仮想通貨のクレジットカードでの購入停止が世界的に広がっており、日本にもその流れが押し寄せています。ビットコインの急落でカード利用者の支払い能力が怪しくなったことが主な理由ですが、仮想通貨ブームに対するカード会社の警戒感も見え隠れしています。

仮想通貨のカード購入停止、世界的な流れが日本にも波及

仮想通貨のクレジットカードでの購入停止が世界的に広がっており、その流れが日本にも押し寄せています。

仮想通貨取引所のビットフライヤー(bitFlyer)は3月3日、3月9日以降のクレジットカードでの仮想通貨購入停止を発表しました。この動きに先立って、2月9日にはザイフ(Zaif)がクレジットカードによる仮想通貨の購入サービスを停止しています。

さらに、ザイフの決定前に先立つ2月初旬には、英米の金融機関が相次いでクレジットカードによる仮想通貨の購入を停止しています。

たとえば、米国ではバンク・オブ・アメリカとシティ・グループが2月2日、JPモルガン・チェースが2月3日、英国ではロイズ・バンキング・グループが2月4日にそれぞれクレジットカードでの仮想通貨購入停止を発表しています。

ビットフライヤーとザイフはともに「契約しているカード会社の仮想通貨購入に関する方針変更のため」と理由を説明しています。

日本国内の取引所でのカード利用停止の動きは欧米への追随であり、主体的な動きではなさそうですが、いずれにしても仮想通貨の取引量が世界最大といわれる日本も巻き込んで、カード利用の停止は世界的な潮流となっています。

ビットコイン急落で返済能力を懸念

英ロイズによると、カード利用停止の理由は、仮想通貨の急落により利用者が多大な負債を抱える事態を懸念してのことだと説明しています。

実際、昨年12月に最高値を付けたビットコインがその後の反落で半値以下へと急落しており、年初からの弱気相場がその後の相次ぐ利用停止につながったようです。

ただ、ビットコインが下落しても資産価値が低下するだけですので、銀行が指摘する負債を抱えるリスクにはピンとこないかもしれません。

米国ではスタバやダンキンドーナッツなどでのごく少額な支払いでもクレジットカードが利用されており、カードでの支払いは一見すると現金での支払いを代替しているに過ぎないように見受けられるからです。

たとえば、現金で100万円を持っている人がその現金を利用してビットコインを買う限り、債務不履行のリスクはゼロであり、そもそも債務がありません。

一方、その100万円を使わずに、クレジットカードを利用してビットコインを200万円分購入すると、価格が急落すると債務が返済できなくなる恐れがあります。

すなわち、購入時点で200万円分の資産と負債が同時に発生しており、その後にビットコインの価格が200万円から80万円に下落してしまうと、資産は80万円に減りますが、負債は200万円のままだからです。

ところが、現金は100万円しか持っていませんので、ビットコインを売却しても返済能力は180万円となり、返済が滞るリスクが懸念されることになります。

もちろん、実際には給与などのキャッシュフローがあるはずですので、この程度の金額であれば深刻に受け止める必要はないのかもしれません。

とはいえ、学資ローンなどを手掛けるlendeduの調査によると、ビットコイン購入者のうちクレジットカードを利用したのは18.15%で、そのうち実に22.13%がカード利用分の支払いをしていないことが明るみになっています。

調査通りであれば、銀行側がビットコイン購入者の支払い能力に疑問を持ったとしても不思議ではありません。

クレジットカードでの購入を禁止している銀行であってもデビットカードでの購入は禁止していませんので、この点でもやはり信用力の問題であることがわかります。

本音は仮想通貨ブームへの警戒?

ビットコインの急落でカード利用者の返済能力に疑念が生じたことは事実であるとしても、カード利用の停止の理由はそれだけではなさそうです。

今でこそ仮想通貨というと投機的な商品の代名詞になってしまった観もありますが、仮想通貨の当初の主な目的として、特に個人間の送金・決済をより簡単に、より速く、より安く、より安全にするといった点を挙げることができ、これらの視点はクレジットカードの利便性と競合すると考えられていました。

しかし、これまでのところ仮想通貨が決済に利用された形跡はごく限られており、購入されたビットコインのほとんどがそのまま保有されているようです。

また、実際に送金しようとしても時間もコストも意外とかかるということも明らかとなっています。

このように、当初は脅威との見方もあった仮想通貨ですが、クレジットカードを代替する可能性が薄らいだこともあり、クレジットカードは仮想通貨の普及に一役買うことになります。

実際、仮想通貨をクレジットカードで購入できるという利便性の向上が2017年の爆発的な価格上昇に一定の役割を果たしたことは間違いないでしょう。

とはいえ、基本的には株式や外貨をクレジットカードで購入することができないことを踏まえると、そもそも仮想通貨をクレジットカードで購入できたこと自体が不思議です。

背景にはペイパルやアリペイといったオンライン決済の普及がありそうです。さらに、最近ではベンモ(Venmo)に代表されるモバイル決済が急速に広がっており、既存の金融機関による金融仲介機能への影響が警戒されています。

特に、モバイル決済を好むとされるミレ二アル世代はクレジットカードの利用率がそれ以前の世代と比べて著しく低いといわれています。そのミレ二アル世代が熱狂する仮想通貨の購入にクレジットカードを利用することは、カード発行会社にとっては渡りに船だったのかもしれません。

ところが、仮想通貨の価値が急上昇するのに伴って、仮想通貨に対する関心が世代を超えて高まるとともに、その本来の役割も見直されるようになっています。

つまり、仮想通貨の普及に伴い、仮想通貨は再びクレジットカードの脅威になりつつあるということです。

こうした流れを踏まえると、クレジットカードによる仮想通貨の購入停止は、仮想通貨ブームへの危機感がもたらした必然だったのかもしれません。

LIMO編集部