3. 「死後離婚」届け出の推移
「姻族関係終了届」はどれくらい出されているのでしょうか。法務省の「戸籍統計 統計表」で推移をみることができます。
3.1 「姻族関係終了届」届け出件数の推移
- 1998年度…1629件
- 1999年度…1824件
- 2000年度…1797件
- 2001年度…1834件
- 2002年度…1769件
- 2003年度…1799件
- 2004年度…1793件
- 2005年度…1772件
- 2006年度…1854件
- 2007年度…1832件
- 2008年度…1830件
- 2009年度…1823件
- 2010年度…1911件
- 2011年度…1975件
- 2012年度…2213件
- 2013年度…2167件
- 2014年度…2202件
- 2015年度…2783件
- 2016年度…4032件
- 2017年度…4895件
- 2018年度…4124件
- 2019年度…4344件
- 2020年度…3747件
- 2021年度…3595件
- 2022年度…3780件
1998年以降ゆっくりと増え、2000件前後で推移していましたが、2016年に4000件を突破。2019年の4344件をピークに、その後は3000件台後半で推移しています。
4. 子どもたちの一言に背中を押され「死後離婚」を選択
「姻族関係終了届」の存在を知ったとき、A美さんの心は揺れました。
「義父母たちとの繋がりは、夫の一周忌法要を待たず、今すぐにでも断ち切りたい。でも、相手は子どもたちにとっては大切な祖父母。娘と息子はどう思うだろう…。そして何より、天国の夫が悲しむのではないかしら」
法要で起きた光景をすべて見ていた息子と娘は、「ママの気持ちを一番大事にしたい。天国のパパもきっとそれを望んでいると思うよ」と背中を押してくれたとのこと。こうしてA美さんは義父母との姻族関係に終止符を打つことに決めたのです。
先述のとおり、姻族関係が終了したことが、義実家に知らされることはありませんが、我が子にとっては父方のおじいちゃんおばあちゃん。遠くない将来に「代襲相続」が発生する可能性もある相手です。
そんな義父母と我が子の関係が良好であることを優先し、結果的に「姻族関係終了届」の提出を踏みとどまった人もいるようです。
5. さいごに
ちなみに、姻族関係終了届の届け出者の男女比が分かるデータは公表されていません。
とはいえ、厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」日本人の平均寿命の男女差は約6歳(男性81.05歳・女性87.09歳)。妻の方が年下、もしくは夫婦同年代、といった場合、妻が遺されるケースが多いことが推測されますね。
となると、女性からの届け出の比率が圧倒的に高いということは想像にたやすいことは確かです。
家族のスタイルや夫婦の生き方は、今後ますます多様化していくでしょう。しかし、とりわけシニア世代には「旧来の家族観」を大切にする人も少なくありません。
こうした価値観のギャップが見えたとき、「死後離婚」が脳裏に浮かぶことは、ある意味至極自然な流れなのかもしれません。
その逆もしかり。「わが子亡き後、そのパートナーと親族関係を持つ必要はないだろう」と考える舅姑も、もちろん一定数いるはずです……。
参考資料
- e-GOV法令検索「昭和二十二年司法省令第九十四号 戸籍法施行規則」
- 大阪市「姻族関係終了届」
- 豊中市「各種戸籍届書様式」
- 「姻族」世界大百科事典 コトバンク
- 「死後離婚」知恵蔵miniコトバンク
- 法務省「戸籍統計 統計表」
- 厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
佐橋 ちひろ