就活成功のカギは落ちても落ち込まないこと

就職支援責任者の大学教授からのアドバイス(1)

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3月1日から、就職活動が本格化します。そこで今回は、久留米大学商学部の就職支援責任者である塚崎公義教授が学生に行なっているアドバイスを紹介します。

就活は人生最大の分岐点と心得よ

まず、就活は人生最大の分岐点の一つであることを、しっかり自覚しよう。就活の成否で生涯所得が数千万円、正社員と非正規労働者では1億円以上も違ってくるかも知れないのだから、万が一にも「面倒だ」などという理由で手抜きをすることがないようにしよう。

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人生の間で半年間だけ思い切り頑張るとすれば、就活の時期である。就活に失敗してから何年頑張っても、就活の失敗を取り戻すのは大変なことだ。まるで期末試験で不可を取ってから追試のために勉強する学生のようだ(笑)。

「これからは終身雇用の時代ではない」と言われるのを真に受けて、就活の重要性を認識しない学生がいるとすれば、それは勘違いだ。終身雇用の例外が増えてくるだけで、原則は終身雇用が残るはずであるし、転職するとしても、転職採用は「即戦力採用」であるから、最初の職場での実績と経験が物を言うのである。

卒業までに、必ず内定を得ること

絶対に覚えておいてほしいのは、内定をもらわずに卒業すると悲惨な人生が待っている、ということである。どんなに不本意な内定先であっても、必ず就職しよう。今は景気が良いので、贅沢を言わなければ、就職先は見つかるはずだ。経済力にもよるが、1年留年して就職活動を続ける、という選択肢もあろう。

就職してから転職活動をする方が、内定が決まらずに卒業し、就職活動を続けるよりも遥かに楽なのだ。筆者にも理由はよくわからないが、日本企業は転職者の受け入れにはある程度寛容だが、無職の人間を採用することには非常に抵抗を感じるようだ。

筆者は、「卒業式の時点で内定を得ていない学生は、謝恩会に出さずに、バスに乗せてブラック企業の面接に向かわせよう」と主張している。筆者は大真面目なのであるが、冗談のように聞こえるらしく、筆者の提案が実行に移されていないのは、残念なことである(笑)。

就活は辛いと覚悟せよ

就活は、辛い。何十枚ものエントリーシートを書き、何十回もの面接を受けるだけでも大変であるし、各社ごとに志望動機を述べるためには各社のことを研究しなければならない。これは大変な労力だ。

しかし、本当に辛いのは、不合格通知が続いて到着することだ。文面が「残念ながら、我が社は貴方のご要望には添えませんでしたが、貴方のご健闘をお祈りしております」といったものであるため、「お祈りメール」と呼ばれているものだ。

中には、「お祈りメールが10本続けて来たので、心が折れました。就活を1週間だけ休んでいいですか?」と聞いてくる就活生がいるが、筆者は心を鬼にして「ダメだ」と答えることにしている。「マラソンの途中で5分だけ座ったら、二度と走れないから」というわけだ。

筆者は、そうなる前の心構えが大切だと考えている。受かるかも知れないと思って受けるから、落ちた時に落ち込むのだ。はじめから受かると思わずに受ければ良い。

「宝くじのようなものだから、50社受ければ1社くらい受かるだろう」と思って受ければ、10社くらい落ちても落ち込む必要はないだろう。大切なのは、落ちても落ち込まず、落ちる以上に受けることだ。頑張ってくれたまえ。

複数の大人のアドバイスを受けること

就活は、慣れが大切だから、多くの人に模擬面接を頼んでみよう。そして、複数の良識ある大人からアドバイスをもらおう。当然ながら、複数の良識ある大人から同じアドバイスが来たら、素直に従おう。

しかし、複数の大人にアドバイスを求めると、異なるアドバイスが来る場合も多い。それは、就活には「正解」がないからだ。その場合には、どちらを選ぶかは本人が決めよう。

これは、相性の問題だ。採用担当者にもアドバイスする大人にも就活生にも「好み」がある。3者の好みが一致していれば良いが、そうでない場合には、就活生の好みに合った面接官と巡り会うことを期待しよう。面接官の好みは、社風を反映したものである可能性が高いので、自分の好みと合った社風の会社に入社した方が幸せだからだ。

相性の問題だということは、実力があっても相性が悪いと落ちる場合がある、ということになる。これは、嬉しくないことだ。しかし一方で、御祈りメールを受け取っても、全人格を否定されたような気になる必要はない、ということでもある。「たまたま、当社とは相性が悪かっただけだ」と思えるからである。

大学の勉強で頑張ったことを聞かれるので、一カ所だけ思い切り勉強する

就職活動で主に聞かれるのは、「長所(自己PR)」、「大学の勉強で頑張ったこと」、「大学の勉強以外で頑張ったこと」、「志望動機」の4つである。

大学時代に勉強面で頑張ったことは、得意な科目、あるいは書こうと思っている卒論の概要などを答えれば良い。期末試験はどこが出題されるのかわからないので、広く浅く勉強する必要があるが、就職試験は自分がエントリーシート等に記入したことについて聞かれるわけであるから、「山を賭ける」必要がない。そこだけに絞って必死で勉強しておこう。

稀に「二番目に頑張ったことは?」と聞かれる場合もあるが、それは「圧迫面接」だ(笑)。

新卒採用はポテンシャルを判断される

大学時代に学んだ内容が志望先の仕事と関係なくても良い。新卒採用は「ポテンシャル採用」であるから、「この学生は鍛えれば使いものになるか否か」を判断されるので、今ただちに使える知識や技能を持っている必要はない。

ちなみに筆者は法学部で憲法や刑法を学んで、銀行の就職試験を受けた。当然、銀行では全く使えない知識ばかりである(笑)。しかし、そこで自己アピールをすれば良い。

「無味乾燥な法律の条文や判例を大量に記憶する忍耐力があります」でも良いが、「様々な学説を学び、自分なりの考えをまとめる訓練をしたことで、物事を論理的に考えることができるようになりました。また、論述試験で自分の考えを他人に理解してもらう練習もできました」の方が良いだろう。

理科系の大学院卒の場合であっても、研究内容が会社の業務と直接関係ある必要は必ずしもないようだ。もっとも、志望動機を聞かれた時にしっかり答えられれば、の話であるが。

「長所(自己PR)」、「大学の勉強以外で頑張ったこと」、「志望動機」については、別の機会に。

P.S.
最後に、努力に関する筆者の好きな言葉を贈ろう。「努力をしても報われるとは限らないが、努力は重要だ。努力して悪い結果になったときには、運の神様を恨んで生きればいいが、努力をせずに悪い結果になれば、努力をしなかった過去の自分を恨んで生きることになるからだ」
 
頑張りたまえ。諸君の健闘を祈る。

久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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