2018年2月8日に行われた、株式会社資生堂2017年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料
スピーカー:株式会社資生堂 執行役員常務 最高財務責任者 直川紀夫 氏
株式会社資生堂 執行役員社長 兼 CEO 魚谷雅彦 氏
2017年度 過去最⾼売上・利益を⼤幅更新
直川紀夫氏(以下、直川):あらためてこんにちは。資生堂の直川です。今日は笑顔でお話をしたいと思います。
私から2017年度実績についてご説明をさせていただきます。まずは3ページをご覧ください。
売上は創業以来初めて1兆円の大台を突破し、(2015年度~2020年度の中長期戦略)「VISION 2020」でコミットメントしていた、2020年のターゲットを3年前倒しで達成することができました。
営業利益は昨年の2倍を超え、営業利益率は8パーセントに到達しました。
具体的には、売上高は1兆51億円、外貨前年比はプラス16パーセント。日本事業が3期連続で増収となり、2017年は13.1パーセントの成長と、持続的な成長トレンドに入っていきました。
また当社の強みを生かしたボーダレスマーケティングにより、外貨ベースでは中国がプラス20.1パーセント。トラベルリテールはプラス73.8パーセントと市場伸長を大きく上回り、成長を実現いたしました。
そして戦略どおり、プレステージブランドがグローバルでプラス19パーセントと力強い成長を実現しました。営業利益は804億円、前年差で437億円増となりました。
昨年から大幅増益となった要因は3つです。
投資強化による売上成長と構造改革により、コスト構造が大きく改善しました。
コアブランドの規模が大きく拡大したことで、ブランドごとの収益性が向上しています。
そして最後に、成長軌道に乗った日本・中国・アジア・トラベルリテールを始め、全リージョンで収益性が向上し、増益となったことによります。
親会社株主に帰属する当期純利益は、ご存知のように第3四半期に発表しましたベアエッセンシャル(株式会社)の減損や、ゾートスインターナショナル社の事業売却益の計上などもあり、227億円となりました。
EBITDAは昨年の901億円から656億円増の1,557億円と大幅に増加。有利子負債比率は借入金の返済を進めたことなどから15.4パーセント。有利子負債/EBITDA倍率は0.5倍と一層強固な財務基盤を築くことができました。
2017年度 実績要約
4ページは年間実績の要約になります。こうした好調な実績を受けて、2017年はキャッシュ・フローが大きく好転しました。
キャッシュ・フロー計算書
5ページをご覧ください。営業キャッシュ・フローは、既存事業の成長にともない954億円のプラス。
投資キャッシュ・フローは、ゾートスインターナショナル社の譲渡などにともない、535億円のキャッシュ・イン。中長期の成長に向けたグローバルイノベーションセンターを含む設備投資総額492億円をカバーしました。
その結果、フリー・キャッシュ・フローはプラス943億円と来年以降の工場建設などの投資拡大に向けて、健全な財務基盤を構築できました。
通年で7.5円の増配
この結果を踏まえて、2017年の期末配当については2.5円増配し、15円に見通しをあげます。中間配当時の2.5円の増配と合わせて、2017年は年間で27.5円と2016年から7.5円増配することができました。
成⻑モメンタムの加速
それでは、ここから2017年の詳細説明に入ります。7ページをご覧ください。
2017年は全体で(売上高が)プラス18.2パーセントと大きく成長し、既存事業だけでも898億円の増収。前年比はプラス11パーセントと2桁の成長となりました。
すべての地域で増収 市場成⻑を上回り、シェア拡⼤
次のページは、報告セグメント別売上高増減実績です。各リージョンのカッコ<>内の数字は、市場伸長率になります。ご覧のように、2017年は日本・中国を始め、すべての市場で当社は市場伸長を上回る売上成長を実現し、資生堂グループのブランドシェアは全リージョンで向上しました。
2018年以降も、この成長トレンドを維持拡大していくことが重要だと考えています。
すべての事業で増収 プレステージがコア事業へ
次のページは事業別の売上高増減実績です。ご覧のとおり、すべての事業で増収を達成しました。
とくに、プレステージとフレグランス合算では、前年に対してプラス25パーセントの成長。1,050億円の売上増と飛躍的に拡大しました。まさにプレステージが全社のコア事業として、売上収益の柱に育ってきたと考えています。
全リージョンで増益
10ページは報告セグメント別の営業利益増減実績です。2017年は全リージョンで増益を達成しました。詳細は各リージョンのところでご説明します。
⽇本 +13.1%成⻑ 利益率は18%へ
それでは、まず最初に日本事業です。
売上高は全体で前年比プラス13.1パーセント。この成長を牽引したのはプレステージ事業で前年比プラス35.8パーセントと、飛躍的な成長を遂げ、収益性の向上にも大きく貢献をしました。
その結果、営業利益は832億円、前年比プラス47.6パーセント。利益率は18パーセントまで上がり、2016年から3.9ポイント向上し、過去最高を更新しました。
その要因は、プレステージ事業の成長による原価率の改善。3年間投資をしてきたブランド力が蓄積され、エリクシールなどの主力ブランドのマーケティングROIが向上しました。加えて、課題となっていたパーソナルケア事業も、2桁の営業利益率に改善しました。
店頭売上 第4四半期は+17%成⻑
12ページは店頭売上の四半期ごとの成長率です。
年間では、市場成長率がプラス2パーセントであったのに対し、当社はプラス12パーセントの成長となり、大きくシェアを拡大しました。
ご覧のように、期を追うごとに成長性が高まり、第4四半期はプラス17パーセントとなりました。この成長はインバウンド需要の獲得もありますが、日本のお客さまの愛用者拡大が大きく貢献しています。
インバウンド売上は7月以降、毎月過去最高の売上を更新し、年間では前年比プラス70パーセントの585億円となりました。
一方、日本のお客さまの売上も前年比プラス5パーセントと、しっかりと成長しました。これは主力ブランドが確実に力をつけてきたことに加え、しわ改善新商品が新しい市場を創出し、新規愛用者を拡大するとともに、注力したスキンケア、ベースメイク、サンケアの肌3分野の成長が全体を牽引しました。
中国 +20.1%成⻑ 利益率7.8%
次に、中国事業です。
売上高は1,443億円。現地通貨ベースでプラス20.1パーセント。これはプレステージ事業が前年比プラス58パーセントと全体を牽引し、コスメティクスとほぼ同様の構成比を占めるまで成長しました。
営業利益は77億円増益の113億円。プレステージとECの成長により原価率の低減とROI改善が図られ、収益性が向上し、利益率は1桁後半まで上がってきました。
中国 プレステージの⼤躍進
14ページは、中国の店頭売上のグラフになります。
当社はセルインからセルアウトへ、すべての発想と行動を切り替え、この3年の改革を進めてまいりました。現在は全リージョンで店頭売上のマネージメントを徹底しています。
年間では店頭売上は全体で前年比プラス18パーセントと中国の出荷売上と同様の結果となっています。つまり「VISION2020」がスタートする前のように、店頭在庫が増えるようなことにはなっていません。
中でも、プレステージが前年比プラス70パーセントと全体を牽引しました。店数を大きく増やしていないことから、確実に1店あたりの売上が拡大しています。
コスメティクスはZa(ズィーエー)とピュアマイルドの取扱店数を大幅に絞り込む構造改革を進める一方で、エリクシールやアネッサが売上を拡大し、全体では前年比プラス8パーセントの成長となりました。
そして、昨年リニューアルをしたオプレは第4四半期に成果が出始め、年間では前年比プラス4パーセントとなりました。
アジアパシフィック 2桁成⻑ 2桁利益率達成
続いて、アジアパシフィックです。
売上高は542億円。プラス11.2パーセントの成長と、アジアも2桁の成長を実現しました。営業利益は47億円増益の57億円。営業利益率は2桁の10.3パーセントとなりました。
売上成長による差益増と、韓国での収益性改善が大きく貢献しました。
アジアパシフィック 韓国での⼤躍進
16ページは、アジアの主要な国、地域のプレステージブランドの店頭売上になります。
アジアは先ほど申し上げたように、なんと言っても韓国の成長性拡大がポイントになります。
当社は、NARS、クレ・ド・ポー ボーテ、SHISEIDOが成長し、プレステージの店頭売上前年比がプラス13パーセントとなり、シェアを大きく拡大し、成長軌道に転換しました。その結果、韓国の収益性は大きく改善し、黒字に転換しています。
⽶州 +6.6%成⻑ 収益性改善
続いて、米州です。
売上高はプラス6.6パーセントの1,404億円。構造改革中のベアミネラルの減収をNARSやクレ・ド・ポー ボーテ、そして新たに加わったDolce&Gabbanaや、laura mercierがカバーをし、全体では市場成長率を上回りました。
営業利益は前年より25億円損失減のマイナス103億円。のれん償却前の利益がマイナス25億円と、黒字転換も見えてまいりました。
⽶州 ベアミネラルの再⽣をスタート
18ページは、構造改革中のベアエッセンシャルの店頭売上をECとリテールに分けた前年比のグラフになります。
2017年の前半は、やはりデジタル、SNSを活用する他社ブランドとの競争が激しく、リテールでもECでも大きく前年を下回っていました。
第3四半期には、新製品の導入とともにマーケティングを強化しましたが、若干漸減傾向が緩和したものの期待していた結果には届かず、2018年以降の計画を大きく見直し、その結果、第3四半期に減損を計上することなりました。
第4四半期になり、2017年後半から取り組んできた結果がECを中心に少し出てきており、1桁の前年割れにとどまりました。
現在、デジタルに強い新しいトップのもと、成長性拡大に向けたデジタルの強化と収益性改善に向けた直営店の閉鎖を同時に進めています。
このように市場、そしてビジネスの変化が激しい米州では、新たなビジネスモデル構築に向け、積極的な展開をしていきます。
欧州 +30%成⻑ 収益性改善
次に、欧州です。売上高はプラス30パーセントの1,284億円。店頭売上が好調なNARSに加え、新製品がヒットしたnarciso rodriguezが牽引した既存フレグランスが成長。
加えて、資生堂ブランドが堅調に推移しました。これにより、既存ブランドも前年比プラス7パーセントと、しっかり成長を確保しました。
営業利益は、35億円損失減のマイナス32億円。のれん償却前の利益は15億円の損失にとどまり、こちらも黒字転換が見えてきました。
欧州 Dolce&Gabbana 成⻑への転換
20ページは、欧州最大のブランドであるDolce&Gabbana店頭売上の、エリア別前年比になります。
ご覧のように、第4四半期に大きく成長性を回復することができました。
まだ持続的な成長性拡大まではマーケティング投資の強化が必要ですが、ブランドの再生が完了すれば、確実に収益性を拡大できると考えています。
トラベルリテール 売上・利益 ⾶躍的成⻑
次は、トラベルリテールです。売上高は73.8パーセントの445億円と、大きな成長を続けています。
ブランドではCPB、NARS、アネッサが前年の2倍を超え、エリアでは韓国、中国、タイが大きく伸びました。
各エリアに共通して言えるのが、それぞれ地場の市場での成長率も高く、このトラベルリテールビジネスの成長と地場の成長が確実に連動してきています。
営業利益は、前年比プラス130.3パーセントの124億円。利益率は27.6パーセントと、前年から6ポイント向上しました。
コスト構造を⼤きく改善 持続的な収益性向上へ
最後に、収益性の向上につながったコスト構造の改善についてご説明をします。ポイントは3つです。
1つ目は、原価率の好転。2017年は23パーセントと、1.4パーセント改善しました。この要因は2つあります。
1つは、プレステージブランドの売上構成比が高くなったこと。そしてもう1つが、資生堂ブランドのように、アルティ ミューンのようなブランドをリードするコアアイテムが単品で大きな売上を確保し続け、生産効率が向上したことによります。
2つ目は、人件費率の低減。2017年は23.8パーセントと、1.9パーセント改善しました。これは、売上が大きく拡大する中、店頭および営業そしてバックオフィスの生産性が向上したことによります。
3つ目は、経費比率の低減。2017年は15.4パーセントと、1.8パーセント改善しました。これは原価同様、プレステージブランドの売上構成比が高まったことによる物流費比率の低減や償却費比率の低減によるものです。
これらのコスト低減には、3年間進めてきたコスト構造改革も大きく貢献し、常に生産性や効率性を意識する体質も徐々に浸透してまいりました。
こうした成果により、強化しているマーケティング投資の比率の0.6パーセントの増加や、研究開発投資の比率の0.8パーセントの増加を吸収し、2017年は8パーセントの利益率まで上げることができました。
この結果、「VISION 2020」発表時に計画していたコスト構造よりもはるかに改善し、最初の3年を終えることができました。2018年以降も、成長性と収益性の拡大を同時に追求し、さらなる企業価値の向上に努めてまいりたいと思います。
なお、2018年度の見通しについては、新中期計画を発表する3月5日に、戦略と連動するかたちで公表したいと考えております。私からは以上になります。ありがとうございました。
スピードと成⻑ グローバル経営体制への進化
魚谷雅彦氏(以下、魚谷):みなさん、こんにちは。3年半ぐらい前だったと思います。私がこうやってみなさんの前に立ったときに、「これから資生堂の改革は、スピードを持って進めていきたい。スピードと成長がキーワードです」というお話をした記憶があります。
グローバル化を進めるにあたって、そのようなスピード感のある経営改革を進めてきました。この3年間の振り返りを、少しさせていただきたいと思います。
セルインからセルアウト志向への転換
この3年間の改革を一言で表すとしたら、これ(セルインからセルアウト志向への転換)だと思うんです。セルインで売上を立てるのではなくて、お客さまに向かって店頭で、セルアウトで買っていただき、その結果として、私たちは売上を立てていくということへ、大きな転換をしていくということです。
他の産業ではよく、「プッシュ型からプル型へ」と表現される方もいらっしゃいますけれども、これが重要な考え方でした。したがって、マーケティング等への投資をして、売上を上げること。そして今度は在庫回転を上げ、その結果として、出荷の売上を上げていく。この構造を描いていくことに、取り組んできたわけです。
マーケティング投資の強化
「マーケティング投資では、累計で1,000億円を投資したい」と、3年ほど前に言いました。その結果、各地域とも(投資費用を)使う分には心配がなく、1,100億円ぐらいの累計の投資額になりました。
売上増によるコスト構造の変⾰
「売上を上げることが重要だ」と申し上げましたが、その結果、別に人件費を減らしているわけではありません。経費を絶対額で減らしているわけではありませんけれども、当然、パーセンテージとしては下がっていくということです。この(スライドのグラフの)姿です。
これも3年ぐらい前に、初めて欧米の投資家・株主の方々のところを回ったときに、「資生堂のPLを見ると、人件費が非常に高い。早くリストラをやるべきだ」という雰囲気の方も、けっこういました。
そこで私は、「これまでの資生堂の状況を考えたときに、そう(リストラをする)ではなくトップラインを上げていく。そして、その(人件費の)比率を下げていって、オペレーティングマージンを高めるという構図なんだ」と言ってきました。
先ほど直川からもご説明があったとおり、2014年と2017年の比較をさせていただきますと、このような(グラフの)かたちです。経費が下がり、マーケティングコストは伸びています。ただ、全体のバーの大きさは、もうちょっと違うわけですから、最終的なボトムラインは、(2017年で)まだ8パーセントですけれども、高くなってきています。
3年間の改⾰は成果へ
この数年間の売上の伸長度を図にしてみますと、このようなかたちになります。成長率も(2015年で)4パーセント、(2016年で)5パーセントです。そして、(2017年で)既存ベースで11パーセントです。買収のブランドを入れると16パーセントとなり、伸びてまいりました。これは、為替影響を抜いた後です。
2020年に目標にしていた「売上高で1兆円」という目標を、うれしいことに、3年前倒しで達成することができました。当初(目標を)発表したときには、「2017年の営業利益の目標は、500億円から600億円の間としています」とお話をしておりましたが、800億円に達することができました。
3パーセントから5パーセントだった平均成長率を、9パーセントに上げることができました。この結果については、これからのさらなる成長に向かって、たいへん良いスタートを切れたのではないかなと思っております。
2017年 全地域が成⻑を牽引
先ほどもご説明しましたが、2017年は、全地域(の売上高)が伸びました。これは、非常にうれしいことです。アメリカも、たいへん厳しい市場環境の中でも、7パーセント近く伸びました。その他の地域も、こちらのスライドのように伸びています。
「世界で勝つ」 グローバルマトリクス体制
この(売上高の伸長の)1つの要素は、「世界で勝つ」ためにということで、2年前から導入した、グローバルマトリクス型の組織体制です。これが2年経って、しっかりと機能し始めてきたという印象を持っています。私を含めた7人の地域CEOで、一緒にやっています。
日本人が3人で、フランス人が4人いるという人材構成です。各地域のこのような人たちに、自分の地域の収益へ、責任をもってもらいます。その代わりに私からは、とにかく権限委譲をします、信頼しています。(だから)しっかりと改革を進めてほしい。そのようなやり方で、進めてまいりました。
最先端の情報と研究を 全社、全エリアで活⽤
グローバルマトリクス体制の、もう1つの重要なポイントは、「Centers of Excellence」という考え方を導入したことです。それぞれの地域に専門家がいて、地域の特性やノウハウがあるのなら、それを大いに、グローバルのために活用しようということです。デジタルやメーキャップは、やはりニューヨークに拠点を置こうということです。
この人たちは、世界のための調査・開発をやっています。日本はスキンケア、ヨーロッパはフレグランスです。今年はいよいよ、このCenters of Excellenceのメーキャップから、大型の新製品が出てきます。同時に、開発を一緒にやっていくということで、R&Dのセンターも、各地域に充実させていきます。
プレステージファースト戦略
私たちがこの3年間に取り組んできた戦略的視点で言うと、最も優先順位が高かったものは、この「プレステージファースト戦略」です。ご存じのとおり資生堂は、他の企業と違って、プレステージ領域の事業構成を持っています。中低価格帯等も持っています。日本では、このような戦略になっています。
これがなかなか、こちら(一方)に力を入れると、「いや、こちら(もう一方)はあまり、優先順位が高くない」というように、社内でもこのような選択と集中については、非常に議論があるわけです。けれども、今回は明快に「グローバル(マトリクス体制)には、プレステージだ」と打ち出しました。これが極めて明快な戦略であることを、欧米の人たちがはっきりと(理解)したということで、非常にやりやすくなってきました。
プレステージ領域で成⻑加速
実は、この3年間のインクリメンタルセールス、純増分を領域別に見てみると、このようになります。1つのグッドニュースとしては、プレステージ・フレグランス・コスメティクス・パーソナルケア・プロフェッショナルも、3年間で全部純増となりました。その構成比で言うと、プレステージの化粧品が64パーセントとなり、3年間で16
パーセント伸びたということです。
そしてフレグランスは、Dolce&Gabbana(の牽引)があり、15パーセントとなりました。79パーセントの純増のうち(牽引したものは)このプレステージ領域のビジネスです。まさに、プレステージファーストという戦略がワークしたと、言えるのではないかと思います。もちろん、コスメティクスやパーソナルケア領域も、純増しています。構成比は、(プレステージに比べると)少し下がっていますけれども。
プレステージ+フレグランス売上1.5倍 売上構成⽐50%超まで拡⼤
それ(売上構成比)を、2014年と2017年で比較してみます。みなさんも見ていただくとおわかりのように、(2014年は)プレステージが34パーセント、フレグランスが9パーセントでした。今現在(2017年)は、(プレステージの42パーセントとフレグランスの11パーセントを足した)53パーセントが、このプレステージ領域と呼ばれるものになりました。(売上構成比の)過半数を超えたということです。何度も言いますけれども、その他の事業も、全部伸びています。
今日は(このグラフの)「その他」の事業を担当している人たちも(会場の)後ろにいるので、ちゃんと言っておかないとだめだと思うんですけれども(笑)。
(会場笑)
魚谷:全部の事業が伸びています。ただ、(2014年と比べると)構成比はちょっと下がりました(笑)。
(会場笑)
魚谷:これが、先ほどご説明したように、収益性の増加にもつながったということです。
SHISEIDO
ブランド別で見ると、プレステージブランドの(成長の)中で非常にうれしいことは、会社の名前を冠している、「SHISEIDO」というブランドです。これが、以前はあまり伸びていませんでした。この3年間、このブランドを活性化しようとしてきた結果として、3年間で平均15パーセント(CAGR)で、(2017年度の売上高は)1,300億円を上回っています。おそらく、日本のこのようなラグジュアリーブランド系の商品で、世界に出ていっている商品では、最大の規模ではないかなと思います。
clé de Peau Beauté
もう1つは、「clé de Peau Beauté」です。3年間で、平均して33パーセント伸長しました。この改革をスタートしたとき(2014年度)は、売上高が400億円でした。昨年(2017年度)は、1,000億円を超えました。非常に収益性も高いということから、大きくグループに貢献しました。
買収・ライセンス取得
プレステージ領域で、同時に2つのブランドとライセンスを取得しました。ご存じのとおり、「laura mercier」というメーキャップブランドを、アメリカで買収しました。これは、2014年から比較すると約190億円の増加になりました。そして、「Dolce&Gabbana」です。大半がフレグランスで、約500億円の増加になりました。
譲渡・撤退による選択と集中
買収ばかりではありません。断腸の思いを持って、いくつかの事業については、撤退をすると……私たちよりもしっかりと(事業を)育てられる企業に、譲渡することも進めてまいりました。昨年ですと、非常に影響の大きかったZotosのことは、みなさんも御存じのとおりです。バーバリー社とのディストリビューションの契約も、12月末をもって終了しました。
⽇本 本社と販社を⼀体化、⼀気通貫を実現
地域ごとに、少し語っていきたいと思います。まずは、日本です。一言で言いますと、お客さまに向かったセルアウトの事業を強化しようと思ったときに、(まずは)中の組織やプロセスを、もっと充実させなければなりません。「本社があり、販社がある」という仕組みを変えようということで、88年間続いた販社制度を止めて、1つの組織にドッキングしました。これは、非常に大きな改革です。
いわゆる一気通貫で、お客さまに向かう事業ができる体制を作りました。かたちだけではありません。実は、物理的に、マーケティングの人たちと営業の人たちの席を隣にして、一緒に座るということを行いました。チームワークができ、一体感ができ、情報が早く入るというかたちになり、スピードが上がりました。
シェアを落とし続けた ⽇本事業が⼀転上昇へ
日本事業は、ここ(グラフの灰色の時期)にありますように、大変厳しい状況が続いていました。しかし、この3年間で、みんなもそのようなかたちで、がんばってくれました。まさにV字で、こういうふうに(折れ線グラフの2015年~2017年の部分)、回復してまいりました。
当初(の計画は)3パーセントでした。これは、日本の市場が1パーセントくらいの伸びの時期でした。「なんとか3パーセントくらいがんばってもらって、シェアを上げていきたい」と思っていましたが、結果として、CAGRの8パーセントの成長を達成できました。
ブランドマネジメント、 ブランド志向営業体制
他にも、2015年の秋から、日本事業でブランドマネジメント制を導入したというのも、(日本事業の上昇の)大きな要素です。ブランドマネージャーと呼ばれる人は、商品開発から店頭でお客さまにそのブランドが手に渡るまで、すべてを管理します。また、損益も見ます。このような仕組みにしました。そしてもう一方で、営業サイドがお店に販売したり、消費者の方に販売していくにあたって、ブランド別に数字を管理していなければ、それ(ブランドマネジメント)はできません。
以前はそれができていなかったことが、非常に重要な課題でした。今はそれを変えて、営業のみんなは、「お店からお客さまに、どのブランドがどれだけ販売されるべきか」という計画をちゃんと持って、動くようになりました。
最近も、このマーケティングのブランドマネージャーや営業担当の人たちと話をする機会がありますが、私は「すごく進歩したな」と思うことが、非常にあります。
ブランドマネージャーが、本当に自分たちの責任の数字をしっかりと捉えていて、「どれだけ、売上と営業利益を高めていくのか」という施策を、ちゃんと考えるようになりました。営業の人が、「私の担当地域で、どのようなお客さんにどのようなブランド価値を作っていくかを考えるのは、私の仕事です」と言ってくれるように、変わってきました。すごく大きな変化と進歩がありました。
戦う集団へ ⽣活者起点を徹底
もう1つは、先ほどお話ししたように、(日本事業が)低迷していた時期が、残念ながら何年かありました。実は、私が最初にスタートしたときに、印象的なことがあったんです。入社して数年の、ある20代後半ぐらいの女性の営業社員が、「私は入社以来、一度も計画を達成していません。負けてばかりです。悔しいです」と言っていたんです。そのことから、「戦うんだ」「みんなで、市場で勝とうよ」と(話し合ってきました)。別に、戦争するわけではないですけどね。
ある意味で、ビジネスはやはり自分との戦いであり、競合との戦いだということです。戦う集団ですね。お客さまに対して、我々のサービスを最大限にして喜んでいただいて、結果として勝てる集団になろう。そのようなことを、みんなでよく話し合ってきました。(仕事に)前向きに取り組む人たちが、非常に増えてきました。
「肌3分野」で勝つ
「『肌3分野』で勝つ」。これは2017年の初めから、新社長の杉山(繁和氏)が打ち出したことです。日本のポートフォリオは非常に多いので、「あれもこれも」とお金をかけて、今までやってきました。ただ、(事業の)選択と集中をしようということで、ここにあるように、肌関係のスキンケア・ベースメイク・サンケアの3分野は、実は非常に、収益性が高いです。
ここに(事業を)集中することによって利益を生み、そしてカラーのメーキャップなどに次は支援していくように、まずはここ(肌3分野)を先にやるんだということです。これは、非常によく浸透しています。今、日本事業の2万人くらいの社員に聞くと、全員がこのことを言います。「(まずは)『肌3分野』です」と。そのことが、「肌3分野」と呼ばれる領域でのシェアを、大きく上げていることにつながっていると思います。
500億円ブランドへ成⻑
ブランド的に見ると、その中の最たるものは「エリクシール」です。2014年から、新しい「エリクシール」の展開を始めました。この発表会に、アナリストのみなさまもお見えになっていたと思いますけど、(そこで)私は「2020年には(売上高を)500億円にします」と言いました。それで、後で怒られました。「そんなこと、勝手に言っちゃだめです」と(笑)。
(会場笑)
魚谷:ちょっと、大きく言い過ぎたということがあったのですが。なんと、去年は(売上高が)500億円を超えました。2020年どころか(2017年です)。よくがんばってくれました。14パーセントの平均成長で、伸びました。化粧水や乳液(の売上)が伸びるということは、非常に重要なことなんです。約5割が、化粧水・乳液の売上です。収益性が極めて高いです。
表情プロジェクト 新市場の創出と⽣活者接点拡⼤
昨年度は同時に、このリンクルクリームを「エリクシール」から6月に導入しました。「SHISEIDOバイタルパーフェクション」を合わせて、約170万本販売しました。
これには、いろいろな大きなチャレンジがありました。「エリクシールは、ドラッグストア(で売っているもの)でしょ?」と(聞かれましたが、)「いやいや、もしやっていただけるのであればぜひ」ということで、化粧品の専門店でも、デパートでも展開しました。
また、エリクシールは2月に(厚生労働省から「シワ改善効果」の)認可が取れて、6月にスタートしました。広告やイベントなど、すべての準備を4ヶ月で完了したということで、本当にスピードを持って取り組めたということも、大きな要素です。
ベースメイクシェアNo.1へ
マキアージュのベースメイクです。こちらの非常にうれしいニュースは、ベースメイクに集中したことによって、昨年シェアがトップになりました。やはり明快に集中するものを決めて、みんなで力を合わせると、このような結果をもたらせるという、大きな自信にもつながっています。
ブランド×チャネル改革 過去の因習を打ち破る
ご承知のとおり、日本の化粧品業界は、ブランドとチャネルで固定化されています。化粧品専門店ではこのブランドを売りますと。一部デパートで重複しているところもありますけれども、とくに当社は、歴史上、そのようなかたちになっておりました。(そこで)契約を改定して、お客さまが求められるところであれば、そのブランドをもっと開放的にしようと。
例えば、このSHISEIDOというブランドは、先ほど言いましたように、会社の名前を冠しているブランドです。なのに、250ヵ所のデパートだけでしか売らない。このブランドの日本での売上はヨーロッパよりも低い。「これはおかしいだろう」という話をずっとしていたのですが、昨年から化粧品専門店、コスメなどいろいろなところで展開を始めていて、デパート以外の新しい売り場を75ヵ所つくって、今、お客さまとの接点が増えています。
またクレ・ド・ポー ボーテは、ラグジュアリープレステージ、スーパープレステージでのブランド力を発揮するために、直営店の展開を始めました。GINZA SIX(ギンザシックス)にも、表参道ヒルズにも展開しております。このように、今までにないような発想をすることも非常に大事なことです。
デジタル・Eコマース強化
同時に、watashi+や外部ECを含めて全部入れると、資生堂のEコマースは、化粧品市場の中でシェアNo.1になったと考えております。
インバウンド需要を大きく獲得
インバウンド売上は、先ほどの話にあったとおり、インバウンド需要で585億円を獲得いたしました。かなり個数制限などをしているのは、ご存知のとおりなのですが、このようなかたちで買っていただいています。
ボーダレスマーケティングが機能
こちらの背景には、私たちの会社の競争優位があると考えています。それは30年来中国で事業をしていること。TR(トラベルリテール)事業を強化していること。今、この3つ(日本、中国、トラベルリテール)をどんどん連動させようとしています。ボーダレスマーケティングです。
同じような商品を、同じときにプロモーションをする。広告等のプロモーションも同じようなコンセプトでやるということで、お客さまがどこに行っても、空港の免税店に寄って、日本に来ても、中国に帰っても、同じように我々が接点をつくるということを強化しています。
パーソナルケア事業の収益性改善
パーソナルケア事業にも少し触れておきたいと思います。2016年は少し苦労しました。いろいろな問題がありましたが、2017年度に選択と集中をし、新しいマネジメントチームが経費管理の徹底をやってくれたおかげで、売上が約7パーセント伸びて、営業利益率は10パーセントを超えました。2桁を達成することができました。
日本 次期3カ年に向けて高い収益力を維持・拡大
日本では、この収益力を維持しながら拡大をしていくことが重要だと考えております。
中国 本社主導から地域主導へ
中国は3年前、日本の東京にあった中国事業部という約100名の部門を解消しました。そして現地化を図るということで、上海と北京に機能を移管して、R&D機能もつくって、現地の人材も獲得してまいりました。
成長ポテンシャルの高いプレステージとEコマースに大胆なマーケティング投資
その結果もあって、プレステージもEコマースも大きく伸びました。
新たな成長可能性 IPSA、NARS
あとはプレステージの領域で、IPSA(売上)は(2014-2017年)3年の平均を取ると、66パーセント伸びているという状況です。NARSは昨年度に4店舗(中国本土に)出店しました。ものすごくいいスタートで、想定以上の売上になっています。
Eコマースの拡大 戦略的パートナーシップ
Eコマースについては、ジャック・マーさんにも会って、「資生堂と一緒にパートナーシップでやってくれないか」という話をして、快諾を得て、取り組みを強化してまいりました。
もちろんそれ以外のEコマースサイトともしっかりとパートナーシップをつくってやってきた結果、このように(EC比率が)大きく伸びました。中国の売上の中で、(EC比率が)26パーセントくらいの構成になっています。この(成長)曲線でいけば、2020年にはおそらく4割くらいまではいくのではないかなと想定しています。
課題のコスメティクス事業 収益性改善に向け着実に対応
収益性に課題のあった、AUPRESやZa、PURE&MILDという、コスメティクスのブランドについても、昨年度に大胆な改革をやりました。リブランディングをし、8月に新しいマネジメントが行き、デジタルマーケティング投資を強化したというところから、売上が年間でプラス5パーセント売れるというところまできました。
Za、PURE&MILDについては、取引制度を大胆に改定し、セルフ販売へ移行しました。そして固定費の削減。このブランドは残念ながら、ずっと大幅な赤字でした。おそらく18年から19年は、黒字化に向かえるという自信を持っております。
香港 高い収益性と成長を持続
あと中国で1つ触れておきたいのは香港です。市場が小さい中で、300億円の売上・49億円の営業利益を達成して、ずっと右肩上がりで、去年は売上を27パーセント伸ばしております。
香港のチームでは、2015年に、プレステージ領域に非常に強い方に社長に入っていただきましたけれども、そのような意味でプレステージ事業が非常に伸びていて、収益力が上がっているということです。
中国 次期3カ年に向けて収益性が大幅に改善・伸長
ご覧のとおり、中国もまだ7.8パーセントの営業利益率です。中国の担当に「この線でいったら、2020年には25パーセントくらいいくな」と言っていて、少しプレッシャーが強すぎることにもなるのですが、中国市場は売上もマーケットも伸びていることは事実です。その中で売上を伸ばしていって、プレステージが伸びていくと、2桁の営業利益率は十分可能であると思います。
アジアパシフィック ゼロベースから地域本社設置
アジアパシフィックはゼロベースから地域本社を設置しています。本社機能を移管して、現地の人材も獲得しています。今、73名の組織ができております。
ジャパンブランド強化
やはりアジアはジャパンブランドの価値を非常に高く見ていただいていますので、プレステージも伸びていますけれども、コスメティクス&パーソナルケアの分野も可能性が十分高いのではないかなと思っております。
韓国事業のシェア拡大・黒字化
先ほど韓国の話がありましたが、20年来ずっと赤字でした。こちらもいくつかの(成長)要因がありますけれども、1つの大きな要因は、韓国の業界に非常に詳しい方に、2015年に社長として来ていただきました。それ以来、とくにデパート等を中心にプレステージが伸びて、(2017年には)売上が100億円を超えて、7億円の営業利益が出せるところまできました。
米州 人材・組織の強化
アメリカは組織の統合・強化が非常に大きな要素です。専門性の高い人たちにもたくさん入ってもらって、今までバラバラだった組織を1つに集めました。
ここには、アメリカのマネジメントが17名います。この内の11名は過去2年間にヘッドハンティングした人たちです。同時にシェアードサービス化するということで、かなりバックオフィスのコストを落とすということも、組織統合の中でやってきました。
bareMinerals 構造改革により再スタート
bareMinerals(ベアミネラル)については、減損損失を計上するという残念なことになりましたけれども、逆にこれを機会としてとらえて、しっかりと再生を図っていきたいと。100店規模の北米直営店を閉鎖していきますので、しっかりと収益が出せる事業として、これから強化していきます。
メイクアップブランド強化 laura mercier取得
laura mercier(ローラ メルシエ)も全世界にゲストユーザーがたくさんあったのですが、こちらの再交渉が終わり、資生堂の各地域の事業会社がほぼ取り込むことになりました。これから製品など、全部マーケティングを刷新して取り組んでいきます。2019年になろうかと思いますけれども、そういった展開を進めていきます。
デジタルのプロフェッショナルが集結
デジタルはこのようなかたちです。
可能性を広げる 最先端のテクノロジー・人材獲得
それからアメリカでは、今後を考えたときに、みなさんもご存知のとおり、非常に大きな構造変化が起こっています。
ボントン・ストアズという非常に大きな270店舗あるデパートも、一昨日、チャプター11の手続きを取ったという、残念なニュースが聞こえてきている中で、今までのデパートを中心とする事業も小売店の事業も大事なのですが、消費者とダイレクトの接点を持つ事業の構造をつくっていくということで、今、モデル構築をしていこうとしています。
新規の事業として、1月にOlivoLabsの「Second Skin(セカンドスキン)」および関連事業に関する資産譲渡を受けました。
これは従来の化粧品と最近非常に盛んになってきているメディカルな領域といいますか、これの中間のような領域を新たにつくっていきたいと。
ビューティーサイエンスの領域ということですが言いますか、そういったものの大きなきっかけになるのではないかなと思っております。
米州 次期3カ年に向けて
アメリカは、このとおり(の状況)です。この103億円という大きな損失には、のれんには、無形資産の減価償却費が入っています。そのような意味では、今後これがなくなってくるということで、1つの重荷が外れます。
そのような意味では、着実なベアミネラルのマーケティング構造ができていると。そういった体制ができれば、明らかに黒字になっていくということを、目指してまいりたいと思っております。
欧州 化粧品とフレグランスの組織統合
ヨーロッパについて言いますと、化粧品とフレグランスの組織が、まったく違うということでした。まるで、まったく別の方向に歩いているようなものでした。(それを)2016年から、思い切って統合しました。パリの本社も、各地域にある子会社も全部統合して、1国1社で、社長が1人・CFOが1人というように、再統合しました。
8社全部が統合できました。最後にイギリスが残っていましたが、これはほぼ完了しました。中東では、昨年(2017年)8月に統合会社を設立しました。シェアードサービス化をして、固定費を下げるという、物流システムの統合も進んでまいりました。
この1月から、元シャネルにいたフランク・マリリーという人が、新しいCEOとして就任いたしました。こちらは、先ほど言ったとおりです。これは本当に難しい統合でした。
Dolce&Gabbanaについては、私たちだけではなく、関係する会社が4社のディールとなりました。当初は、自社での生産性……サプライチェーンが追い付かずに、先ほどもお話ししたとおり、一昨年から昨年末まで、長い間ずっと「商品が足りない」という状況で、アメリカもヨーロッパも、非常に苦労しました。ようやくサプライチェーンが機能し始めて、第4四半期は前年同期比プラス15パーセントの店頭売上というかたちになってきました。
欧州 次期3カ年に向けて
欧州については、もう、ほぼ黒字化に近づいています。これからが、期待できると思います。
トラベルリテール 本社機能をアジアへ
トラベルリテールについて、昨年を振り返りますと、アジアを拠点にしようと、シンガポールに本社機能を移したということです。トラベルリテールというものは、すごく特殊なビジネスですから、(トラベルリテールビジネスの)経験者たちを集めて、組織を作ったということです。
積極投資による成長性拡大
その結果、445億円ほどまで、(トラベルリテールの)売上は上がっていきました。平均で、50パーセントの伸びです。2020年に向かっても、まだまだ拡大の余地はあると考えています。
この領域は空港を中心として、免税コーナーの権利を持っているオペレーターという会社が、世界にたくさんあります。そういうところとの、信頼関係があります。資生堂に対する期待が、ものすごく大きいんです。
とくにD&Gは、こういうオペレーターの方が太陽のようだと。これからも、さらなる成長を続けていきます。
投資原資を捻出 あらゆるコストを見直す
あと今、1,100億円超のマーケティング投資(費用)を、ただ使うだけではなく、「世界中にある無駄とは何か?」という(見直しによって)効率化を図り、累計で633億円の資金捻出を実現しました。
人の力が成長を牽引
ただ、そういった投資の話だけではなく……今日もう少しお時間をいただいて、みなさまにお話ししたいと思います。この3年間の回復・トランスフォーメーションを実現したの(要因)は、人です。資生堂の社員たちです。ちょっと、その話をさせていただきたいと思います。
6.5万人との対話 現場の声がさまざまな形に
私自身もそれを実現したいと思って、この3年間で累計6.5万人との対話をしました。やっぱり、現場(の人)はみんな、よくわかっているんです。「もっとお客さまにこういうことをしたいけれど、なかなか実現できない」「(現場で)このようなことがあった」とか。
それを例えば、右側にあるように、「口紅に名入れができたら、お客さまのギフトの需要になる」とか。また、(資料の)いちばん下にあるものが、この(2018年)2月から発売している「ピコ」シリーズという、小さくてギフトにも使える資生堂ブランドの口紅です。こちらが今すごく人気で、店頭でよく売れています。20代の人が、資生堂ブランドにいっぱい来てくれているんです。
このようなアイディアを、現場ではみんなが持っているんです。それを、私たちがどれだけ聞いて、実現できるか。どのような会社になるのかということを、進めてきました。
「People First」 人材成長投資
その(実現の)ために、「People First」……人材の成長に投資をするということを、昨年から進めております。トレーニング(の強化)や、留学制度も復活しました。留学制度で海外に行った人が(会社を)辞めてしまうということが……実は、私もそうなのですけれども(笑)。
(会場笑)
魚谷:そのようなことがあって、資生堂では長らく(留学制度を)止めていたのですけれども、復活しました。一切、「お金を返してくれ」とは言いません。今は、7人が留学しています。
あとは、英語の公用語化です。これはけっこう、大きな話題にもなったのですけれども。なんとみなさん、1,700人の社員が、英語スクールに行って英語を勉強しているんです。そのように、人が成長する環境を作ることこそ(大切です)。今この瞬間の売上や利益がよくなった(から、満足する)というのではなく、これから先を維持していくためには、人への投資が、重要だと思います。
数々の賞を受賞
おかげで、(社員が)いろいろな賞をたくさん獲ってくれました。IFSCC大会の賞も、また獲ってくれました。
女性のパワーあふれる会社
あと、女性のパワーを大いに活用したい。こういう会社ですから、当然そのような思いがあります。女性の管理職の比率が、このように上がってきました。日本でも(2017年には)30パーセントとなりました。
あと、GPIFなんかが重要視されているMSCIでも、女性活躍指数(WIN)が、資生堂がなんとNo.1になりました。
ダイバーシティ
アメリカの女性のリーダーが、産業に貢献したということで、1年間取り上げてもらえる賞があるんです。すごく名誉な賞なのですが、これをナーズの社長のバーバラ・カルカグニという人が、獲得させていただきました。
ボトムアップの経営改革
あともう1つ、こういう機会なのでぜひお話しさせていただきたいことが、ボトムアップの経営改革ですね。私たちのビジネスはいわゆるBtoCで、多くのお客さまと接点を持っています。私が経営者として、いろいろなことをなんだかんだと言っても、それには限界があります。
お客さまと接点を持っている社員の人たちが、どれだけ真剣になって、お客さまのために……結果として、会社のために活動してくれるか。「動かない資生堂」と言われていたのが、「動け、資生堂。」というタイトルで、活動してきました。
(活動の)1つ目は、「(社員)一丸で、みんなでやろう」「役員も、役員室にいたらだめだよ」「みんな、現場に出よう」「研究所の人ももっとマーケットに行って、営業の人と一緒に仕事をしよう」ということで、(プロジェクトを)「ICHIGAN(イチガン)」という名前にしました。
2つ目は、「失敗しても、いいじゃないか」「トライ&エラーして、もう1回トライする。失敗なくして成功はありません」と。(トライ&エラー&トライの頭文字をとって)「TET」という活動をしています。
そして3つ目は、「ワクワク大作戦」です。どこかの駅伝の監督もよく言っている言葉なのですけれども、「自分たちがワクワクしなければ、お客さまがワクワクしてくれるわけないでしょう」ということです。
今回のように、非常に業績がよくなったときには、些少ですけれども、社員に「ワクワクボーナス」というものを、(正社員だけではなく)契約社員の方にも、一律に出しています。今回も出します。
ワクワクカード
もう1つ、褒めることが大事だと思うんですよね。「ワクワクカード」というものを作りました(笑)。「何かいいことがあったら、サインして配ろう」ということで、やっています。これは、ちょっと社長の特権で、僕が金色で、役員は赤色。あと、(赤色を)5枚もらうと、金色が1枚もらえるということで(笑)。
とにかく、「いいことがあったら、みんなで褒めよう」ということです。実は、僕はこれを、ディズニーランドから学んだんです。
これからの成長をより確かなものに
まとめになりますけれども……そうは言いながらも、我々はまだまだです。「世界で勝てる会社になりたい」という目標に対しては、まだまだ到達していません。
今後も継続強化していくのは、この(スライドの)左側にあるものです。今までに、申し上げてきたようなことです。
(スライドの右側にある)解決しなければならない、目の前にある課題は、(まず)供給体制の整備です。品切れが起こっています。これを早く、短期的・中期的・長期的に解決していくこと。
それからアメリカは、収益改善です。とくに、ベアミネラル(の再生)ですね。
ヨーロッパは、フレグランスブランド(のポートフォリオ)を強化して、収益を改善していくと。これも、絶対にやります。
3年前に、「『VISION 2020』は、こういう計画です」と話したときに、社員の多くも「本当にできるんだろうか?」と苦悩しました。(今では)「やればできる」と、みんな思い始めています。
「自信を持とう」と言っています。「でも、自信が過信になってはいけないよ」ということで、(スライドの)下に書いていますけれども、「HUMBLE CONFIDENCE」です。我々には、解決しなければならない課題が、まだまだあります。到達しなければならない目標が、まだまだあります。
成長モメンタムを継続
2020年に向けた計画は、3月5日に「3カ年計画」ということで、お話しさせてください。ただ、前からずっと申し上げているように、成長速度を加速して、世界と戦っていける(企業になる)。十分に再投資ができるような、(2020年に)営業利益率が10パーセントを超えることを1つの指標としていきます。
私も、各リージョン、ブランドのトップも含めたみんなが、(2020年に営業利益率が10パーセントを超えることを)自分たちの目標として、計画を実行していきます。このようなお話を、また3月にさせていただければと思います。
Be a Global Winner with Our Heritage
「世界で勝てる日本発の会社(グローバルビューティーカンパニー)」として、これからも取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。