すでに公的年金を受給している65歳以上の方の中には、夫が亡くなったら年金はいくらもらえるのだろうと不安に感じている方もいるでしょう。
老後は主な収入が年金のみという世帯も多く、金額が大幅に減少すると毎月の生活費に大きな影響が出ると考えられます。
日本の公的年金制度では、国民年金や厚生年金の被保険者や受給者が亡くなった際に、一定の遺族に対して遺族年金が支給されます。しかし、制度内容や計算方法が複雑で、よくわからないという人も少なくありません。
夫の遺族厚生年金がいくらもらえるのかは、妻の老齢厚生年金受給額により異なります。具体的にどのように異なるのか、3つのケースに分けてシミュレーションしていきます。
1. 老齢厚生年金と遺族厚生年金は両方受給できる
日本の公的年金制度では、「1人1年金」が原則です。年金には老齢年金や障害年金、遺族年金がありますが、2つ以上の年金の受給要件を満たした場合でも、受給できるのは1つのみになります。
なお、「老齢基礎年金と老齢厚生年金」、「遺族基礎年金と遺族厚生年金」のように支払われる事由が同じものは同じ年金とみなされ、両方受給可能です。
支払事由が異なる年金でも、特例として2つ以上受給できる組み合わせがあり、「老齢厚生年金と遺族厚生年金」も該当します。
そのため、老齢厚生年金を受給中の妻が夫に先立たれた後に、夫の遺族厚生年金を受給することも可能なのです。
2. 遺族厚生年金の受給額の計算方法
遺族厚生年金として受給できる金額は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分とは、老齢厚生年金や遺族厚生年金などの計算の基礎になるもので、以下の計算式で求めます。
【報酬比例部分=A+B】
- A:平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間月数
- B:平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間月数
計算式が複雑なので、ご自身で計算するのは手間がかかるかもしれません。おおよその目安として、「夫が受給していた老齢厚生年金の4分の3の金額」と考えて良いでしょう。
なお、妻の年齢など一定条件を満たした場合は「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」も併せて支給されます。
2.1 妻も老齢厚生年金を受給している場合
妻が65歳以上で老齢厚生年金を受給している場合は、ご自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、老齢厚生年金は全額支給となり、その部分に相当する遺族厚生年金は支給停止となります。
遺族厚生年金の受給額は、次の1、2のうち金額が大きい方です。
- 亡き夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額
- [1の金額]の3分の2+自分の老齢厚生年金の2分の1
まずご自身が受給している老齢厚生年金を受け取り、遺族厚生年金との差額も受給できます。
たとえば、ご自身の老齢厚生年金が40万円、遺族厚生年金が50万円だった場合、ご自身の40万円にプラスして遺族厚生年金との差額10万円も受給できるということです。