「大学の2018年問題」への対応策〜日本電産永守社長が語る

「4つの大波」を長期的なビジネスチャンスへ

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「4つの大波」が続々と到来する日本電産

いよいよ決算シーズンが始まり、その皮切りとして日本電産の決算説明会が1月24日に行われました。説明会には、同社の創業者で現在も経営トップである永守重信会長兼社長の発言を直接聞くため、いつものように多くの機関投資家、証券アナリスト、マスコミ関係者が集まっていました。

今回の決算説明会で特に強調されたのは、創業以来の「4つの大波」が続々と到来しているということでした。

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「脱炭素化の波」(クルマの電動化の急速な進展)、「ロボット化の波」(人手不足などを背景にしたロボット活用の急速な広がり)、「省電力化の波」(省電力性能が高いブラシレスDCモータの急速な採用増)、「物流革命の波」(農業や物流分野でのロボット・ドローンの活用の急速な伸び)の4つの波が一気に同社に押し寄せているということです。

これらの「波」は当然ながら同社にとっては大きなビジネスチャンスとなります。その一方で、こうした新規需要の拡大を取り込むためには、それに対応した人材の育成が中長期的な課題にもなります。

今回の決算説明会では「人材をどのように育成、獲得していくのか」といった趣旨の質問がありましたが、これに対して永守氏は、「2018年問題」というあまり聞きなれない言葉を取り上げ、その問題に対する取り組みについて語っています。

「2018年問題」とは何か

「2018年問題」とは、大学に入学する18歳人口が減少することです。18歳人口は今年44歳を迎える方が18歳であった1992年度の約205万人をピークに、2009年度には約121万人にまで落ち込んでいます(下図参照)。

その後は現在に至るまでほぼ横ばいで推移してきましたが、2018年以降再び減少し、2031年には99万人まで減少することが予測されています。

人口に関する予測は、将来予測のなかで最も的中率が高いものとされています。そのため、このトレンドは現実のものとなる可能性が高く、とりわけ大学経営を考えるうえでは大きな問題となっています。

ただし、永守氏は今年4月から京都学園大学の理事長に就任するとはいえ、大学経営の危機を語ったわけではありません。経営者の立場から、今後は大学生だけでなく新卒者も減少に向かうという危機に対して、同社や永守氏自身の取り組みが語られたのです。

18歳人口の推移(単位:万人)

出所:内閣府資料

英語が話せる人材を育成、2022年には工学部を新設

永守氏は、「企業は顧客が欲するものを開発し販売するのに、大学はそうはなっていない」、つまり日本の多くの大学が、新卒者を採用する企業の役には立っていないことが大きな問題であると言います。

とりわけ、43か国で事業を展開している同社としては、新卒者に英語力が不足していることが決定的な問題であるとしています。

永守氏は、第2外国語まで授業を受けながら英語すらまともに使えないのであれば英語に集中すべきと考え、今後、京都学園大学ではTOEICが650点以下の学生は卒業させないことも検討しているとのことでした。

また、京都学園大学に2022年に新設予定の工学部では、モータ、ロボット、EVのエンジニアを中心に育成していく方針であるとのことです。

永守氏は、工学部を新設する理由として、「なにもノーベル賞を取る学生を育成しようとは思っていない。即戦力となる学生の育成をしたい」と述べ、新設の工学部は同社で必要とされる技術の習得を目的に運営していくとしています。

現状、同社はこれまで長年かけて育成してきた東南アジアのエンジニアを日本に招き、技術者不足を補っていますが、2020年代後半には、永守氏の肝いりで新設される京都学園大学工学部出身者の活躍が期待できそうです。

まとめ

今回の決算説明会では、永守氏が大学教育に本格的に取り組むことが改めて確認できました。

大学教育を変えていくためには、それなりの時間と労力が必要です。そこにあえて取り組むのは、それだけ「4つの波」が大きく、また長期間続くトレンドであり、同社にとって大きなビジネスチャンスとなることに永守氏が強い確信を持っているからだという見方もできるのではないかと感じられました。

18歳人口の減少は誰にも止めることはできませんが、自らがリスクを取り、その危機を大きなビジネスチャンスに変えていく同社の取り組みを、今後も大いに注目していきたいと思います。

LIMO編集部

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