2024年2月1日、春闘に向けて労働組合の中央組織・連合と経団連の労使トップ会談が行われました。
働く世代からすると「物価高を上回る賃上げになるのか?」という点は非常に興味をひく話題ですよね。
2024年1月19日、総務省統計局から公表された2023年12月分の「2020年基準 消費者物価指数」は前年同月比で3.0%上昇。
昨今の物価上昇も老後に対する不安要素の一つです。
現役世代の中には、昨今の物価高で生活が厳しいけど、賃上げで生活に余裕がでるかもしれないと淡い期待を抱いている方も少なくないのでは。
しかし、この賃上げに該当しない年金生活者はどうでしょう。昨今は、少ない年金で生活していくのが厳しい高齢者も少なくありません。
なかには「月に20万円以上の年金を受け取っているから生活には困らない」という方も見かけますが、どのくらいの割合いるのでしょうか。
今回は、いま年金を受け取るシニア世代の年金受給状況を見ていきながら、現役世代の老後資金づくりの必要性について考えていきましょう。
1. 厚生年金を「月額20万円」受給する割合をチェック!
日本公的年金制度の2階部分にあたり、将来は「国民年金(老齢基礎年金)」を含む形で支給される厚生年金。そのため、比較的手厚いとされています。
「月額20万円」以上の厚生年金を受給している方はどれぐらいいるのでしょうか。
厚生労働省が公表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金保険(第1号)の年金月額階級別受給権者数を抽出し、割合を算出してみます。
なお、先にご説明したとおり厚生年金には国民年金の金額も含まれます。
1.1 厚生年金:全体/男女別の受給額
- 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
厚生年金の平均年金月額は、男女で約6万円の差が生じています。
これは女性の方が男性に比べて賃金が低いこと、育児や介護などライフイベントで働き方が変わりやすいことなどが理由と考えられます。
女性の労働環境やワークスタイルなどが、こうして老後生活の柱となる年金にも影響するのですね。
女性は結婚や出産などで仕事を離れ、専業主婦になったり、パートや時短になったりする方も多いので、受給できる厚生年金の額が少なくなっていると考えられます。
現在は働く女性が増えたため、現役世代が年金を受給する頃には様子が変わっているかもしれません。ただし、個人差は今後も続くでしょう。
このデータをもとに、男女それぞれで厚生年金をひと月20万円受け取っている人の割合をみていきましょう。
1.2 厚生年金(国民年金を含む):男女全体の受給額分布
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
厚生年金の男女全体の平均受給額(月額)は「14万3973円」です。
ボリュームゾーンは「9万円以上~11万円未満」「17万円以上~18万円未満」でした。俯瞰してみて、個人差が大きいのがわかります。
このように幅広く分布している様子がよくわかります。
厚生年金の受給額(報酬比例部分)は、現役時代の収入や加入期間で決まるため、働き方によって個人差が大きくなります。
男女差は埋まっても、こうした個人差は今後も続いていくでしょう。そのため、平均値だけでなく「自分自身の年金見込額」をしっかり把握することが重要です。