LIMOが2023年02月にお届けした記事から、人気の記事をピックアップして再掲載します。

(初掲載*2023年02月05日)

2月になり、食品を中心とした値上げラッシュがさらに加速しています。

今の生活もやりくりに悩むものですが、老後を迎えたあとの生活に不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

2023年1月に公表された「2023年度の年金額の例」では、3年ぶりに年金額がプラス改定となったものの、物価上昇には追いつけず実質目減りすることとなりました。

年金が少なければ、物価上昇時に家計が赤字となる可能性もあります。そのためにも、なんとか年金を増やしたいと考えるものです。

しかし、比較的手軽に年金の額面を増額できる「繰下げ受給」には、安易に利用できない盲点もあります。

詳しく見ていきましょう。

1. 年金額面を増やせる?繰下げ受給のしくみ

公的年金には国民年金と厚生年金があります。どちらも原則65歳からの受給となりますが、66歳以降に遅らせることで、受給額をアップさせることができます。

これを年金の繰下げ受給といいます。

増加率は1カ月遅らせるごとに0.7%なので、1年間遅らせると8.4%にもなる計算です。

2022年4月以降は75歳(10年間)まで拡大されたので、最大で84%も増やすことができます。

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成

ただし、繰下げ受給にはメリットばかりがあるわけではありません。

まずは、日本年金機構で挙げられている「繰下げ受給の注意点」を8項目見ていきましょう。

2. 繰下げ受給の注意点8選

日本年金機構によると、繰下げ受給の注意点は以下の通りです。

1. 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。

2. 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。

3. 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。

4. 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができない。ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができる。

5. 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。

6. 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。

7. このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある。

8. 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。

これらを知らずに「年金を増やす」ことだけを見て選択してしまうと、後悔することもあります。

より具体的にわかるよう、夫婦で起こりやすい例を見ていきます。