退職後の生活をどう過ごしたいか、それは実現できるのか?

D世代の期待と現実(5)

退職後は穏やかな生活を望んでいる

50-60代12,000人強※に対して行ったアンケート調査の結果から、5回にわたって、退職後の「資金の引き出し世代(D世代、デキュムレーション世代)」の特徴を紹介しています。

※現役者6,333人、退職者6,250人。2017年8月上旬に実施。

50-69歳の調査対象者はどんな退職後の生活観を持っているのでしょうか。退職後の生活観を2つの設問で聞いています。

一つは「退職後の生活のイメージ」で、「いきいきはつらつ」、「のんびりマイペース」、「明るく楽しい」、「ほそぼそ質素」、「つらく不安」、「その他」の6つの選択肢から選んでもらいました。

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結果は、退職者6,250人で51.3%、現役者6,333人で46.8%が、「のんびりマイペース」を選んでいます。半数が「のんびりした生活」を望んでいると言えます。

また「人生最後の5年間をどう過ごしていると思うか」を聞いた設問では、「夫婦でゆったりとした生活」、「家族と一緒に」、「有料老人ホームで一人」、「海外で生活」、「入院を繰り返す生活」、「田舎に引っ越して生活」、「その他」の7つの選択肢から選んでもらいました。

結果は、退職者の45.5%、現役者の43.2%が「夫婦でゆったりとした生活」を選んでいます。

資産がある人ほど期待を実現できる

2つの設問の回答結果からは、多くの人が退職後の生活を「ゆったりとしたものにしたい」と望んでいることがわかりますが、これまでの4回のコラムで紹介した通り、そうした期待は必ずしも現実とはなりえない懸念が残ります。

そこで、こうした期待をどういった人がより現実に近づけているかをクロス分析してみます。退職後の生活は「お金だけではない」とよく言われますが、アンケートの結果からは資産がある人ほど、そうした期待により近い状況にあることが見て取れます。

たとえば家計の保有資産別に見た、退職後の生活イメージや人生最後の5年間の生活、そして人生設計そのものも、やはり保有資産が多い人ほど、「のんびりマイペース」、「夫婦でゆったり」、そして「長い人生設計」を建てていることがわかります。

投資をしている人の8割以上が75歳までは投資を続けたいと考えている

そうした退職後の生活に必要な資産を創り上げる、または維持していくために、「投資」は避けられない選択肢の一つになります。アンケート調査では、現役者の32.9%が、また退職者の38.6%が投資をしていると回答しています。

そのうち65-69歳の退職者2,881人を見ると、投資をしている人が42.1%と高く、年齢が高くなるにつれて、勤労収入が減るなか資産を働かせて収入を得ると考える人が増えていることがわかります。

ただ、投資はもっと早い段階からでも可能なはずですが、50代前半で退職している715人では投資をしている人の比率は33.9%と低く、まだ改善の余地があるように思われます。

ちなみに、投資をしている人の人生設計年齢は83.7歳、投資をしていない人は81.9歳と2歳ほど違っていることも注目しておきたいところです。

なお、投資をしている人に「いつまで投資を続けたいか」を聞いてみると、現役者2,085人では「75歳くらいまで」が39.9%と一番多く、次いで37.0%が「できるだけ長く」、さらに「85歳くらいまで」の6.7%を加えると、8割以上が退職後のかなり長い期間で投資を継続しようと考えていることがわかります。

また退職者2,414人でも、「75歳まで」が48.4%、「できるだけ長く」が38.6%、「85歳まで」が5.4%と、こちらは9割以上が投資の長期継続を計画していることがわかります。

退職者の保有資産別の退職後の生活観(単位:人、%、歳)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、「資産活用世代のお金との向き合い方」、2017年9月

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史

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執筆者
野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所代表。国内外証券会社、大手外資系運用会社を経て、2019年5月に現職。資産の取り崩し、地方都市移住、雇用継続などの退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会、日本FP学会などの会員などの他、2018年9月から金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』(一般社団法人金融財政事情研究会)『老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本』(扶桑社)『定年後のお金』(講談社+α新書)『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など多数。