2024年1月に公表された厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によれば、2024年4月分からの年金額は2.7%の増額となります。
増額と聞くと嬉しくもなりますが、2024年度の年金額を決める際の参考指標となる、物価変動率は3.2%。
そこにマクロ経済スライドによるスライド調整などが▲0.4%入り、年金額改定率は+2.7%となっているため、実質的には目減りとなります。
マクロ経済スライドとは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びにもとづいてスライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの。賃金や物価の改定率を調整することで、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。
リタイアして年金生活となれば公的年金に頼りたいところですが、物価高よりも増額率が下がると、年金以外のお金で生活することになるでしょう。
このような環境では、「リタイアしたくてもできない」「できるだけ長く働き続けなければ」と考える方もいるでしょう。
では、リタイアされたご家庭では、どのような貯蓄や年金額、また生活費となっているのでしょうか。気になるリタイア後のシニアのお金事情をみていきます。
1. 【65歳以上・無職の夫婦世帯】貯蓄額の平均はいくら?
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」を参考に、まずは世帯主が65歳以上の貯蓄を見ていきましょう。
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、「世帯主が65歳以上の二人以上世帯」の貯蓄現在高は次のとおりです。
1.1 65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額一覧表(平均・中央値)
- 平均:2414万円
- 貯蓄保有世帯の中央値:1677万円
- 100万円未満:7.8%
- 100~200万円未満:3.4%
- 200~300万円未満:3.2%
- 300~400万円未満:3.5%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~600万円未満:3.5%
- 600~700万円未満:2.8%
- 700~800万円未満:2.6%
- 800~900万円未満:3.4%
- 900~2000万円未満:2.4%
- 1000~1200万円未満:6.1%
- 1200~1400万円未満:4.4%
- 1400~1600万円未満:3.7%
- 1600~1800万円未満:4.2%
- 1800~2000万円未満:3.2%
- 2000~2500万円未満:8.3%
- 2500~3000万円未満:6.3%
- 3000~4000万円未満:10.0%
- 4000万円以上:17.9%
65歳以上の貯蓄は平均2414万円ですが、より実態に近い中央値をみると1677万円まで下がっています。
また、分布を見ると貯蓄500万円未満が約2割となっており、まとまった貯蓄があまり用意できていない世帯が5世帯に1世帯だとわかります。
では、65歳以上・無職世帯の平均貯蓄額を確認しましょう。
65歳以上でリタイアした世帯の平均は2359万円でした。
ただし、先ほどみたように世帯差が大きいため、中央値はこれよりも下がる可能性があります。