この背景には、国内外の投資家、とりわけ海外投資家がポートフォリオの見直しの一環として、同じコンビニ株ならばローソン株の比重を減らして、ファミマ株を引き上げる動きに出たと推察されます。これは、以前コンビニ業界が成長産業と目された時には、ほとんど見られなかった動きです。

成長が見込めない業種ならば、その中でより成長が期待できる企業に多くの投資資金を振り向けるということでしょう。

では、なぜ今“ファミマ買い、ローソン売り”なのでしょうか?

吸収合併や経営統合で規模の拡大を目指すファミリーマート

ユニー・ファミリーマートHDは、2016年9月にファミリーマートがユニーGを吸収する形で経営統合した企業で、ユニーGの傘下にあったコンビニ「サークルKサンクス」も続々と「ファミリーマート」に衣替えを行っています。

ファミリーマートは2010年にもコンビニ「am/pm」を吸収合併しました。その結果、ファミマはいつの間にか最大手のセブンイレブンとほぼ肩を並べる店舗数へと拡大したのです。

店舗数だけ拡大すればいいというわけではありませんが、規模拡大による調達コスト削減などシナジー効果が見込めるほか、今後は間接部門のスリム化等による経営効率化も期待できます。もちろん、顧客層の拡充による売上増加も大きなメリットでしょう。

方向性が今一つ明確でない印象が強いローソン

一方のローソンは、店舗数こそ業界3位とはいえ、上位2社と大きな差がついてしまいました。規模の拡大メリットを享受するには、少し中途半端と言えそうです。

また、経営トップが度々交代する中で、その方向性(「ローソン100」の展開、成城石井の買収など)がやや不透明という印象が拭えません。2017年2月には三菱商事の連結子会社になったものの、少なくとも、目に見える形の効果が出ていないようです。

そして、肝心の業績も2018年2月期は2期ぶりの減益となる見込みで、営業利益率の悪化にも歯止めがかからない状況です(2015年2月期の14.2%から218年2月期見込み10.1%へ)。

ローソンの株価低迷は経営の“大きな変化”を促す「催促相場」

この状況ならば、ローソンからユニー・ファミリーマートHDへ投資資金をシフトするのは、当然と言えば当然のことかもしれません。また、これは同時に、ローソンに対して経営面での“大きな変化”を促すものとも言えましょう。決してローソンが見限られたわけではなく、株式市場でいうところの「催促相場」です。

しかし、この先に何の変化もなければ、ほぼ間違いなく見切りを付けられる可能性が高いはずです。

成長シナリオが大きく狂いかけている、あるいは、既に崩れてしまったかもしれないコンビニ業界では、今後も次々と大きな動きが出てくるでしょう。そうした動き、とりわけ、ローソンの今後の動きに注目したいと思います。

葛西 裕一