現代社会では、女性が男性と対等に働けることに一応はなっています。
実際のところ、男性以上に仕事に注力する女性やハードワークをこなす女性も珍しくありません。
女性の未婚率が高まり、子どもを望まない女性が増えたのは「女性の社会進出」や「女性の選択肢が増えた」からだという意見が多々あります。
しかし、現代社会では以下のような悩みを抱える女性も多くいることを見落としてはなりません。
「キャリアウーマンでもないし、仕事にやりがいもない。かといって、恋人もいない」
「不安定な雇用形態で将来が不安。でも、結婚願望もそんなにない」
当然のことながら、未婚女性のすべてが仕事を生きがいにしているわけでも、高い収入を得ているわけでもありません。
むしろ、将来に不安を抱えている人や、経済的に不安定な人が現代社会におけるおひとりさま女性の過半数を占めていると考えられます。
本記事では、おひとりさま女性に対してつくられてきたイメージや、おひとりさま女性の現状について見ていきましょう。
1. 2000年代はじめ頃からつくられた「未婚女性=キャリアウーマン」のイメージ
「おひとりさま」という言葉を世に広めたのは岩下久美子さんといわれます。
岩下さんはいわゆるキャリアウーマンであり、精神的にも経済的にも自立した女性でした。
彼女は青山学院大学の法学部を卒業し、おひとりさま向上委員会を主宰した他、現代社会におけるコミュニケーションの問題を追及し、ストーカー研究にも多大なる貢献をするなど、さまざまな実績があります。
さらに『おひとりさま』(2001)のほか『ヴァーチャルLOVE』(1999)を出版するなど、著述家としても精力的に活動していました。
彼女の著作『おひとりさま』では、おひとりさまとは「個」の確立ができた大人の女性であることが前提となっています。
本著において経済的なゆとりのあるおひとりさまがイメージされていることは明らかで、バーやホテルステイといったきらびやかで、お金がかかるような娯楽の楽しみ方が伝授されています。
また、テレビやスクリーンなどでは、天海祐希さんがおひとりさまのイメージを形成するのに一役買っているといえるでしょう。2008年に放送された『Around40 〜注文の多いオンナたち〜』(TBS系列)では優秀な精神科医の女性を演じています。
彼女の趣味は旅館でひとりまったり過ごすこと。このような趣味が成り立つのも医師としての安定的、かつ高収入があることが前提になります。
2012年に放送された『結婚しない』(フジテレビ系列)で天海さんはガーデンデザイナーの独身女性を演じました。彼女は上司からの信頼も厚く、マンションを40歳代前半にして購入できるほど経済的に自立した女性です。
天海さんがドラマで演じている「おひとりさま」は、岩下久美子さん著『おひとりさま』がターゲットとしている読者層にもあてはまっているといえるでしょう。
平成一桁生まれの女性たちは現在、筆者も含めて「結婚適齢期」ともいえる年齢になっています。
中高生の頃こうしたドラマが放送されたことでドラマと現実は違うと分かりつつも、おひとりさまに対して「キャリアウーマン」をどこかでイメージしがちです。
未婚者が生きやすい世の中になってきているとはいえ、現状の自分と作品で描かれてきたおひとりさまのイメージの乖離にあせりや不安を感じる人も少なくありません。
2. 現代社会のおひとりさま女性は「キャリアウーマン」よりも「マイペース」が多いのか?
実際の社会において「おひとりさま=経済的に自立した女性」というわけではありません。
それどころか、恋愛に対する関心が低い女性の方が恋愛に積極的な女性よりも仕事にもどこか消極的という傾向もあるのです。
日本労働組合総連合会は「非正規雇用で働く女性に関する調査2022」を実施。対象者は非正規雇用で働く女性(20歳〜59歳の女性1000名の有効サンプルを集計)です。
本調査では初職の雇用形態別に配偶者(事実婚・同性パートナーを含む)の有無についても明らかになっています。
【図表1】では初職の雇用形態が「正規雇用」の人の方が配偶者が「いる」割合が高くなっています。
非正規雇用など比較的不安定とされる職に就いている女性の方が、配偶者がいる=結婚しているというイメージもありますが、実情は異なるようです。
2.1 自ら「非正規雇用」を選んだおひとりさま女性
さらに興味深いのは、非正規雇用で働いている配偶者のいない人の多くが自ら望み、こうした働き方を選択していることです。
【図表2】によると、配偶者が「いない」人たちからもっとも多くの回答を集めたのは「ある程度 労働時間・労働日を選べるから」が36.8%と最多でした。次いで、「通勤時間が短いから」を選んだ人が多いという結果に。
一方、「正社員・正規職員として働けるところがなかったから」と回答した人の割合は16.6%となっています。
もちろん、職を選べず仕方なく選んだ人もいるでしょう。しかし、なかには別の理由をもって非正規雇用を選択した人もいるのかもしれません。