3. 夫15万円・妻15万円の場合は全額支給停止?
では実際に、夫に先立たれた妻が受け取れる遺族厚生年金の受給額をシミュレーションしてみましょう。
夫の老齢厚生年金は月額15万円、年額で180万円とします。
老齢厚生年金には老齢基礎年金も含まれているため、老齢基礎年金を80万円、老齢厚生年金額を100万円として計算します。
遺族厚生年金は、妻の老齢厚生年金受給額により異なるため、次の3つのケースに分けて見ていきましょう。
3.1 妻が老齢基礎年金のみ(老齢厚生年金なし)
妻が老齢基礎年金のみを受給している場合、妻が受け取れるのは「自分の老齢基礎年金」と「夫の老齢厚生年金の4分の3」の合計額です。
遺族厚生年金は、100万円×3/4=75万円と計算できます。ご自身の老齢基礎年金80万円に75万円をプラスして合計155万円が受給額となります。
3.2 妻の老齢厚生年金が40万円の場合
妻も老齢厚生年金を受給している場合は、すでにご紹介した下記の計算式で遺族厚生年金額を計算します。
- 亡き夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額
- [1の金額]の3分の2+自分の老齢厚生年金の2分の1
1は100万円×3/4=75万円。
2は75万円×2/3+40万円×1/2=70万円。
したがって、1の75万円の方が高額なので、遺族厚生年金は75万円受給できることになります。
妻が受け取る年金額は、「ご自身の老齢基礎年金80万円」と「ご自身の老齢厚生年金40万円」と「遺族厚生年金35万円(75万円-40万円)」で、合計155万円です。
3.3 妻の老齢厚生年金が100万円の場合
妻が亡き夫と同額の老齢厚生年金(100万円)を受給している場合はどうでしょうか。
夫の老齢厚生年金の4分の3の金額:75万円。
[1の金額]の3分の2+自分の老齢厚生年金の2分の1:50万円+50万円で100万円。
したがって、遺族厚生年金は100万円が受給できることになります。
妻の年金受給額は「ご自身の老齢基礎年金80万円」と「ご自身の老齢厚生年金100万円」と「遺族厚生年金0円(100万円-100万円)」で、合計180万円です。遺族厚生年金は受給できないことになります。
つまり、妻の老齢厚生年金が夫の老齢厚生年金と同額または夫以上に高額な場合は、遺族厚生年金は支給されず、妻の受給額は変わらないということです。
4. まとめにかえて
夫が先だった場合に妻が受け取れる遺族厚生年金は、計算方法が複雑でわかりにくいことがあります。
とくに、妻自身も老齢厚生年金を受給している場合は、金額調整が行われるためご自身で計算するのは容易いことではないでしょう。
しかし、万が一に備えて実際に受給できる金額を知ることは大切なことです。より正確な金額を知りたい場合は、年金事務所や年金相談センターなどに相談すると良いでしょう。
参考資料
木内 菜穂子