「親が高齢になり、介護が必要になってきた」「親の介護資金は月々の年金で足りるのだろうか」「私が援助する必要あるの?」
こんな悩みや疑問を抱えていらっしゃる方は少なくないはず。
内閣府の「令和4年高齢者の健康に関する調査結果」によると、65歳以上男女の約9割が、介護が必要となった際、年金や貯蓄など自分の資産から介護費用を捻出するつもりだと回答しています。
しかし、実際問題として、本当に年金で介護費用をまかなうことはできるのでしょうか。
本記事はデータを用いながら、介護・医療にかかる費用と年金の関係を考えていきます。
年金暮らし・末期ガンの父を介護した経験がある聡子さん(仮名・48歳)が、介護のお金について「事前に知っておきたかった!」と感じる点にスポットをあてて、生々しいエピソードをまじえながら話してくれました。
1. 【事前に知っておきたかったこと1】介護費用を年金で賄うことは難しい!
聡子さんが「事前に知っておきたかったこと」の1つめは、介護費用は年金で賄うことは難しいということでした
まず、シニア世代ををとりまくお金の状況を整理しましょう。
1.1 【年金・貯蓄の一覧表】親世代の年金&貯蓄額「平均や中央値を知っていますか?」
今のシニア世代が受け取る公的年金の平均月額や、金融資産の平均・中央値は以下の通りです。
1.2 国民年金(老齢基礎年金)の受給額
〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
1.3 厚生年金(老齢厚生年金)の受給額※国民年金の金額を含む
〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
1.4 70歳代世帯の金融資産保有額
- <二人以上世帯>平均1906万円・中央値800万円
- <単身世帯>平均1433万円・中央値485万円
1.5 介護にかかる費用の目安
一方で介護費用は、介護保険を適用した後の実費負担分であっても、以下の金額が平均してかかります(各種資料をもとに筆者調査)。
- 在宅介護 平均月額:約5万円
- 介護付き有料老人ホーム 平均月額:約24万円
- 住宅型有料老人ホーム 平均月額:約14万円
- サービス付き高齢者向け住宅 平均月額:約16万円
- グループホーム 平均月額:約13万円
- ケアハウス 平均月額:約11万円
仮に約14万円の年金で生活している親であっても、一番負担の少ない在宅介護でさえ、決して費用の負担感は軽くないでしょう。介護費以外にも日常生活費などの出費がかかるわけですから。
また、在宅介護であればなんとか年金でまかなえるにしても、施設に入所した際はほとんどの場合、年金をオーバーすることが確実であることも分かります。
年金でまかなうことが難しい場合は、親が自分たちの貯蓄を切り崩していくことになるでしょう。
しかし親の貯蓄が少ない場合や、施設入所期間が長く貯蓄が足りない場合は、子供が援助するなどの手段を取ることにもなりかねません。