3. 【65歳以上で無職の夫婦世帯】年金収入はいくら?
では、今のシニアはいくらの年金を受給しているのでしょうか。
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から国民年金と厚生年金にわけて確認します。
3.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額
- 〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
3.2 厚生年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金部分を含む
厚生年金の平均は14万3973円。「では夫婦で28万円もらえる?」と思われるかもしれませんが、平均では男女でも差があるのが特徴です。
男女別の平均額を参考にすれば、自営業の夫婦は11万3224円、会社員の夫婦は26万8753円となります。
ただし、これはあくまでも平均。特に厚生年金では個人差が大きく、下記の通り大きくばらけている様子がわかります。
3.3 厚生年金の受給額ごとの人数
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
それぞれの働き方や収入によって実際の年金額は変わるため、夫婦の年金見込額はねんきんネットやねんきん定期便などで確認することがまず1歩となります。
また加給年金などもあるため、年金事務所等で試算してもらうのもひとつです。
貯蓄と年金が把握できたら、最後に支出額を考えてみます。
4. 【65歳以上で無職の夫婦世帯】支出額の平均はいくら?
定年を迎えると、何となく支出は減ると考えるかもしれません。
公益社団法人生命保険文化センターによると、定年後に減る支出と増える支出は次のとおりです。
4.1 定年後に減る支出の例
- 住宅ローン(完済する場合)
- 会社員としての交際費・食費
- スーツ、ワイシャツ、ネクタイなどビジネス被服代
- 子供の教育・扶養費用(成人・独立の場合)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 健康保険料※
4.2 定年後に増える支出の例
- 近所づきあいの交際費
- 趣味や生きがいのための費用
- 妻の国民年金保険料(妻が60歳になるまで)
- 国民健康保険料※
※健康保険から国民健康保険へ移るほか、定年退職前の健康保険に引き続き加入する、要件を満たせば会社勤めの家族の被扶養者になる選択肢もあります。
この他、光熱費や家賃、固定資産税などは変わらずかかると予想できます。
こうした目安をもとに、今の生活費をベースにいくらに変化すると考えるとわかりやすいかも知れません。
参考までに、今のシニアの平均的な支出額も紹介します。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」より、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見ていきます。
4.3 65歳以上・夫婦のみの無職世帯「月の生活費」
- 月の収入:24万6237円(うち社会保障給付22万418円)
- 月の支出:26万8508円(うち消費支出23万6696円)
- 月の収支:▲2万2270円
平均では、恒常的に2万2270円の赤字です。
消費支出の内訳は次のとおりです。
- 食料:6万7776円
- 住居:1万5578円
- 光熱・水道:2万2611円
- 家具・家具用品:1万371円
- 被服及び履物:5003円
- 保健医療:1万5681円
- 交通・通信:2万8878円
- 教育:3円
- その他:4万9430円
- 非消費支出:3万1812円
上記をもとに、「我が家でもっとかかる費用」「我が家ではここまでかからない費用」を差し引きし、支出の目安額をつかむのもひとつです。
ただし日常的な支出だけでなく、医療費や介護費用、住宅の改修費用なども見込んでおきましょう。
もし赤字になる場合、リタイヤではなく仕事による収入を得るのか、それでも貯蓄を切り崩して生活したいのか、夫婦でしっかり考えておく必要があります。
5. まとめにかえて
今回は65歳以上の無職夫婦世帯のお金事情についてお話をしていきました。老後生活では多くの金額を必要とするためコツコツと準備をしていくことが大切ですが、現役時代の収入によって準備する期間は人によって異なります。
まずはご自身の中で目標金額を定め、目標達成するための掛金や準備方法をしっかりと決めましょう。
準備方法にも貯金や資産運用など多くの方法が日本には存在するため、メリット・デメリットを把握した上でしっかりと選択をしていくことが大切でしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」
- 公益社団法人生命保険文化センター「セカンドライフの生活費は現役時代とどう違う?」
- 公益社団法人生命保険文化センター「生活基盤の安定を図る生活設計」
長井 祐人