いよいよ就職活動が本番を迎えました。そこで、久留米大学商学部の就職支援責任者である塚崎公義教授の学生向けアドバイスを紹介します。

就活で聞かれるのは「頑張ったこと」「長所」「志望動機」

就活で最もよく聞かれるのは、「大学時代に頑張ったこと(大学での勉強面)」「大学時代に頑張ったこと(大学での勉強以外)」「自分の長所」「志望動機」である。

「大学時代に頑張ったこと(大学での勉強面)」については、前回『就活成功のカギは落ちても落ち込まないこと』で記したように、一カ所だけ思い切り勉強しておこう。期末試験で出題されそうなところに「山を張る」場合があるが、就職試験ではエントリーシートに記したことについて聞かれるに決まっているのだから、山を張る必要さえもないのである。

志望動機については、数十社受けるとして、各社ごとに特徴を把握して志望動機を考えなければならないので、非常に大変である。これについては、別の機会に。

頑張ったことは、それによっていかに成長したかをアピールする

大学時代に頑張ったこと(大学での勉強以外)は、自分の成長をアピールする機会である。「毎日15時間ゲームに打ち込み、全国大会に出場しました」では、成長がアピールできない。

「大卒の給料は高卒より高い。もしも君が過去4年間に成長していないのであれば、君を採用せずに高校生を安い給料で雇いたいが、どうか?」「私は過去4年間で、こうした経験をしてこのように成長しました。したがって、4年前の私を雇うよりも、多少給料は高くても、今の私を雇った方が御社のためです」という暗黙のやりとりが採用担当者との間で交わされている、と考えよう。

体育会系運動部にいれば、「厳しい練習に耐え、気力と体力と忍耐力が付きました」で良いから簡単であるが、そうでない場合は、自分の成長がアピールできるエピソードを探そう。

たとえば、「海外旅行や留学生との交流の中で、今まで自分が当然だと考えていたことが当然ではないのだということを知り、物事を複線的に考えられるようになりました」などと言えれば立派なものだ。もちろん、「複線的に物事を考えたという例を3つ挙げてください」と聞かれることを想定して準備をするべきなのは当然だが。

「好きな異性に思い切って告白したことで、引っ込み思案だった自分が積極的に他人に話しかけることができるようになりました」というのも、立派な成長だ。

長所は思い切って自慢しよう

日本人は「自慢してはダメ」「沈黙は金。黙っていても周囲は君の良さをわかってくれるから」と言われて育つ。しかし、就活に限っては、これは全く当てはまらない。「何の取り柄もない私ですが、採用していただければ幸いです」などと言えば、絶対に採用されないからである。

思い付く限りの自慢を、思い切り書こう。その上で、良識ある大人にアドバイスを頼もう。アドバイスを求められた大人の立場で考えてみよう。自慢し過ぎた自己PRを削るのは簡単だが、「何の取り柄もありません」と書いた自己PRを添削させられても困るはずだ(笑)。

余談であるが、相手の立場で考えてみる、というのは人生の多くの場面で非常に有益だ。たとえば就活の面接官の立場で考えてみよう。大勢の就活生の中から君を選ぶだろうか? 君の模擬面接を録画して、自分で面接官になったつもりで評価してみたまえ。きっと、自分に足りない点が見えてくるだろう。

今ひとつ。就活の面接官は学生から見ると雲の上の人に見えるが、社内では「ダメな学生を採用して上司に叱られることを恐れているだけの末端係員」かも知れない。そう思っただけで、面接時の緊張がほぐれるというものだ。

「自慢することがない」という学生も多いが、とにかく何でも自慢しよう。就活はライバルとの競争だから、1点でも得点できそうなことは積極的にアピールしよう。

たとえば上記のゲーム大会のエピソードは、長所欄になら使えそうだ。「自分は集中力と気力があり、目標に向かって努力し続ける忍耐強さもあります」と書けば良いであろう。

長所と頑張ったことが重ならないように

頑張ったことが簿記検定の勉強で、「それによって簿記が得意になりました」と記し、長所欄に「簿記が得意です」と書くのは、ルール違反ではないが、大変もったいない話である。簿記検定のことは、資格欄を見れば面接官にわかるので、せっかく自己PRできるチャンスを与えられたのだから、別のことをPRしよう。

「私の長所は努力家であることです。簿記の資格を取得するために頑張りました」と書くなら、まだマシだが、それも「簿記の資格をとった人は、みな頑張ったはずだ」と思ってもらえるので、わざわざ書かなくても良かろう。

資格欄に簿記の資格を書き、頑張ったことに「接客のアルバイトでコミュニケーション能力がつきました」と書き、長所欄には「物事に対して多様な見方ができるところです。留学生の友人が多いので、いつも彼等と日本人の発想の違いに驚き、物事を一面的に捉えてはいけないと自分に言い聞かせているからです」といった感じで記すことができれば、その方がはるかに良いだろう。

P.S.
最後に、努力に関する、筆者の好きな言葉を贈ろう。「努力をしても報われるとは限らないが、努力は重要だ。努力して悪い結果になったときには、運の神様を恨んで生きればいいが、努力をせずに悪い結果になれば、努力をしなかった過去の自分を恨んで生きることになるからだ」

頑張りたまえ。諸君の健闘を祈る。

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塚崎 公義