4. 老後に向けて準備しておきたい4つの費用

前章で紹介した「老後の生活費」は、日々の生活支出のみになっており、実際の老後生活では「突然の大きな支出」も発生することが予想されます。

生活費以外の「老後に向けて準備しておきたい費用」として、主に下記4つが挙げられます。

  • 医療費
  • 介護費用
  • 自宅修繕費用
  • インフレに対応できる余裕資金

老後は、医療費負担や介護費用の発生などに備えておく必要があります。

一例として、公益財団法人 生命保険文化センターの「介護費用の調査」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、下記のとおりです。

介護に要した平均費用

介護に要した平均費用

出所:公益財団法人 生命保険文化センターの調査結果をもとに筆者作成

公益財団法人 生命保険文化センターの同調査によると、介護を行った期間は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)であることから、介護費用は下記の単純計算ができます。

8万3000円(月々の介護費用)×61.1ヶ月(介護の平均的な期間)+74万円(一時的な費用)=約580万円

なお、介護費用は「在宅での介護か」「施設での介護か」によっても費用が変わってくるため、それらも考慮してシミュレーションができると良いです。

また、持ち家世帯の場合、経年劣化による家の修繕費や介護に伴う改築費などが発生するかもしれません。

上記費用は、場所によって異なりますが、一例として国土交通省の公表した「リフォーム内容とそれぞれの費用」は下記のようになっています。

リフォームの内容と価格

リフォームの内容と価格

出所:国土交通省「リフォームの内容と価格について」

家を全て改装する場合は、上図の下限合計で約500万円程度、上限合計で1000万円程度かかるため、これらも老後に向けた準備費用として考えておけると良いです。

また、本記事で紹介した老後に必要な費用は、あくまでも平均的な支出に対する赤字分を補填するための最低限の老後資金となっており、インフレ率は考慮されていません。

人生100年時代と言われる現代で、いつどのようなことが起きても柔軟に対応できるように医療費や介護費用、修繕費用などとあわせて「インフレに対応できる余裕資金」も準備しておけると安心でしょう。

5. 安心した老後生活に向けて今のうちから準備をしておこう

本記事では、65歳以上のリタイア世帯のリアルな生活実態について詳しく紹介していきました。

老後に必要な老後資金は人によって異なり、一概に「老後までにこのくらい貯めておけば問題ない」とは言い切れません。

ご自身の老後生活に必要な資金を試算する際には「将来受け取れる年金額」と「想定される老後の生活費」を把握したうえでシミュレーションができると良いでしょう。

また、老後資金は日常の赤字補填分以外にも、医療費や介護費、家の修繕費用などもあわせて考えておけると安心です。

参考資料

和田 直子