名古屋の交通事故日本一伝説は、取り締まりの厳しさが理由だった?

名古屋には、いくつかの日本一伝説があります。まずは、交通事故死者数。昨年度は200人にのぼり、15年連続で日本一です(愛知県)。道路が広いのでスピードが出やすいこと、自動車保有台数※が埼玉県や東京都を上回り全国一多いことなどが原因だと言われています(※財団法人自動車検査登録情報協会資料)。

この数字が、横入りなどの「名古屋走り」という言葉を生み、乱暴な運転者の多い街というイメージがあることは否めません。しかし10万人当たりで見ると、39位。人口に比して考えると交通事故死亡者数は決して多いとはいえません。

言うまでもなく交通取り締まりの運用基準は、都道府県ごとに異なります。全国の交通担当の警察官に尋ねてみると、「日本一基準が厳しいのは名古屋」だという声をよく聞きます。交通事故にかぎらず、事実はデータに表れないところにあるのかもしれません。

名古屋の派手婚日本一伝説は、挙式の後に実感する?

いきなり不祝儀の話題で始まりましたので、気分を変えて祝儀の代表である婚礼に移ります。名古屋の婚礼の華やかさはよく知られていますが、事実でしょうか。

経済産業省が公表している平成27年の特定産業実態調査(調査対象期間は平成26年)では、挙式の年間売上額と件数が発表されます。売上額を件数で割った数字、つまり挙式1件当たりの全国平均は3,036,558円で、愛知県は3,141,015円になっています。全国平均は上回っているものの、20位です。決して日本一の派手婚ではありませんでした。

婚礼は、挙式だけではありません。名古屋圏には嫁入り道具をガラス張りのトラックに載せて近所に見せて歩く風習があるなど、高額になりがちです。ただし現代は他地区と同じように地味婚の傾向が浸透しているようではあります。

ただ、問題は結婚後。名古屋圏の人は持ち家志向が強く、そのために新婚早々から倹約・貯蓄をせがまれるという話を耳にしたことがあります。これも交通取り締まりと同じで、データはありませんが。

名古屋の地下街日本一伝説は、幻だった?

三つ目の伝説は、日本一の地下街です。第一の疑問は、地下街の何が日本一かということです。広さについては、①東京新宿駅に次いで2位(栄駅)とするもの、②大阪梅田が1位で名古屋セントラルパークを5位とするものなどがあります。

①と②の違いは、地下街のくくりを駅ごとに置くか、つながりの地下を一つの地下街と見るかによって生じたものです。いずれにしても名古屋の地下街を1位とするデータは見つかりません。

歴史で見ると、最も古いのは神田須田町(1931年)で、銀座三原橋(1952年)、浅草(1955年)と続き、いずれも東京です。ちなみに浅草は、現存する最古の地下街だそうです。名古屋の栄は1957年ですから、日本一歴史があるというわけでもありません。

もっとも駅やビルなど地上とのつながりでいえば、最も利便性が高いのは名古屋の地下街だという声はあります。利便性はデータにはなりませんが。

名古屋の魅力は人間と同じで、データに表れにくいところにあるのか

どうやら名古屋の日本一は、データに表れない部分にあるようです。データで語りつくせないのは、人間も同じです。いい面でも悪い面でも名古屋が気になる街である理由は、こんなところにあるのかもしれません。

間宮 書子