3. え、年金の手取りって少ないの?4月支給の年金から天引きされる税金や保険料の正体とは
前章では、国民年金と厚生年金の平均受給額を紹介しましたが、この金額はあくまでも「額面」の金額であり、実際に受け取れる金額は少なくなります。
公的年金は「収入」にあたるため、現役時代の時と同様に、収入から税金や社会保険料が天引きされた状態で振り込まれます。
そのため、「額面の金額」と「実際に受け取れる金額(手取り金額)」に違いが生じるため留意しておきましょう。
年金から天引きされる税金・社会保険料は下記4つです。
- 所得税および復興特別所得税
- 個人住民税
- 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
なお、年金受給が開始されている場合は、「年金振込通知書」で実際に受け取れる金額が確認できるため、あわせて見ておけると良いでしょう。
3.1 所得税および復興特別所得税
一定額以上の年金受給の場合、「所得税」および「復興特別所得税」が天引きされます。
所得税と復興特別所得税は、額面から社会保険料や各種控除額を差し引いた額に5.105%の税率をかけた額です。
ただし、障害年金や遺族年金を受給している場合は、非課税となります。
3.2 個人住民税
所得税と同様に、個人住民税も年金から天引きとなります。
個人住民税の場合は、65歳以上で公的年金の支給額が年間18万円以上の人を対象に天引きされます。
また、個人住民税も障害年金と遺族年金の場合は非課税となるため、あわせて留意しておきましょう。
3.3 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
年間の年金支給額が18万円以上の人は、現役時代も支払い続けていた「国民健康保険料」が年金からも天引きされます。
なお、65歳以上75歳未満の人は「国民健康保険料」が天引きされますが、75歳以上の人は「後期高齢者医療制度」という健康保険に切り替わり、年金から天引きされます。
留意点として、後期高齢者医療制度は原則75歳以上の人が対象ですが、重度障害等で65歳以上75歳未満の人でも任意で加入可能です。
3.4 介護保険料
介護保険料は40歳から64歳までは健康保険料に含まれて支払っていますが、65歳以降からは単独で支払うことになります。
年金の支給額が18万円以上の人は、他の税金や社会保険料と同様に、年金から天引きされる形で徴収されます。
また、介護保険料は介護認定をされた場合も天引きされ続け、「介護状態になれば終わる」という勘違いはよくあるため留意しておきましょう。
税金や保険料が天引きされるのは一定の要件があるため、必ず天引きされるというわけではありません。また、固定資産税や自動車税などは年金天引きの対象外です。
4. 年金だけに頼らない老後対策をしておこう
本記事では、4月支給の年金から天引きされる税金や社会保険料について詳しく紹介していきました。
国民年金の平均月額は「5万6316円」、厚生年金の平均月額は「14万3973円」となっていますが、これは額面の金額であり実際にはさらに受け取れる金額が少なくなります。
平均額と天引き事情から「思っていたよりも受け取れる年金額が少ない」と感じた場合は、年金だけに頼らない老後対策をしておけると良いです。
近年では、新NISAやiDeCoといった、国が主導となる資産運用の制度もあるため、これらをうまく活用しながら、老後資産の形成をしていけると良いでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 国税庁「復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」
- 総務省「公的年金からの特別徴収」
- いわき市「年金を受給されている65歳以上の方の個人住民税(市民税・県民税)の年金特別徴収について」
- 日本年金機構「年金Q&A(年金からの介護保険料などの徴収)」
太田 彩子