2. 高額療養費の支給例

次のケースで、高額療養費がいくら支給されるのか計算してみます。

2.1 <ケース1>

  • 年収500万円の会社員Aさん(40歳)
  • 1ヵ月の医療費80万円

自己負担限度額:8万100円+(80万円-26万7000円)×1%=8万5430円

高額療養費

  • Aさんの医療費の負担割合は3割なので実際の負担額は24万円
  • 24万円-8万5430円=15万4570円

高額療養費として15万4570円が払い戻されます。

2.2 <ケース2>

  • 年収800万円の会社員Bさん(45歳)
  • 1ヵ月の医療費100万円(差額ベッド代20万円を含む)

自己負担限度額

  • 差額ベッド代は医療費に含まないため80万円となる
  • 16万7400円+(80万円-55万8000円)×1%=16万9820円

高額療養費

  • Bさんの医療費の負担割合は3割なので実際の負担額は24万円
  • 24万円-16万9820円=7万180円

高額療養費として7万180円が払い戻されます。

2.3 <ケース3>

  • 所得区分が一般のCさん(80歳)とDさん(75歳)夫婦
  • 夫婦の1ヵ月の医療費

・Cさんの医療費

50万円(甲病院入院)

・Dさんの医療費

  • 8万円(乙病院通院)
  • 4万円(丙クリニック通院)

世帯合算後の自己負担額

  • CさんもDさんも自己負担割合は1割
  • 5万円(Cさん)+8000円(Dさん)+4000円(Dさん)=6万2000円

世帯ごとの自己負担限度額5万7600円

高額療養費

6万2000円-5万7600円=4400円

高額療養費として4400円が払い戻されます。

2.4 <ケース4>

  • 共働きのEさん(35歳)とFさん(32歳)夫婦
  • Eさんは年収600万円でA健康保険組合に加入
  • Fさんは年収400万円でB健康保険組合に加入
  • Eさんの1ヵ月の医療費20万円(実際の負担額は6万円)
  • Fさんの1ヵ月の医療費10万円(実際の負担額は3万円)

同一世帯であれば、2万1000円以上の自己負担額が複数あれば合算ができますが、EさんとFさんは別々の健康保険組合に加入しているため、同一世帯とはならず合算できません。

各々では自己負担限度額に届かないため、高額療養費の支給はありません。

3. 所得区分が変わると医療費の負担が大きく増える

70歳未満の医療費の負担割合は3割なので、自己負担額が大きくなる傾向があります。

所得の段階に応じて自己負担限度額が設定されていますが、70歳未満の場合、それぞれの所得区分は5段階に分かれます。

日本の平均年収から考えて割合が多い「年収約370~約770万円」はおよそ8万円であるのに対し、その上の所得区分「年収約770~約1160万円」になると、およそ17万円となり、自己負担限度額が倍以上になっています。

年収約1160万円以上になるとおよそ25万円になります。

高所得になればなるほど割合は少なくなっていきますが、年収770万円は高所得というには厳しい年収であるように思います。

年収770万円は手取りにすると約572万円です。

決して余裕があるとはいえないでしょう。

年収769万円では自己負担限度額が約8万円であるのに対し、1万円増えて年収770万円になると自己負担限度額が約17万円になります。

どこかで区切る必要がある以上仕方のないことですが、自己負担額の増え方が急である点は認識しておくといいでしょう。

参考資料

石倉 博子