創業融資や事業融資の話の中で、「設備資金」、「運転資金」という言葉を聞くことがあります。何気なく聞いたり使ったりしている言葉ですが、正確にはどのようなものなのでしょうか。見ていきましょう。
収支とは?
設備資金と運転資金を理解するには、まず収支という言葉の理解が必要です。
収支とは、収入と支出のバランスのことです。収入が支出よりも先にあれば入ったお金から支払えるので、理想的です。しかし現実は先にお金を払い、後から売上金が入ってくるという商取引はよくあります。これを収支ズレといいます。
設備資金とは?
業種によっては会社運営のため設備を必要とします。その設備を購入するための資金が設備資金です。
設備とは、機械設備や車、お店の内装、什器備品などのことで、一度購入したらしばらく使い続け、頻繁に購入する必要のないものを指します。設備は高額なものが多く、その設備を使って営業した成果物は、長い時間を掛けて売上入金として回収されます。
ケース1
A社は飲食店を開店するにあたり、店の保証金、内装工事、看板工事、厨房機器、レジ、パソコンなどを導入し、2000万円支払った。
このケースでは、最初に2000万円という多額の支出をします。この初期投資分を売上入金として回収できるのは長い期間が掛かります。このような設備に関する収支の長期間のズレを解消するために投入する資金が設備資金となります。
運転資金とは?
運転資金とは、日常的な収支ズレに対応するために投入する資金のことです。仕入れ代金や家賃、人件費など、日常の支払いが売上入金よりも先行する場合、売上金が入ってくるまでの支払い用のつなぎ資金としての意味合いがあります。
ケース2
B社は、当月末に卸売業C社から現金払いで商品を仕入れた。お客様には来月末日に代金を貰う条件で売った。
このケースでは仮に利益は出ていても、仕入れ代金を先に支払い、売上代金を後からもらうため、収支が合っていません。ズレが1カ月発生していますので、1カ月分の運転資金が必要です。
ケース3
D社はソフトウェアの受託開発を行っている。従業員に毎月の給料を支払いながら、ソフトウェア開発を進めた。ソフトウェアは3カ月後無事に完成し、お客様であるE社に納めた。入金は納入後1カ月後である。
このケースでは、従業員の給料、家賃、水道光熱費、交通費、その他の諸経費が先に出ていきます。売上入金までのズレが4カ月発生しています。ですから4カ月分の運転資金が必要です。
まとめ
融資を受けるためには、その使途(つかいみち)を明らかにする必要があります。その話の中で、上記のような設備資金や運転資金の話が出てくるというわけです。
融資の申請にあたっては、設備資金と運転資金を正しく把握し、事業計画書に反映していきましょう。
中野 裕哲