働き率を「児童のいる世帯における母の仕事の状況の年次推移」から確認してみましょう。

児童のいる世帯における母の「仕事状況」の年次推移

児童のいる世帯における母の「仕事状況」の年次推移

出所:厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」

上図表から、75.7%の母親が「仕事あり」と回答していることがわかります。

これを共働き率と捉えると、2004年では56.7%、2013年で63.1%、2023年で75.7%と年々増加傾向にあると推測できるでしょう。

では、雇用形態についてはどのようになっているのでしょうか。

同調査内の「末子の年齢階級別にみた母の仕事の状況の年次推移」もあわせて確認してみると、割合的に最も大きく占めるのが「非正規の職員・従業員」でした。

また、「正規の職員・従業員」が上昇傾向をみせており、パートといった非正規で働く人が多い一方で、比較的早い段階から正社員として復職する人も増えていると見受けられます。

4.2 【年齢階級別】「29歳以下」1世帯あたりの平均所得は?

続いて、子育て世帯の平均年収を確認していきましょう。

同統計の最新年である2021年、18歳未満の児童がいる子育て世帯の平均所得金額は785万円だったとわかります。

これは、全世帯の平均所得金額545万7000円よりも高いものです。

〈「18歳未満の児童がいる世帯」平均所得金額と構成〉

  • 総所得:785万円
  • 稼働所得:721万7000円(内、雇用者所得:689万7000円)
  • 公的年金・恩給:24万5000円
  • 財産所得:11万6000円
  • 年金以外の社会保障給付金:19万1000円(内、児童手当等:15万3000円)
  • 仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得:8万1000円

稼働所得の内訳にある「雇用者所得」とは、世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額で、税金や社会保険料を含むものです。

この平均金額は「689万7000円」であることから、子育て世帯の平均的な世帯年収は600万円付近だと推測できます。

一方、同調査で触れられている所得の分布によると世帯年収の中央値は423万円。年収600万円台の世帯年収割合は、7.3%にとどまります。

全世帯の所得ボリュームゾーンが「200〜300万円未満」となっていることからも、子育て世帯の平均年収は、比較的収入が多いといえるでしょう。

5. 政府による「異次元の少子化対策」、動向をチェックしたい

子どもの教育にかかる費用や世帯所得などを踏まえてシミュレーションし、コツコツと貯蓄ができるように前もって計画が立てられるとよいでしょう。

現代では共働き率が増加し、育児と仕事が両立できるように様々な支援もなされています。

夫婦で協力してより豊かな子育てができるよう、今一度マネープランを見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料

荒井 麻友子