3. 65歳以上で無職の夫婦世帯の貯蓄額の平均はいくら?

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、65歳以上で無職の夫婦世帯の貯蓄額の平均額と中央値は次のとおりになりました。

3.1 65歳以上の無職夫婦世帯の貯蓄事情

無職世帯に限定すると、貯蓄の平均額は2359万円でした。

無職世帯では貯蓄を切り崩す世帯も少なくないため、貯蓄事情はさらに厳しいと言えるでしょう。

参考までに、勤労世帯も含めた65歳以上全体の貯蓄額も確認します。

3.2 65歳以上夫婦の貯蓄事情と一覧表

  • 平均額:2414万円
  • 中央値:1677万円

平均値と中央値(値を小さい順に並べたときに真ん中にくる数値)に乖離があることから、貯蓄のある世帯とない世帯で二極化があると予想されます。

  • 100万円未満:7.8%
  • 100~200万円未満:3.4%
  • 200~300万円未満:3.2%
  • 300~400万円未満:3.5%
  • 400~500万円未満:3.3%
  • 500~600万円未満:3.5%
  • 600~700万円未満:2.8%
  • 700~800万円未満:2.6%
  • 800~900万円未満:3.4%
  • 900~2000万円未満:2.4%
  • 1000~1200万円未満:6.1%
  • 1200~1400万円未満:4.4%
  • 1400~1600万円未満:3.7%
  • 1600~1800万円未満:4.2%
  • 1800~2000万円未満:3.2%
  • 2000~2500万円未満:8.3%
  • 2500~3000万円未満:6.3%
  • 3000~4000万円未満:10.0%
  • 4000万円以上:17.9%


貯蓄500万円未満が約2割となっており、まとまった老後資金が準備できなかった世帯が5世帯に1世帯いることがわかります。

年金と貯蓄について見ていきましたが、もう一つ重要なのが「支出額」です。

多くの方は今の支出より減るので、まずは現在の支出額を把握し、その何割減で生活できるのかを考えることが重要になるでしょう。

参考までに、今のシニアの平均的な支出額も紹介します。

4. 65歳以上で無職の夫婦世帯の支出額平均はいくら?

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」より、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ていきます。

4.1 65歳以上で無職の夫婦世帯の無職世帯「月の生活費」

  • 月の収入:24万6237円(うち社会保障給付22万418円)
  • 月の支出:26万8508円(うち消費支出23万6696円)
  • 月の収支:▲2万2270円
     

平均では、恒常的に2万2270円の赤字になるようです。ただし、これは全世帯での平均値なので、実際の家庭に落とし込むのであれば「2万円程度の赤字を改善するためにやりくりする」となり、収支はゼロにできるかもしれません。

参考までに、消費支出の内訳は次のとおりです。

  • 食料:6万7776円
  • 住居:1万5578円
  • 光熱・水道:2万2611円
  • 家具・家具用品:1万371円
  • 被服及び履物:5003円
  • 保健医療:1万5681円
  • 交通・通信:2万8878円
  • 教育:3円
  • その他:4万9430円
  • 非消費支出:3万1812円


上記をもとに、「我が家でもっとかかる費用」「我が家ではここまでかからない費用」を差し引きし、支出の目安額をつかむのもいいでしょう。

ここで重要なのは、日常的な支出だけでなく、医療費や介護費用、住宅の改修費用なども見込むことです。

もし赤字になることが見込まれるのであれば、貯蓄や私的年金などで備えることも検討し始めましょう。

5. 老後の問題を解決するのは自分次第

今回は老後のお金について着目してみました。年金だけに頼ることは難しい時代に突入してきてしまったため、しっかりと自分自身で老後の資金準備を「今から」行うことが大切です。

しかし注意したいのが、健康寿命という考え方もあり、老後を心配しすぎてしまい、今の若く元気で健康な時期を棒に振ってしまっては本末転倒です。

若いうちにはしっかり遊び、その上で老後の準備をしていくことが大切です。ただ、純粋に貯金だけをしているだけでは老後の不安は解消できません。

お金の効果を最大限発揮するためには、お金を動かし運用し、最大効率で老後の準備をすることも大切です。自分が何歳になっても、満足して遊ぶことができるお金を今の時期からしっかりと準備してみてはいかがでしょうか。

NISAやiDeCoという制度が今の日本には存在していますので、ただの貯金ではなく、一歩踏み込んだ運用の世界に足を踏み入れてみるのもひとつでしょう。

参考資料

杉田 有毅