半導体設備投資の拡大によって、製造装置用部材の不足が表面化してからすでに1年以上が経過しようとしている。この間も部材メーカー各社は能力増強に着手しているものの、状況はそれほど好転しておらず、むしろさらに深刻化したといってよい。すでに装置メーカーの業績にも影響を及ぼしており、製造装置市場の拡大に向けたリスク要因の1つと認識されている。

深刻化するLMガイドとボールねじの"争奪戦"

 製造装置用部材として最も不足感が強く、問題となっているのがLMガイドやボールねじといった基幹パーツだ。同パーツは半導体製造装置だけでなく、自動車用設備や工作機械などあらゆる産業に用いられており、もう1年以上「争奪戦」の状況が続いている。特に業界大手のTHK㈱製のガイドやねじについては、半導体製造装置などの高精度な分野では代替が難しいとして、納期回答が難しい状況に陥っている。業界では「納期が400日(1年以上)にまで延びた」といわれており、状況は以前にも増して悪化していると言わざるを得ない。

 実際にこれら部品調達の苦戦が装置メーカー各社の業績に悪影響を及ぼしている。ダイシングやバックグラインディングなど後工程装置大手の㈱ディスコも、過去最高の受注環境にもかかわらず、部材不足の影響で18年1~3月期売上高は前四半期比8%減と減収予想。一部装置の出荷が4~6月にずれ込む予定だ。ただ、4~6月期には部材不足の状態は解消する見通しで、同四半期の売上高は471億円と過去最高を見込む。

 テスター大手の㈱アドバンテストも、18年度(19年3月期)通期売上高として2000億円を視野に入れるなかで、供給体制の強化を最重要テーマに掲げる。同社の場合は自社拠点の拡張に加え、協力会社の拡充を進めているが、中堅テスターメーカーと協力会社を取り合っている状況で、来期に向けた体制づくりはまだ道半ばといえる。

18年装置市場の下ぶれリスクに

 部材不足に関しては、THKも増産体制を急ピッチで進める。現在、国内拠点の山形工場では新棟を建設中で、18年11月の稼働開始予定。また、中国、ベトナムでも新工場を建設しており、19年以降の安定供給に向けた増産投資を実行中だ。

 ただ、18年いっぱいはこの状況が続くと見られ、装置メーカー各社は顧客の要求に応えるべく、部材確保に奔走することになりそうだ。これらの問題は、半導体製造装置市場全体の見通しについても影響を及ぼす可能性がある。

 業界団体のSEMIによれば、18年の半導体製造装置市場は前年比7.5%増の601億ドルが見込まれている。しかし、LMガイドやボールねじといった機構部品だけでなく、半導体製造装置はセラミック部品や樹脂材料など、あらゆる分野で部品不足に直面しており、これが18年市場見通しにおける下ぶれリスクとして懸念されている。

 半導体業界では装置用部材だけでなく、同様にシリコンウエハーの不足も好況時ゆえの問題として浮上している。これまで以上に、各企業の調達力が問われることになりそうだ。

 (稲葉雅巳)

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳